2010年 7月13日
抜本的な体質改善を

大相撲の野球賭博をめぐる社説
中継中止は常識的判断

大相撲の野球賭博に絡み警視庁が元力士を恐喝容疑で逮捕したことを受け、日本相撲協会の特別調査委員会(座長・伊藤滋早大教授)は関係者の処分を相撲協会に勧告した。協会は勧告を受け入れて名古屋場所の開催を決め、4日の臨時理事会後、大関琴光喜と大嶽親方の解雇など力士、親方ら計29人の処分を公表した。併せて武蔵川理事長の代行に、元東京高検検事長の村山弘義理事を起用した。NHKは名古屋場所の中継を中止した。処分から中継中止まで90本を超える社・論説が論じた。

場所開催で幕引くな

《閉鎖的体質》 中日・東京「これまでも横綱朝青龍(引退)をめぐる諸問題、大麻事件、力士暴行死事件などの不祥事が相次いできた大相撲。原因の第一は相撲界の独善性、閉鎖性にある。『相撲界のことは力士出身者でなければわからない』『相撲界には相撲界のしきたりがある』などとして外からはうかがい知れない世界をつくり、一般社会とはかけ離れた空気の中で生きてきたのだ。そうしたやり方がゆがみ、ねじ曲がって、一般常識では許されない振る舞いが当たり前となった」、熊本「横綱白鵬関も仲間内で花札の賭け事をしていたことが分かった。額の大小はともかく、当たり前のように賭け事をする相撲界の風土が野球賭博問題の根っこにある。それを見過ごしてきた組織の在り方には、欠陥があると断じざるを得ない」。

《場所開催》 毎日「結果的に特別調査委は協会に『助け舟』を出したと思われる。早急に結論を出そうとした分、調査は十分といえず、今後、新たな疑惑が浮上したら、特別調査委自体が批判を招く恐れもある。それでも結論を急いだのは、協会執行部の悠長な対応では名古屋場所の中止が避けられなくなる事態を恐れたからだろう。(略)国民が求めているのは相撲界の抜本的な体質改善であり、本場所だけ開催できれば危機は去ったと考えるのは大間違いだ」、産経「協会としては、何としても名古屋場所を開きたい一心で、調査委の条件をのんだのだろう。だが、ここは積年の組織のウミを出し切ることが優先されなければならない。名古屋場所の開催は見送るべきであろう」、山陽「特別調査委は処分勧告と同時に、全協会員を対象にした賭博の実態調査をあらためて始めた。ちぐはぐさは否めず、違和感を覚える。さらに相撲協会は当初、警察の捜査結果を待って処分を決めるとしていた。しかし、捜査はまだ続いている。(略)筋が通らないような対応による開催は、危ういと言わざるを得ない」。

《中継中止》 朝日「これ(放送権料)は年間25億円を超えるといわれる。100億円前後という協会の年間収入の大きな柱の一つだ。だが、放送権料は元をたどれば視聴者の受信料だ。これが力士の給与の一部となり、賭博の掛け金として使われ暴力団に流れていたとしたら、見逃せない。(略)NHKに視聴者から寄せられた1万3千件の声のうち、中継に反対が68%に達し、賛成は13%にとどまったという」、静岡・岐阜など「今回の親方・力士の処分や名古屋場所開催の決定にも、『甘すぎる』という批判が出ている。このまま放送したら、視聴者の理解は得られないという判断は、ごく常識的といえる。(略)そもそも、NHKが相撲を中継しなければならないという決まりはない。放送法はNHKに、『わが国の過去の優れた文化の保存』を義務付けているものの、現在の相撲が保存に値する文化といえるか、合意が得られているわけではない」。

公益法人返上の覚悟で

《解体的出直しを》 日経「相撲協会は公益法人の資格を与えられ課税も優遇されている。ほかのスポーツとは違い、国が手厚く保護しているのだ。NHKが年に6回の本場所を長時間にわたり中継するのも、たんなる興行ではないという前提に立っている。そうした特別扱いにあぐらをかき、なんら自浄能力を示すことなく相撲協会は今回の事態に立ち至った。(略)力士出身者が要職を占める協会の体制は、もはや行き詰っている。執行部を総入れ替えし、外部の人材で組織を一からつくり直す解体的出直しをするしかない」、読売「相撲協会は、組織の見直しを進める改革委員会の設置を決めた。暴力団との決別や危機管理のあり方などを検討するという。改革委は外部メンバーで構成し、強力なリーダーシップを発揮して抜本改革に取り組んでほしい」、信濃毎日「民事介入暴力に詳しい専門家の指導の下、協会全体で暴力団の排除に粘り強く取り組むことが大事だ。(略)億単位のカネが動く親方株の不明朗な譲渡のあり方や、大相撲の観戦チケットの販売方法についても、根本から見直しが要る。(略)暴力団との絶縁ができなければ『国技』と名乗るのをやめる。公益法人の看板も返上する。その覚悟で臨むべきだ」。(審査室)

ページの先頭へ