2009年 9月15日
脱官僚依存、どう実現

鳩山新政権の課題をめぐる社説
公約実行の精査も必要

16日召集の特別国会で民主党の鳩山由紀夫代表が首相に選出される。新政権の発足に向け、民主党は社民、国民新両党と9日、連立政権の樹立に合意した。鳩山代表は新幹事長に小沢一郎氏を充てる一方、首相直属の国家戦略局担当相に副総理兼務で菅直人氏を据えるなど主要閣僚を内定、政権の足固めを進めてきた。政権移行を前に200本を超す社・論説が鳩山政権の課題などを論じた。

民意に応える政権運営を

《3党連立》河北「各党の支持基盤に違いがあり、発言権を確保しようと交渉は難航した。だが、合意に至るプロセスは相互理解を深める上で無駄ではなかったはずだ。国民全体の利益向上という大局的な見地に立って、連立の妙味を発揮してほしい」、産経「外交・安全保障に関して『緊密で対等な日米同盟関係』をうたい、在日米軍基地のあり方を見直す考えが盛り込まれた。(略)今回の合意は連立政権樹立を優先させることで、結果的に反米色が抑えられたものの、同盟関係が円滑に維持できるかに関しては疑問を提起せざるを得ない」、毎日「3党合意文書の冒頭には『政権交代という民意に従い、国民の負託に応える』とある。今後もことあるたびにそれを確認し、政権運営を進めてもらいたい。期待されているのは何を具体的に変えてくれるかだ。それができなければ待っているのは『しょせん数合わせ』の批判である」。

《政治主導》中日・東京「本当に脱官僚依存を実現できるかどうかは、まず民主党自身の力量にかかる。次に、基本政策の決定過程で従来のような官僚の強い影響力を排除する仕組みづくりが必要だ。官僚は基本的情報と政策の選択肢を示す。国民から権限を負託された政治家が最終決定する。この基本原則を貫かねばならない」、神戸「肝心なのは、各省庁に送り込む政治家に官僚を使いこなす信念と能力があるかどうかだ。政権党として何を優先するのか、所属議員の意思統一を図る必要がある。それがなければ官に取り込まれ、新たな族議員が生まれるだけという結末になりかねない」、朝日「官僚機構との間に、活力に富んだ協力関係を築くことも重要である。政治主導は当然のことだが、限られた数の政治家がすべてを担うわけにはいかない。官僚は、知識と経験を兼ね備えた政策の企画や執行のプロ集団だ。政権の下支えとしてその力を引き出せなければ、政権運営はとてもおぼつかない」。

《公約実行》新潟「マニフェストを誠実に実行するのはもちろんだ。しかし、精査すべき点もあるはずだ。(略)実際に行財政を動かしてみれば、『こんなはずではなかった』ということも多々あろう。問題はそこでの決断である」、高知「財源の制約のほか、効果や影響などを見極めながら進めた方がよい施策もある。(略)民主党が掲げる『脱官僚依存』『政治主導』は、意思決定と実行の過程の透明度を高めることを意味しよう。国民に見える形で進めるなら、公約の修正が避けられない場合にも、理解は得やすいのではないか」、山陽「日本では基本的に自民党内で首相が代わる『疑似政権交代』が長く続いてきた。(略)今回は文字通りの政権交代だ。即、結果を要求するのは酷な面がある。米国とは選挙制度が違うとはいえ、100日程度は政策実現に向けた準備期間として、静かに見守る政治風土が生まれてもよいのではないか」。

信頼関係の構築に努めよ

《対米外交》日経「鳩山政権に対する最も深刻な不安は、外交政策とりわけ対米関係をめぐるそれである。民主党が野党時代の態度を貫けば、不安は現実になるだろう。鳩山政権にとり『君子豹変(ひょうへん)』は不可避であり、私たちはそれを求める」、読売「日米の信頼関係を築くには、『言葉』だけでなく『行動』が肝心だ。(略)今月下旬の国連総会に合わせた初の日米首脳会談、10月にゲーツ国防長官来日、11月にオバマ大統領来日と、重要な外交日程が続く。最初は、日米同盟の重要性を『言葉』で確認すればいいが、それだけではすまされない」、信毎「鳩山由紀夫代表が、自身の政治理念などについて述べた寄稿文が米紙電子版で紹介されたのを受けて、米国のマスコミや有識者から『鳩山外交』を懸念する声が相次いでいる。寄稿文の中には『米国流の市場主義経済』を批判する内容が含まれてはいる。しかし、ここまで神経質になる内容とは思えない。次の首相にくぎを刺しておこう、との意図も見え隠れする」、西日本「新政権発足前から、同盟国に『色眼鏡』で見られることは、日本外交にとっても大きなマイナスである。(略)鳩山氏は、どのような日米関係を築きたいのか、自民党外交とはどう違うのか、はっきりと説明し、米側に理解を求めなければならない」。(審査室)

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