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2010年 1月19日
改革へ国家像示せ
地方各紙の新年号紙面
「地域主権」に向け自立を
21世紀初頭の10年を締めくくる年となる2010年が明けた。歴史的な政権交代を実現した鳩山由紀夫首相の政権が安定軌道に乗ることができるのかは、国民生活にも影響を及ぼす。地方からの論調は閉塞(へいそく)感が強まる社会の再生に向けた国づくりを訴え、地域活性化へ自らの力で未来を切り開く必要性も強調された。
日米同盟関係の在り方問う
《国のかたち》北海道「鳩山由紀夫政権の使命は、内政、外交共に官僚に依存してきた仕組みや慣行を変えることだ。(略)改革には、どんな国家・社会を目指すのかの理想像がなくてはならないが、これまでの政治はそれを示してこなかった。人口減少時代に入った日本の『国のかたち』を国民の論議で見いだす時ではないか」、秋田「昨年の政権交代で日本丸の船長が代わったが、新船長の鳩山由紀夫首相の判断が揺れるため、船はしばしば迷走する。国民の期待が大きかった分、失望感もまた小さくない。その鳩山政権に決定的に欠けていることがある。国家全体をどのような方向に導き、どんな社会を目指すのかのビジョン、つまり『海図』である」、静岡「日本の目指す方向は従来のようなものづくり大国としての大量生産、大量輸出の道ではない。例えば、電気自動車、太陽光発電など環境がキーワードの高度な技術や、さまざまな機械に欠かせない精密部品など得意の技術を生かし高付加価値を生む『質』重視の国家像が考えられはしないか」、福井「『生活第一』を掲げて政権交代を果たした鳩山新政権も日本の針路や成長戦略を示せていない。秩序と安寧なき日本。少子高齢化も加速し、このまま二流国に沈むのだろうか。(略)福祉や年金、医療、教育、雇用など、国民生活を安定させるのは政治の責任だ。与野党とも〝お題目〟でなく、実効性のある政策を明快に示してほしい」。
《新しい地方像》西日本「鳩山政権は、発足早々『政治主導』『脱官僚』を打ち出した。その行き着く先には中央集権体制の打破があり、『地域主権の確立』という究極の目標があるのだろう。憲法改正も視野に、明治の廃藩置県にも匹敵する歴史的大改革に発展する可能性さえある。鳩山首相と民主党はそのビジョンを率直に語り、国民運動を起こすぐらいの覚悟で理解を求めていくべきだ」、新潟「新しい日本をつくるためには内政の在り方を抜本的に見直す必要がある。地方に活力が戻らねば真の変革は不可能だ。そんな認識は正しい。(略)国の政策を唯々諾々とのんできたのは私たちでもある。国頼りの発想と決別しよう。地方のことは地方で引き受ける覚悟を持つときだ」、愛媛「真の地域主権を実現するには、国への依存体質を断ちきり、自立する覚悟も地方には求められる。(略)覚悟とともに東京を経由しない政策立案能力が問われてくるのはいうまでもない。今後は、全国一律の事業メニューでなく、企画力の競争で地域を活性化させていく視点も必要になってくる」、南日本「少子高齢化や人口減でいえば、将来の日本の姿は今の地方にある。現在、地方を覆う不安は戦後日本経済の成長の裏返しだ。しかし、いまや成長の前提条件が変わった。経営効率や規模を競う経済から持続可能な経済、安心して老後を送れるぬくもりに満ちた地域―。そうした新しい地方像に挑戦すべき時である」。
《日米安保体制は》佐賀「ことしは日米安保条約改定から50年の節目にあたる。普天間の基地移転問題の解決が長引いているが、21世紀にふさわしい日米同盟関係はどうあるべきか、根本的に考える必要がある。核廃絶や地球温暖化対策など両国の協力関係が必要なテーマは多い」、琉球「現在の日本で、ゆがんだ残像の最たるものは日米軍事同盟であろう。友好な日米関係を築くことは大切だが、精鋭化する軍事同盟の在り方については根本から見直す時期に来ている。冷戦終結から20年。軍隊の論理がまかり通る時代は終わった」、熊本「米軍普天間飛行場の移設という蓋(ふた)を開ければ、そこには太い地下茎が何本も複雑に絡み合っていることに気付く。(略)米国の言い分を聞かないと日米関係が崩れる、という提起がある。しかし、冷戦が終わり、EUが拡大するそんな国際社会で、日米両国が手を携えて何をするのかという視点からの課題設定も忘れてはならないことだろう」。
《英知を集めて》福島民友「地球規模の温暖化や超高齢社会など大きな転換点に突入している。希望と展望に満ちた2010年代を切り開くため英知を結集し、日本の針路、地域再生構想を明確にし創造力と実行力をもって具体化したい」、神奈川「自分さえ豊かならばという長い固執から脱したい。自分だけの視座を離れて一人一人が社会とのかかわりを確実に取り戻したい。かつての人々の支え合いやつながり。そうした成熟こそ求めたい」、京都「地域の基盤であった地縁・血縁は衰退する中で、文化や環境などの市民活動や福祉ボランティアは活発になっている。こうした活動が、社会の包み込む力を大きくしていくのではないか」、徳島「いよいよ地方の知恵と発想が問われる時代がやって来る。本気でやらなければ、全国から取り残されるだろう。徳島ならではの魅力にしっかりと磨きを掛け、時代の先頭を走っていきたいものである」。
地域経済、医療、環境など注目
【1面トップ】48紙がニュース(調査などを含む)、13紙が企画(対談など含む)、15紙は連載でスタートした。
《ニュース》地域経済の活性化につながる動きを報じたのは河北「東北大 自動車分野の研究強化 新年度 地域経済に貢献」、中部経済「トヨタ 宮城で新型HV 11年投入」、西日本「トヨタ九州 非正規を社員登用」。地域再生の呼び掛けは山梨「ふるさと・やまなし 元気になあれ 満天の星を地域資源に」、北羽新報「能代の銘木製品 米国へ売り込め」、神奈川「湘南クルーズ始動 海上観光へ自治体連携」、八重山毎日「島の将来どう描く まちづくり指針策定へ」など。新交通が北海道「札幌市電延伸へ 都心部など4地区候補」、南信州「リニア計画 飯田駅設置へ飛躍の年に」。医療や福祉政策では福島民友「医工連携へ新拠点 福医大に専門職員」、中日「名古屋市 陽子線がん施設 一転建設」、中国「広島市民病院 救急たらい回し解消へ」、佐賀「佐大病院に新棟 高齢者、救急医療充実へ」、大分「子育て度日本一目指し 中3まで入院助成」。環境や教育では熊本「バイオ燃料列車 JR三角線に導入検討 廃食用油精製」、茨城「日立に付属中併設高 中高一環教育」、静岡「東静岡で大学共同講座 県、コンソーシアム構想」。奈良が「2010参院選展望」を、岩手日報「達増氏再選出馬へ」、長崎「決戦2・21 知事選 アンケート」はともに県知事選を展望。在日米軍基地問題で信毎「普天間移設 前原氏、米に『連立解消も』 代案なければ現行案」、琉球「県が基地返還計画 『不要施設』精査へ」。
《1面連載》3日付を含め37紙が掲載。西日本「シリーズ税と自治」で「地域主権」を問い、神戸「主権在地域」は分権で地域が直面する課題を追う。千葉「房の国の息吹」、山梨「ふるさとの地平」、新潟「古町 揺れる灯」、北日本「富山に生まれてよかった」、福井「新たな10年へ」は古里再生を考え、宮崎「人口減 未来図」は人口減少社会の行方を地域から見た。河北「始動 北の拠点―自動車産業集積の未来」は経済活性化への動きをとらえた。日米安保改定50年を迎え東奥「アオモリ防衛白書 日米安保50年」や、神奈川、長崎、沖縄3社合同企画の「安保改定50年 米軍基地の現場から」が目を引いた。
別刷りで参院選、五輪目立つ
【ページ数】在京紙を含め別刷り込みのページ数は11紙が増加、54紙が減少で、35紙が増減なし。120ページ以上の3紙を含め、28紙が100ページ以上。別刷りは地域の再生・活性化、夏の参院選展望、地球温暖化問題、冬季五輪特集が目立った。(審査室)