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2009年 10月6日
国際公約どう果たす
鳩山外交スタートをめぐる社説
意欲上回る調整力必要
鳩山由紀夫首相は9月21日から米国を訪問、政権交代後の外交を本格スタートした。22日に国連本部で開かれた気候変動サミットでは、温室効果ガス排出を2020年までに1990年比で25%削減することを表明。「核兵器のない世界」を目指す決議を全会一致で採択した24日の国連安保理首脳会合では、被爆国としての決意を表明した。金融サミットのほか、オバマ米大統領らとの個別首脳会談もこなした。一連の会合での首相の外交デビューを、170本の社・論説が取り上げた。
持続的成長へ戦略議論を
《25%削減》中日・東京「欧州連合(EU)に続いて日本が高い(温室効果ガス排出)削減目標を示したことで、打開への薄日が差した。あとは、このところ、やや足踏み状態の米国が、刺激を受けてこれに続けば、途上国側も何らかの変化を見せずにはいられまい」、北海道「首相は米国や中国を含むすべての主要排出国の意欲的な目標の合意があってこそと条件を付けたが、日本が温暖化防止に積極的な役割を果たしていくとの意欲は伝わってきた」、産経「実現に極めて問題の多い数字を国際公約として約束したことは遺憾としか言いようがない。前提条件を付けてはいるが、取り返しのつかないことになりはしないか、懸念する。(略)目標実現には、1世帯当たり年36万円の負担が必要とも試算されている。負担が大きすぎれば国民の協力は得られまい」、日経「国際的な約束が国内で確固たる支持を得るためには、排出削減が新たな市場をつくりだし経済成長の支えにもなるという共通認識の形成が必要だ。負担の多寡だけの議論は的はずれになる。負担をできるだけ軽く公平にしつつ、持続的成長を可能にする国家戦略の議論を望む」。
《核廃絶》信毎「今回の安保理会合は米国が主宰し、決議案を出した。核物質や核技術の拡散を『安全保障上の最大の脅威』と受け止めていることが背景にある。米国だけで対応するのも難しく、国際社会を巻き込んで核廃絶に取り組んだ方が国益にかなうという実利的な計算も働いているようだ。(略)唯一の被爆国としての役割を果たしていきたい」、中国「安保理では、日本も存在感を示した。鳩山由紀夫首相は『被爆国の責任を果たすため、核兵器を持たない強い意志がある』と演説し、非核三原則の堅持を誓った。内部には核武装論もくすぶる、従来の自民党政権との違いをアピールできたのではないか」、読売「安保理会合に出席した鳩山首相は、北朝鮮の核開発を認めないと強調した。制裁決議1874の実効性を高めるため、『さらに必要な措置をとる』と言明した。北朝鮮貨物検査特別措置法案の早期成立を図る必要がある。唯一の被爆国である日本としては、核拡散防止により積極的に取り組むべきだ」。
《金融協調》西日本「(G20首脳)会合では、金融サミットを定例化し、国際経済問題を話し合う場とすることも決めた。(略)鳩山由紀夫首相は『国内の消費を刺激する政策を大胆に行う』と述べた。日本経済の構造転換をどう進めていくのか。鳩山政権の経済運営を注視したい」、河北「どうしても気にかかるのはG8からG20へ国際協議の舞台が移行することに伴い低下しかねない日本の地位だ。アジア唯一の参加国だったのがG20ではアジアから中国、インド、韓国なども加わり『20分の1』の存在になりかねない。(略)発言力をどう維持し高めていくか。鳩山外交の真価が試される」、朝日「G20の協調は、グリーンな新産業と雇用をグローバルな規模で生み出す上でも有効だ。貧困問題や地球環境問題の解決に生かしてほしい。そのためにも、新たな思想が必要になる。鳩山首相の『友愛』もひとつの手がかりとなりうる」。
先送り事項に踏み込んで
《首脳会談》京都「(日米)両首脳は、日米同盟が両国の安全保障の基盤であり、同盟の深化が重要との認識で一致した。一方で、インド洋での海上自衛隊による給油継続問題などの懸案事項は先送りされた。(略)肝心なのは首脳同士の信頼関係の上に立って、これから日米間の懸案事項にどう踏み込んでいくかだ」、新潟「首相は『東アジア共同体』の創設を掲げている。会談でも日米同盟を基軸としながらアジア諸国との関係を強化すると述べた。しかし、基軸通貨としてのドルの地位が揺らいでいる。アジア共通通貨にもつながる共同体構想は、米国を刺激するものだ」、毎日「一連の発信で首相の意気込みは各国首脳に伝わったことだろう。問題は発した言葉をどう実行に移すかであり、国際社会もそれを注視している。今後は現実政治の中で、連立政権トップとしての調整力と指導力が問われることになる」。(審査室)