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2010年 4月27日
無定見な政権の運営
高速道新料金制度をめぐる社説
「原則無料化」公約どこへ
道路財源を優先確保
高速道路の新料金制度を巡ってまたも政治が迷走した。国土交通省が9日発表した新制度では、車種別に料金の上限(軽自動車千円、小型車2千円など)を設ける一方、料金割引のための資金から1・4兆円を、高速道建設の再開に転用する。利用者が多い中・短距離走行がほぼ値上げとなり、民主党の公約「原則無料化」に矛盾するため、小沢一郎幹事長が新料金に異を唱え、鳩山由紀夫首相は「見直し」を明言した。しかし、前原誠司国交相が反発、結局、当面は見直さず、国会審議を受けて柔軟に対応することになった。新料金とその後の迷走を50本を超える社・論説が取り上げた。
《無料化が値上げ》京都「移行した場合、普通車で上限料金に達する利用者は全体の2割にとどまり、休日の利用者は負担が2倍になる。(略)運輸業界でも上限料金の5千円以上の距離を走るのは1割程度とされる。期待された物流コストの引き下げ効果は限定的だ。一方、民主が約束した無料化区間は地方部の37路線50区間で、全体の18%にすぎない。無料化は一部で大半が値上げとは、国民にどう説明するのか」、北海道「この上限制と引き換えに現行の割引はほぼ全廃され、昨春からETC搭載車に適用されてきた『休日上限千円』の割引もなくなる。このため値下げの恩恵を受けるのは通行車両の2~3割にとどまり、全体として利用者負担は年平均で1400億円近く増える。(略)これでは、民主党が政権公約に掲げた『原則無料化』の理念に逆行しているといわざるを得ない」、産経「国民との約束を、わずか半年余りであっさりとひっくり返して恥じない鳩山政権の運営姿勢は、あまりに無定見で危うい」。
《凍結が再開》山梨「新料金制度の背景には、小沢一郎幹事長が昨年末に政府に提出した民主党の重点要望で、高速道路会社による整備推進と、現行割引制度の抜本的見直しを求めたことがある。それを″丸のみ″する形で料金割引を犠牲にし、昨秋に凍結した拡幅工事などの財源を捻出する苦肉の策が、今回の上限制といえる」、朝日「『コンクリートから人へ』の看板を掲げ、社会保障財源の確保に汗をかくべき民主党政権が、参院選への思惑から高速道路財源を優先的に確保しようとしているように見えるのは、なんとも情けない。割引のための財源が余れば国庫に戻し、子育てや医療、介護、教育など優先度の高い政策にあてるのが筋だ」、下野「政府はこの実質値上げで浮く1・4兆円を東京外環道建設や地方の4車線化工事に使うことにしている。『コンクリートから人へ』のスローガンは撤回して、『やっぱりコンクリート』とした方がよいのではないか」、高知「『コンクリートから人へ』を訴え、高速道の新規整備に慎重な鳩山政権の方針転換にも映る。『命の道』といった最低限の基盤整備が遅れている本県など、地方には一定評価されよう」。
《本四橋だけ割高》中国「新たな制度は、それなりの配慮が読み取れる。(略)競合するフェリーに打撃を与えるとの声を踏まえ、しまなみ海道など本州四国連絡道路の3ルートは普通車3千円、軽自動車2千円としている」、徳島「なぜ四国だけ割高になったのか。根拠がはっきりと示されていないことへの不満もある。『普通車だと全国どこに行っても2千円なのに、四国に来る場合は5千円。大型車も全国は5千円で行けるのに、四国に来るには1万円。観光客は四国を敬遠し、企業誘致はおろか、今ある企業も外に出て行くかもしれない』。(略)飯泉嘉門知事はこう述べたが、もっともな指摘だ」。
与党内の意見分裂
《発表後に迷走》読売「確かに、国交省の見直し案は、値上げありきで問題が多い。しかし、もとはといえば民主党が昨年末、高速道路の建設促進を政府に強く求めたのが始まりだ。(略)国交省にすれば、民主党の要請に応じたのに,再び参院選対策を理由に拒否された、ということになろう。政府・民主党は、こうした迷走をいつまで続ければ気が済むというのか」、中日・東京「しかし国民の立場からは、政府と所管大臣、政権与党の意見が分裂している、というのが率直な印象である。鳩山政権の掲げた『政策決定の政府一元化』は、当初それなりに清新な感じを与えた。それが、党内有力者の一喝で覆ったり、関係する政治家にてんでばらばらに発言をされては、国民は何を信用したらよいのか」、日経「鳩山由紀夫首相の指導力不足は今に始まったことではない。しかし今回の混乱をみると、もはや政権の体をなしていない。(略)ある方針を掲げ、別の主張にも理解を示す、接点を探って右往左往するうちに政策目標を見失う。こうした展開は、郵政見直しや米軍普天間基地の移設問題と同じ構図である」。(審査室)