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2010年 6月15日
政権交代 仕切り直し
菅直人新内閣発足をめぐる社説
財政再建の道筋示せ
民主党の菅直人氏が8日、第94代の首相に就任した。新体制は、内閣の要である官房長官に党内きっての論客で政策通の仙谷由人前国家戦略相を充て、参院選を仕切る幹事長に枝野幸男前行政刷新相を配するなど、党内に強い影響力を持つ小沢一郎前幹事長と距離を置いた布陣となった。歴史的な政権交代を果たしたにもかかわらず、8か月余りで崩壊した鳩山政権が傷つけた民主党政権への信頼回復が、新政権に課せられている。菅首相が名付けた「奇兵隊内閣」誕生を150本を超す社・論説が取り上げた。
小沢氏の影響力を排除
《「市民派」宰相》 山陽「菅氏への期待は根強いものがある。市民運動の流れをくむ政治家として、庶民感覚は強いといわれる。鳩山、小沢両氏のように自民党にいたことがなく、発想の違いを評価する人もいる。言葉だけでなく、文字通り国民目線の政権になる可能性は秘めているのではないか」、河北「菅氏は『国民主権とは、言葉をかえれば市民参加である』(岩波新書『大臣』)と記した。市民派としての初心を具体的にどう政策に落とし込んでいくのか、腕の見せ所だ」。
《「脱小沢」色》 上毛・日本海など「菅氏は狙い通りの人事を実行したといえるだろう。『首相官邸、内閣、党の一体性を確保したい』と強調。小沢氏に対しては政治資金問題に触れて『しばらく静かにしていただきたい』と『脱小沢』の姿勢を明確にした」、朝日「政権交代で『新しい政治』を期待した世論が鳩山政権から離れていった大きな理由のひとつが、小沢氏が体現した『古い政治』の体質だった。自民党時代と変わらぬ政治資金疑惑、露骨な利益誘導を伴う選挙戦術、異論を許さぬ強権的な党運営。その積み重ねが有権者をひどく幻滅させた。菅氏がまず人事で『古い政治』との決別を前面に出したのは正しい」、読売「小沢氏の『政治とカネ』の問題に多くの民主党議員が沈黙し続けた背景には、公認候補の選定や選挙資金の分配などの権限が小沢氏に集中していたことがある。枝野幹事長は『党運営の徹底した透明化を進める』と表明した。小沢氏の影響力を排除しつつ、参院選に向けて党を立て直すことが求められる」、中日・東京「鳩山政権当時の『小沢支配』からの脱却は急務だが、それはこれら国民が期待する政策の実現のためでなくてはならない。小沢氏や同氏を支持する特定の個人、グループの排除が目的であってはならないし、党内抗争にうつつを抜かすなら、有権者は参院選で厳しい判断を下すだろう」。
《信頼回復を》 新潟「有権者の圧倒的支持を受けた鳩山政権が、わずか8カ月で瓦解したのはなぜか。これを徹底的に検証、総括することなしに、連立政権の立て直しを語ることはできまい。財政再建や普天間、『政治とカネ』の問題など、新政権が抱える課題は山積している。しかし、突き詰めれば、政治に対する国民の信頼をどう取り戻すかの一点に尽きる」、日経「政治の信頼回復と政策の練り直しが新政権の最初の仕事となる。(略)政権交代をもたらした昨年の衆院選から9カ月余り。首相や閣僚がまず直視すべきなのは、多くの有権者が鳩山前内閣の下で民主党に期待を裏切られたと感じた事実だ」、福島民友「今回の新体制は、単に参院選を乗り切るためのものではなく、国民から負託された政権交代の仕切り直し、と位置付けなければならない」。
政策の見直しも必要
《政策本位で》 産経「国を立て直す最重要課題の一つが、鳩山政権によって破綻(はたん)寸前まで悪化した財政の再建にあることは明らかだ。(略)菅氏も財政再建に意欲を示した。だが、問題は今月中に策定する財政健全化目標でどこまで具体的道筋を示せるかだ。そのカギを握るのは消費税である」、毎日「実現すべき理念、政策の再整理、見直しも必要となる。衆院選のマニフェストにうたったもののうち、何を優先的に実現し、何を先送りし、何を取りやめるのか。そして、何を新しく付け加えるのか。菅首相が打ち出した『強い経済、強い財政、強い社会保障』は、どのような政策体系として結実するのか。やるべきことはあまりにも多く時間は少ない」、西日本「玄葉政調会長の入閣は、自民党政権のように政策決定が政府と与党で二元化するのを防ぐ布石とみられる。『政策決定の一元化』という看板を維持しつつ、党の活力をいかに高めていくか。ここは新政権の力量が試されるポイントとなるだろう」、信毎「鳩山政権の反省を踏まえ、公約を点検し、早い段階で確かな政策とそれに向かう日程を示す。これが菅政権に課せられた当面の課題である。いま問われているのは、民主党の政権担当能力そのものである」。(審査室)