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2010年 2月2日
公的支援の責任重大
日航の会社更生法申請をめぐる社説
路線縮小もやむを得ず
日本航空が1月19日、東京地裁に会社更生法適用を申請した。負債総額は2兆円を超え事業会社では過去最大の経営破綻(はたん)。直後に企業再生支援機構が支援を決定し政府も全面支援を表明、日航は運航を継続しながら公的管理下で3年以内の再建を目指すことになった。39本の社・論説が破綻理由、法的整理、巨額の公的資金投入などを論じ、再生責任の重大さを指摘した。
高コスト体質改められず
《なぜ破綻》神戸「『ナショナル・フラッグ・キャリアー』として日の丸を背負い、世界各国に翼を広げたかつての栄光は地に落ちた。(略)なぜ、日航は行き詰まったのか。『政官業のもたれ合い』『大企業病』『ブランド力の低下』など、多くの批判がある。どれもうなずける部分が多い」、日経「状況が悪化しても、危機感はなかなか浸透しない。部門間の対立や複雑な労使関係も改革のスピードを鈍らせた。組織全体が『いずれ市場は回復する』という希望的観測にしがみつき、抜本的なリストラは先送りされた。その象徴が今回の再建でも大きな問題になった企業年金だ」、河北「半官半民時代の『親方日の丸』意識から抜け出せず高コストの経営体質を改められなかった。採算が取れない地方空港就航などをめぐる政官との癒着も経営悪化の背景にある。過去と決別することが再生の第一歩であることをまずは確認したい」、読売「日航は完全民営化以降も政治家や地方の有力者の要求を断れず、不採算路線への就航などを余儀なくされてきた。日航を破綻に追い込んだ責任は、行政にもある。日航と同時に、航空行政も一から出直さなければならない」。
《法的整理》新潟「日航の救済をめぐる動きは迷走した。手法は私的整理から、事前調整型の法的整理へと大きくかじを切った。(略)事前調整型の再建は国内の巨大企業では初めてであり、その上、準備期間が約2週間と極めて短かった。最終盤まで私的整理にこだわった主力銀行との話し合いも十分とは言い難い」、北國「巨額の税金を投入する以上、経営再建に向けた道筋はガラス張りであることが前提になる。法的整理により、破綻企業の印象が強まるのは不安材料だが、国民の理解を得て、新たな気持ちで出直すには、この方法が一番だったのではないか」、熊本「私的整理より厳しい再建策になろうが、この際『親方日の丸』的な体質から脱却し、過去のしがらみを断ち切る好機と前向きに考えるべきだ。その上で、どんな航空会社に再生させるのか、早急に将来像を描いてほしい」。
《公的支援》中日・東京「日本政策投資銀行など金融機関の債権放棄額は三千五百億円を超える。支援機構は日航に三千億円を出資する。政府は今後の公的資金投入について、あらためて国民に説明すべきである」、中国「『日本を代表する企業』とか『生活インフラの空路を担う』として、日航の再建に公的支援の必要性を認める声はある。しかし資金繰りに四苦八苦の中小企業経営者や、解雇の危機にさらされる多くの労働者から見ると、釈然としないのではないか。(略)少なくとも支援は今回が最後だということを、日航は肝に銘じてほしい」、産経「裁判所の管理下で破綻処理手続きに入るとはいえ、公的資金を使っての『救済』がセットである。一民間企業を公的資金で支援するのは異例の措置だ。目的はあくまで『国民の空の足』を守るためであり、これまで通りの組織の維持ではない」。
地域経済への影響は必至
《リストラ》朝日「政府ぐるみの支援が国民負担をさらに増加させる危険もある。それを最小限にとどめる努力が政府と日航に求められる。その意味でも、肥大化した路線網やサービス体制を現状のまま維持することは許されない。経営の徹底したリストラが必要だ」、毎日「採算性の悪い内外の路線の休止・減便を拡大することになり、利用者の反発が予想される。しかし、需要の少ない地方空港を次々につくり、路線の維持を求めてきたことも日航の経営の足を引っ張った大きな要因だ。そうした点を考えると、不採算路線からの撤退・縮小はやむを得ない措置だろう」、北海道「北海道関係を含めて国内外の路線の削減が計画されている。日航以外に路線のない地方空港もある。廃止がやむを得ないというなら、他社が路線を引き継ぐなどの対策も検討したい」、南日本「地方路線からの撤退は、観光を中心とした地域経済への影響が必至である。再建の痛みを安易に地方へ押しつけてはならない。代替手段の乏しい離島など、地方の実態に配慮した路線の見直しを求めたい」、東奥「日航には、乗客の命を守りながら安定的な運航を続ける公的な使命がある。リストラ効果を追求するあまり、安全運航に不可欠なコストや投資まで削ってはならない」。(審査室)