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2009年 10月27日
「核なき世界」へ追い風

オバマ米大統領の平和賞受賞をめぐる社説
理想実現、実行あるのみ

オバマ米大統領が9日、2009年のノーベル平和賞受賞者に決まった。ノーベル賞委員会は「核兵器のない世界」実現への姿勢や国際協調主義、気候変動問題への取り組みなどを「世界の人々により良い未来への希望を与えた」と評価した。現職米大統領の受賞は3人目だが、就任して1年に満たないで選ばれるのは極めて異例。37本の社・論説が取り上げた。

心揺さぶった「チェンジ」

《共鳴》北海道「史上初の黒人大統領として1月に就任し、わずか9カ月足らず。オバマ氏は国際協調主義と『核なき世界』の究極的な理想を掲げ、国際社会の空気を一変させた。卓越したリーダーシップへの賛辞と共鳴こそが、平和賞授与の意味だろう」、朝日「核のない世界をめざす。地球温暖化問題に真正面から取り組む。単独行動主義はやめ、国際協調と対話でさまざまな問題にあたる。彼の発した『チェンジ』のメッセージが、それほどまでに世界の人々の心を揺さぶったということだろう」、読売「世界経済危機、核拡散、地球温暖化、感染症など、世界が共有する難問の解決には、各国の連携はもちろん、それを束ねるための強力な指導力が不可欠である。オバマ大統領への授賞には、混迷する世界の舵(かじ)取りを、共感しうるビジョンを持つ強い米国に託したい思いもこもっていよう」、中日・東京「(平和賞は)理想主義的傾向が強いオバマ演説に現実的判断から距離を置きがちな国際社会の指導者に対する大きなメッセージととらえるべきだろう。(略)『冷笑的な従来の発想では何も解決しない』。オバマ大統領の言葉をこの機にかみしめたい」。

《追い風》中国「このサプライズを『核なき世界』へ向けた一層の追い風としたい。(略)米共和党や保守派からは『軍事行動のネックになる』などと、受賞への疑問も出ているという。ノーベル賞委員会にしてみれば、こうした批判は織り込み済みに違いない。あえてオバマ氏を選んだのは世界の流れをもう後戻りさせないとのメッセージなのだろう」、京都「現実社会の厳しさや国際政治の冷徹さの下で、平和賞が果たす役割を必ずしも楽観できないのも確かだろう。それでもなお、平和と共生の世紀への転換を願う国際世論をくみ取った平和賞に希望を託したい。(略)受賞が『チェンジ』に向けた大きな追い風となると信じたい」、信毎「オバマ氏の受賞はゴールではない。形を見せ始めた新たな流れへの大きな声援である」。

《行動》産経「オバマ氏が掲げた核廃絶・不拡散政策はまだ実質的成果を挙げているとは言いがたい。(略)政権発足後まだ10カ月もたっていない段階で、平和賞を贈った委員会の判断に問題はなかったのだろうか」、 日経「大統領は今回の受賞を『行動への要求』と受け止めた。米国とオバマ氏自身の今後の貢献への期待を込めた平和賞である。これを機に、核軍縮をはじめ国際社会の懸案解決に、一段と指導力を発揮してほしい」、愛媛「世界には2万発以上の核兵器が存在する。理想の実現には幾多の困難が伴う。残念ながらオバマ大統領は何ひとつ結果を出していないに等しい。『賞を受けたあと』の行動と責任がこれまで以上に問われよう」、毎日「中東和平は進展せず、『オバマのベトナム』とも言われるアフガニスタン情勢は悪化する一方だ。北朝鮮の核兵器やミサイル、イランの核開発の脅威も増している。オバマ政権下で世界は平和の果実を必ずしも味わっていないのだ。これからオバマ氏に問われるのは、うたい上げた理想を実現する実行力である」、琉球「『人類全体の平和に貢献した』と過去形で評価するのは少々早すぎる観がある。(略)率先して『核の傘』を畳み、世界に模範を示してこそ、ノーベル賞は輝きを増す。『核兵器のない世界』を空念仏に終わらせないためには、ただ実行あるのみだ」。

日本も率先して協力を

《連携》神奈川「今回の平和賞は、未来の『功績』の実現へ、オバマ氏と米国に重責を課した。だが、日本を含め国際社会も共同の責務を負ったことを強調したい。(略)未来の世代が『2009年の平和賞は正当だった』と評価しうる歴史を、世界がともに築いていかねばならない」、神戸「唯一の被爆国、日本の鳩山新政権も、オバマ大統領の『核なき世界』を全面的に支持している。唯一の核使用国と被爆国が手を携えて世界に核廃絶を訴える。それが実現すれば、強い説得力を持つだろう」、西日本「今回の授賞はオバマ政治が掲げる『理想』を世界が後押ししたものと受け止めたい。うたい上げた『核なき世界』をどう実現するか。被爆国・日本が率先して協力するのは当然である。そのためにも、オバマ氏は広島、長崎を訪れ、核兵器の非人道性を自身で実感してほしい」。(審査室)

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