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2010年 7月27日
北朝鮮追及せず不満
韓国艦沈没の安保理声明をめぐる社説
軍事挑発、協力して防げ
国連安全保障理事会は9日、3月に起きた韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没事件について、事件を引き起こした「攻撃を非難する」との議長声明を全会一致で採択した。乗組員46人が死亡した沈没事件については、韓国の軍民合同調査団が5月に北朝鮮の魚雷攻撃によるものと断定していたが、議長声明は北朝鮮を名指しすることは避けた。20本の社・論説が取り上げた。
一致した意見表明は歓迎
《採択には意義》 朝日「北朝鮮の犯行だと断じてはいない。だが事実上、北朝鮮を非難したと読める。(略)北朝鮮との摩擦を嫌う中国やロシアと折衝を重ねた末の妥協の産物だ。また、声明を出したからといって、事態がただちに好転するというものでもない。そんなむなしさもあるが、国際社会の意思を示す必要はあった。中ロも賛同して北朝鮮を実質的に牽制(けんせい)する議長声明をまとめたこと自体には意味があったといえる」、神戸「北朝鮮に対する非難色をできるだけ弱めたい中国の主張に、最終的に日米韓が折れた『妥協の産物』になったといえる。ただ、北朝鮮に影響力を持つ中国とロシアを巻き込み、安保理が一致して声明を採択できたことは意義深い。朝鮮半島をこれ以上、緊張させてはならないとの決意を、安保理が再確認したと受け止めたい」、中国「『安保理のいつもの妥協の産物』といった冷ややかな見方が出たのは当然かもしれない。『北朝鮮をつけあがらせるのでは』と懸念する向きもある。しかし、国際社会の見解が分かれるよりも一致したメッセージを出した方が、朝鮮半島と北東アジアの安定確保にとっては、よりましな選択といえるのではないか」、読売「やや遅きに失した感はあるが、安保理が結束して、これ以上、事態を悪化させる攻撃や敵対行為を阻止する意思を表明したのは歓迎できる。だが、声明の内容には不満がある。だれが攻撃したのかという肝心な点が、外交的な駆け引きの末にぼかされてしまったからだ」。
《不十分な内容》 毎日「割り切れない思いと不安が募る。(略)北朝鮮の魚雷攻撃による撃沈だとは明示せず、名指しの非難や責任追及になっていない。この程度で北朝鮮の今後の暴挙を封じられるのか。はなはだ心もとない」、西日本「安保理は北朝鮮が哨戒艦を沈没させたと認定しているのか。安保理として北朝鮮を非難しているのか。この声明では、どうにも分かりにくい。(略)今回の声明は、危険な軍事的挑発を続ける北朝鮮を反省させ、国際ルールに従うよう改めさせるには、不十分だと言わざるを得ない」、日経「安保理が何ら結論を出せないまま、事件が風化する事態を招くよりはましだったとの見方もあろう。だが、北朝鮮への明確な警告にならなかったのは、議長声明を『明白な判断も結論もない』と評し、米韓の『愚かな誤算』と断じた北朝鮮の反応をみても明らかである」、産経「哨戒艦事件は北の不法な軍事攻撃であり、集団安全保障を通じて国際平和と安全の維持を担う安保理に対する重大な挑戦である。にもかかわらず、実効ある決議を実現できなかった中露など常任理事国の責任は厳しくとがめられるべきだ。これで一件落着としてはならない」。
《真相の究明を》 琉球「北朝鮮非難に難色を示す中国を説得し、虚々実々の政治的駆け引きで決着を図るやり方には、大いに疑問が残る。(略)(北朝鮮魚雷と断定の)合同調査結果は、韓国人研究者から『整合性に欠け、証拠にも矛盾がある』と疑問が投げ掛けられている。原因が分からなければ適切な解決策は見つからないはずだ。この際、厳正中立な国際調査団を結成して、客観的で徹底した原因の究明を求めたい」。
中国は大国の責任果たせ
《問題は今後に》 中日・東京「議長声明によって沈没事件は国連の場では一区切りついたが、朝鮮半島情勢はいっそう複雑になっている。(略)このままだと、朝鮮半島の緊張緩和は進みそうもない。北朝鮮の核開発を中止させ拡散を防ぐ、ミサイル発射など軍事挑発を抑える―。周辺国はこの共通の目標を確認して、利害を調整し協力態勢を再構築すべきだ」、北海道「問題は今後の対応である。北に核放棄を迫る唯一の国際的枠組みである6カ国協議の再開に向け、関係国はあらためて全力を傾けなければならない」、京都「問題は事件への関与を否定し続けている北朝鮮の姿勢だ。名指しの非難は免れたとはいえ、国際社会が向ける厳しい視線を強く自覚すべきだろう。(略)日本は米韓と緊密に連携して冷静に対応していきたい」、新潟「北朝鮮を中国はいつまでかばい続けるのか。今回のような事件が再び起きれば、アジアの安定は一気に崩れかねない。中国は大国の自覚を持ち、その責任を果たすべきだ」。(審査室)