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2010年 5月25日
世界経済に波及懸念
ギリシャ発の金融危機をめぐる社説
放漫財政厳しく律せよ
ギリシャ発の金融危機が世界に拡大している。欧州連合(EU)は10日、国際通貨基金(IMF)と協調して財政危機に陥ったユーロ加盟国向けに総額7500億ユーロ(約84兆円)の金融支援を決定。欧州中央銀行(ECB)もユーロ圏諸国の国債買い入れに動いたが、動揺は収まらない。スペインやポルトガルなども多額の財政赤字を抱えるうえ、欧州の緊縮財政策が中国など新興国の経済にブレーキをかける恐れもある。50本を超す社・論説が支援のあり方を論じた。
EU支援遅れ不安拡大
《緊急対策》日経「日米欧と国際通貨基金(IMF)が本格的な混乱収拾に乗り出した。金融危機を繰り返さないため、今回の決定を強く支持する。同時に、事態をここまで悪化させた欧州諸国にも反省を求めたい」、新潟「ギリシャ支援の過程では、及び腰に見えたドイツの姿勢がEUの本気度を疑わせた。政治状況の流動化は市場の動揺に直結する。政治への信認の回復こそが欠かせない」、南日本「適切な判断ではあるが、昨年10月にギリシャの財政危機が表面化しながら、ドイツ国内の反対などで支援に時間がかかり、結果的に信用不安を拡大させたことを考えれば、もっと早くこうした支援体制をととのえておくべきだった」、読売「市場には、危機の火元であるギリシャや、今後の〝予備軍〟とされるポルトガル、スペイン、イタリアといった国々の財政赤字自体の改善にはつながらない、との指摘もある。(略)ギリシャなどが財政再建策を素早く実施するとともに、国際協調をさらに進めることが肝要である」。
《さらなる不安》秋田「問題がギリシャのみならず、同じように財政が脆弱(ぜいじゃく)なポルトガルやスペインなどへ波及することも懸念される。これ以上、不安を拡大させないための実効性ある対策が求められる」、琉球「ユーロ圏内ではギリシャのほかにもポルトガルやスペインなどが財政赤字を抱えている。これらの国が連鎖反応を起こせば、ユーロ体制の根幹を揺るがしかねない」、毎日「新融資制度の合意に合わせ、欧州中央銀行(ECB)も一大決定をした。ユーロ加盟国の国債や民間債券を市場で買い取るというもので、方針の大転換だ。機能不全に陥った債券市場の正常化が目的というが、本当に必要な措置なのか。ユーロの価値を守るECBが不良資産を抱え込めば、通貨の信用低下をもたらしかねない。(略)中銀が財政難の国の国債を大量に購入すれば、健全化に対する政府の緊張感を緩ませ、改善が遅れる危険まである」、上毛・大分など「中国やインドなど新興国は好況を謳歌(おうか)しているものの、景気のけん引役は欧米先進国への輸出。先進国の景気が悪化して輸出が鈍れば成長は鈍化しかねない」。
《抜本策は》中日・東京「ユーロに加盟したために金利上昇や為替下落を心配しないで済んだギリシャは、いわば頼れる仲間の信用力に安住して放漫財政を続けてきた。こうした『ただ乗り』現象を、どう未然に防ぐかが問われている。基金そのものは非常時の備えにとどまる。(略)アメ玉だけでは、ただ乗りは止まらない。IMFが課す融資条件は最低限として、欧州独自の条件を検討すべきではないか。加えて平時から各国の財政を監視する効果的な仕組みも必要である」、朝日「通貨や金融政策は同じなのに、財政政策の足並みがそろわない。放漫財政を行う国をきちんと律することもできない。日頃は一つの主体として振る舞っていても、危機に直面すると意思が一つにまとまらない。そんなEUの弱点が危機の背景にある。国境を超えた経済に即応できる仕組みを考える必要がある。欧州内でIMFのような仕組みを作ろうという機運が出ているのは必然的な流れだろう」。
対岸の火事ではない
《日本も》産経「欧州発の危機は日本にとっても『対岸の火事』ではない。(略)市場は欧州だけでなく、米国や日本の財政赤字にも注目している。日本の国債は大半が国内で消化されており、海外投資家に頼る欧米とは違う。だが財政再建の道筋がないまま、ばらまきを続ける鳩山政権への懸念を市場が強めていることを忘れてはならない」、河北「急激な円高は、輸出主導による日本経済の回復に水を差しかねない、(略)政府も足元の経済状況の監視を強めるとともに、欧米と連携を密にし適切に対応する必要がある」、神戸「地域経済の先行きも心配だ。(略)兵庫県内の景気はアジア向け輸出を中心に持ち直している。問題が長引けば、輸出企業のマインドは一気に冷え込むだろう」、山陽「信用不安で欧州経済の回復が遅れれば、日本への影響は必至だろう。急激な円高、ユーロ安が一段と進行すれば輸出企業への打撃は大きく、デフレ脱却も厳しくなる。さらに、欧州発の危機は日本の財政問題も浮き彫りにしよう」。(審査室)