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2009年 8月4日
戦後政治の大転換期
解散・総選挙をめぐる社説
試される有権者の眼力
衆議院が7月21日午後の本会議で解散された。これを受け、政府は「8月18日公示、30日投開票」の衆院選日程を決定した。解散・総選挙は自民党が圧勝した郵政選挙以来4年ぶり。自民、公明両党が連立政権を維持するか、民主党を中心とする新政権が誕生するかを最大の焦点に、投票日まで史上最長の40日間という真夏の「政権選択選挙」が始まった。解散時に48本の社・論説が取り上げた。
国家像の提示こそ重要
《転換点》毎日「戦後政治の大きな転換点となる選挙戦が事実上始まった。(略)55年体制ができて以降、私たちは衆院選で有権者が投票によって選ぶという形では、政権与党と首相を交代させた経験がないのだ。そんな選択に初めてなるのかどうか。(略)こんなにわくわくする選挙はないではないか」、朝日「内も外も大転換期である。危機を乗り越え、人々に安心と自信を取り戻すために政治と政府を鍛え直す。その足場づくり、つまりはこの国の統治の立て直しを誰に託すか。これが焦点だ。(略)まずは民意の力で『よりましな政治』へかじを切る。日本の民主主義の底力を示す好機だ」、中国「民意を敏感に反映し、政権交代を可能にする。そんな目的で小選挙区比例代表並立制が導入されてから、5回目の選挙だ。党首の指導力に加え、さまざまな政策を有権者が比べたうえで、1票を投じる。そんな本来の意味での政権選択に近い審判の場となろう」、高知「それにしてもずいぶん長く待たされ続けた解散・総選挙だ。小泉元首相の後、安倍、福田、麻生と3代にわたって民意を問わないまま政権がたらい回しにされた。(略)やっと訪れた主権者である国民が決める機会だ。活発な政策論争と高い投票率でも『歴史的』と言われる選挙にしたい」。
《政権公約》日経「政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を強く望みたい。二大政党の自民、民主両党は速やかにマニフェスト(政権公約)を公表し、有権者に判断材料を示す責任がある」、中日・東京「政権の選択は政策の選択でもあることを確認したい。(略)どのような時代認識に立ち、どんな処方せんを講じるのか、各党はマニフェスト(政権公約)で明確に打ち出すべきだ。その答えは私たちが暮らす将来の国のかたちを示すことになるだろう」、新潟「とりわけ自民、民主両党には、政策の違いを鮮明にして有権者に説明を尽くす努力が求められる。『政権交代』『政権担当能力』を強調するだけでは違いは見えてこない」、京都「たとえ有権者に耳障りな政策であっても、国民に不可欠であるならマニフェストにきちんと書き込むべきだ。政権担当能力の判断材料となり、有権者の信頼にもつながろう」。
《国のかたち》読売「今回も、政権公約(マニフェスト)が注目されている。確かに、政権公約で政策の達成期限や数値目標を示すのはいい。だが、より重要なのは、日本をどのような国にしていくのかという『国家像』の提示である」、産経「問われているのは日本の国のありようであり、内政外交の懸案や難題をどう解決するのかという処方箋(せん)である。『政権交代』気分に浸っている余裕はない。政権担当能力の競い合いを通じ、日本の国家像を提示することこそが求められている」、秋田「何をどう問うのか。麻生首相は『安心と活力のある社会を、責任を持って実現しなければいけない』と述べた。その通りだろう。しかしそれだけではあまりに漠然としている。政権党として、より具体的な道筋を提示する必要がある」、北海道「民主党政権で政治はどう変わるか。それを明確にできなければ、世論の支持も『風』以上にはなりえまい。(略)自民党時代の『政と官』の関係を改め、税金の使い方を大胆に見直していく。その狙いはうかがえる。だが問題は、個別の政策がどんな『国のかたち』に結びつくのか体系だった全体像が見えないことだ」。
しがらみ政治に見切りを
《有権者に望む》熊本「暑さにめげてはいられない。劣化の著しい政治に民意の『活』を入れる時でもある。各党のリーダーの資質、政策、人材と吟味すべき点は多い。しっかり見極めることとしたい」、神戸「有権者の眼力も試される。右肩上がりの経済成長が見込めない中、急速に進む少子高齢社会に対応するために何を優先し、何を我慢するのか。予算のばらまき合戦に目を奪われてはならない」、神奈川「もう人気取り、風頼みの政治にはさよならしたい。しがらみの政治にも見切りをつけたい。私たちもそんな選び方を改めよう」、岩手日報「わが国がどこに向かうべきなのか。その針路を決める主人公は政党ではなく国民だ。その自覚と責任を感じながら、ようやく訪れた選択の機会を大事にしたい」。(審査室)