2009年 11月24日
普天間先送りに批判

米大統領来日・首脳会談をめぐる社説
同盟関係、再確認は評価

オバマ米大統領が13日に初来日、鳩山由紀夫首相と会談した。両首脳は来年の日米安保条約改定50年に向け、日米同盟を深化させるための協議を進めることで合意。地球温暖化や核軍縮などで協力していくことでも一致したが、普天間飛行場移設問題は先送りし作業部会で早期決着を図ることを確認したにとどめた。大統領は翌日、アジアを重視し関与を強める姿勢を示す演説を行った。会談結果と演説を59本の社・論説が取り上げた。

積み残した課題浮き彫り

《同盟の深化》朝日「半世紀に及んだ自民党政権にとってかわった鳩山民主党政権にとって、日本の安全保障と外交の基本を米国との同盟に置くこと、地球規模の課題でも信頼できる同盟パートナーであり続けること、の2点を米大統領と確認しあった意味は大きい」、毎日「日米両国やアジア・太平洋地域の安定に寄与してきた同盟関係を、地球温暖化やエネルギー問題、核拡散など21世紀の世界が直面している地球規模の課題に対処するために強化しようという試みは時代の要請に沿ったものだ。両首脳の合意を評価したい」、上毛・岐阜・日本海など「同盟関係にきしみが生じる中、両首脳が同盟の重要性を再確認し、将来的に強化する政治的意思を明確にした意味は大きい。これを契機に、両国は最大の懸案である普天間移設問題の解決を急ぎ、同盟関係立て直しに動いてほしい」、新潟「日米同盟を深化させることで一致した。だが、そんな当たり前のことをうたわねばならないことが、両国間のぎくしゃくした関係を象徴している」、南日本「『建設的』『未来志向』といった言葉の裏付けとなる内容は何もなく、同盟関係を深化させるための協議も、何をどう話し合うかすら決まっていないのが実情だ」、信毎「友好的なムードになったのはいいけれど、積み残した課題の重さと今後の厳しさがあらためて浮き彫りになる結果である」。

《普天間問題》福井「首脳会談では普天間問題が主要テーマにならなかった。新たに設置される閣僚級作業グループでの協議に委ねられたためだ。しかし、対立を回避して議題から外すこと自体が問題の深刻さを示している」、日経「意見調整を要する最も重要な問題が、今回は普天間問題だった。(略)首脳会談は外交の場である。意見が違う問題があれば、最終決着させるのが本来の機能である。一致できる問題だけを取り上げるのは、外交よりも『社交』に近い」、読売「今回の首脳会談では、大統領来日を失敗させるわけにいかないとの日米共通の判断から、協調関係を演出した。しかし、現在の日米関係にきしみが生じているのは否定しようのない事実だ。その最大の要因は、鳩山首相が普天間飛行場の移設問題を先送りし続けていることにある」、産経「普天間問題を解決できなかったことでは『演出された成功』と呼ばれてもやむを得ず、同盟の機能は低下せざるを得ない。(略)首相は大統領に約束した閣僚級の作業部会での早期解決を実行する責任がある」、中日・東京「深入りすれば会談決裂は避けられなかったためだ。鳩山首相が合意履行を明言しないことをとらえ、国内外に『同盟の危機』との指摘があるが、政権交代に伴って前政権からの政策の総点検をするのは当然だ。米側も理解しており、危機を煽(あお)るのは、両国の国益を棄損する」。

《沖縄の見方》琉球「突っ込んだ議論を期待した県民は肩透かしを食った格好だ。人権を説く大統領に、友愛が口ぐせの首相。その2人が『県外・国外移設』を求める沖縄の民意を踏まえた形で問題解決への道筋を示せば、鳩山・オバマ時代の到来をアピールできたはずだ。好機を逃した印象は否めない」、沖縄「今回の会談で、あえて結論を見送ったのは、日米関係がぎくしゃくするのを避けた結果とみられるが、見直しのための時間ができたと解釈したい。(略)腰を据えて在日米軍再編や日米安保のあり方を再検証する中で県外、国外移設への道を探ってほしい」。

アジアとの連携には好感

《オバマ演説》北海道「日米同盟を基軸とし、アジア諸国との連携を求めるオバマ氏の外交方針は、経済交流の拡大を通じ、米国とアジアの安定的な発展を目指すものだ。その考え方を評価したい」、京都「演説の背景に、アジアの米国離れをけん制し、日米同盟の揺らぎを抑える意図があることも確かだろう。それでもオバマ政権がブッシュ前政権の独善的な一国主義と決別し、アジアでも協調を重視しつつ共存共栄を図ろうとしている姿勢は好感できる」、高知「日本をアジア安定の『要』としたことは評価したいが、一方で慎重さも求められる。米国が関与を強めるということは、さまざまな要求もまた強まるということだ。日本が無条件に米国の戦略に追随してはなるまい」。(審査室)

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