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2010年 2月16日
けじめなく情けない
小沢氏不起訴・幹事長続投をめぐる社説
民主、自浄能力発揮せず
小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金収支報告書の虚偽記載事件で、東京地検は小沢氏を嫌疑不十分で不起訴にした。元秘書の石川知裕衆院議員ら3人は政治資金規正法違反の罪で起訴した。昨年の西松事件から1年近く続いた小沢氏の資金疑惑の捜査は、未解明のまま事実上終結した。小沢氏は幹事長の続投を表明、鳩山由紀夫首相も容認したが、各社の世論調査では、幹事長辞任を求める割合が70%前後に達した。不起訴と続投を70本の社・論説が論じた。
特捜部も説明責任果たせ
《残る疑念》読売「今回の事件は、小沢氏がいまだに強調するような『形式的ミス』ではない。(土地購入の)原資に関する説明は、『政治献金』から『金融機関の融資』『個人資金』へと変転した。『政治献金』という説明は、小沢氏自らが資料まで示して行ったものだ。資金管理団体の収支報告書の実態と異なる記載は、石川議員らの起訴事実となった計20億円余りの虚偽記入を含め、総額約30億円にも上る」、佐賀「陸山会は、1994年以降、マンションや宅地など計12件の不動産を取得していた。そもそも政治活動にこれほど多くの不動産が必要なのか、小沢氏の個人資産ではないのか、という疑問がある」、デーリー東北・山口「小沢氏がかつて率いた新生党と自由党の解散時にあった計22億円余の党資金。小沢氏の関連団体に寄付され、使途は不明のままだ。この中には、国民の税金である政党交付金約5億6千万円も含まれていた」。
《辞任を》産経「自らが不起訴処分になったとはいえ、国民の『信』を失いつつあることを認識すれば、幹事長続投はありえないだろう。だが、小沢氏は続投を表明した。(略)最低限のけじめもつけようとしないのは情けない。秘書に責任を押し付けて逃げ切ろうとしているようにもみえる」、朝日「このままでは、政権交代そのものへの幻滅さえ招きかねない。政治改革の進展も、それを通じた民主主義の前進も台無しになりかねない。小沢氏がこれらの責任を果たすことができないのであれば、潔く幹事長を辞任するべきである」。
《検察の責任》日経「1年近く続いた小沢氏側への捜査が、小沢氏本人には問うべき刑事責任はなかったとの結果になったことで、検察は、さまざまな方向から疑念を抱かれよう。『小沢氏や民主党を標的にした恣意(しい)的な、無理筋の捜査だった』と考える人もいるだろうし、逆に『政権党の最大実力者なので、圧力がかかった。あるいは追及の手が鈍った』と思う人もあろう。(略)国民の信頼の源泉である『厳正公平』『不偏不党』の姿勢を示すためにも、そうした疑念をはらす努力が検察には要る」、岩手日報「特捜部は昨年、民主優位の解散風が吹き荒れる中で小沢氏秘書を逮捕。さらに今年、通常国会直前に元秘書の現職衆院議員を逮捕するなど、捜査は国政に重大な影響を及ぼした。小沢氏側のみならず、国民の間にもある『強引な捜査』への疑念に対する説明責任を、捜査側は十分に果たすべきだろう」、河北「胆沢ダム(奥州市)の工事を受注した水谷建設からの裏献金5千万円が、土地代の原資に組み込まれていたのではないか。疑惑の焦点はそこにあった。捜査は失敗に終わった。収支報告書作成上の外形的な疑いは裏付けられたにしても、核心部分は結局、立件できなかった。なぜか。事情が知りたい。検察はきちんと説明してほしい」。
企業団体献金、全面禁止を
《民主党の責任》毎日「進退問題以上に深刻なのは、繰り返されてきた『政治とカネ』の問題と決別しようという声が民主党内からほとんど聞こえないことだ。有権者の多くは『政治とカネ』も含めて自民党政治からのチェンジを政権交代に期待したはずだ。捜査への批判の前に、既に国民を失望させつつあるという政治的責任を、鳩山由紀夫首相をはじめ党全体で冷静に考える時ではないのか」、北海道「一連の捜査過程では検察との対決姿勢を鮮明にした小沢氏に同調し、党を挙げて捜査批判を強めた。疑惑解明を唱える声がほとんど聞かれないのは政権与党として情けない。自浄能力を発揮するためには党内民主主義を徹底し、自由闊達(かったつ)に論議することが欠かせまい」、中日・東京「民主党は、政治をゆがめてきたしがらみを断つため、企業団体献金の全面禁止を国民と約束している。鳩山首相はこれを機に政治生命を賭してでも、全面禁止を主導すべきだ」、南日本「小沢氏問題で民主党が自浄能力を発揮する場面はなかった。まるで『小沢党』のような印象を受けた国民は少なくなかろう。民主党に政権を任せたのは有権者であり、小沢氏ではないことをかみしめてほしい」。(審査室)