2010年 9月14日
具体策の言及求める

民主党代表選の争点をめぐる社説
政策実現へ財源示せ

民主党代表選は菅直人首相と小沢一郎前幹事長による1日の共同記者会見を皮切りに激しい論戦に突入。公開討論などを通じて、政権公約の実行や財源、米軍普天間飛行場移設、政治とカネの問題などで対立軸が明確になった。130本を超す社・論説が両氏の政策や政治姿勢を論じた。

物足りない安保論議

《政権公約と財源》 朝日「小沢氏は、官僚主導のシステムを改革すれば巨額の財源を確保できるといい、無駄減らしの徹底が増税論議より優先すると主張する。菅氏は、消費税を含む税制改革に社会保障改革とセットで取り組むと説いている。(略)だが、理念だけで財政は運営できない。財源がどれほど必要で、どう工面するか。持続可能か。そうした裏付けがなければ、政策がいかに魅力的でも、成り立たない」、毎日「小沢氏は、マニフェストの実現、地域経済の振興、景気対策などを唱えているが、来年度予算に何を盛り込むのか。『政治主導予算』の具体的な姿が見たい。一方、菅直人首相は、8兆7000億円に達した、概算要求総額と歳入見通しのギャップを、どうやって圧縮していくのか明らかにしなければならない」、福島民報「小沢氏には『幹事長として政権の中枢にいて、できなかった抜本的な予算の組み替えや財源確保が、なぜ首相になれば容易にできるのか』と問いたくなる。菅氏にも『消費税発言一つでブレにブレたように、定見のなさと頼りないリーダーシップで、既に財務省支配など官僚の復権を許しているのではないか』と指摘したいところだ」、高知「小沢氏は、ひもつき補助金を自治体が自由に使える一括交付金にする必要性を強調する。それはいいとしても、問題はそれを巨額の財源を生み出す手段のように語っていることだ。地域主権の確立と財源問題は本来、別の話であり無理がある」。

《経済対策》 日経「首相は医療、介護や保育分野の雇用拡大に触れた。社会保障予算を投じてこうした分野の雇用を増やす考えなのだろう。だが、これだけでは経済成長を高める効果は乏しい。継続的な雇用の場はなかなか増えないのではないか。重要なのは雇用の主な担い手である企業の活性化だ。(略)産業全体の投資意欲を後押しする策に言及しなかった。農産物の市場開放や自由貿易協定の拡充についても考えを明らかにする必要がある」、北海道「菅首相は『雇用確保が最優先』との立場を街頭演説でも繰り返しているが、問題はその具体策だ。医療や介護、環境などの分野に積極的に投資して新たな雇用を生み出し、経済成長につなげようとする考え方は理解できる。では、手始めに何をするのか。問われるのはその政策だが、肝心の点が見えてこないのだ」。

《普天間移設と安保》読売「小沢氏は米軍普天間飛行場の移設問題で、5月の日米合意を『尊重』する考えを示したが、『沖縄がどうしても反対なら進まない』と、新たな移設先を模索する可能性も否定しなかった。この姿勢は疑問だ。こうした発言をすること自体が、日米合意に反対する勢力を勢いづかせるし、米側の不信も招き、鳩山前内閣の迷走を再現させかねない。菅首相も、歯切れが悪かった。(略)肝心の普天間移設をやり抜く決意は示されなかった」、琉球「米軍普天間飛行場移設問題について、小沢氏の発言はぶれている。1日の共同記者会見で、再交渉による日米合意見直しの可能性に言及。しかし2日の討論会で、日米合意を前提とする考えを明言した。これでは日米合意を順守する意向の菅氏との違いはほとんどない。一夜明けて発言をトーンダウンさせた真意が分からない。鳩山由紀夫前首相の二の舞いはこりごりだ」、信毎「小沢氏に沖縄、米国を納得させる展望があるようにはみえない。菅首相も沖縄の基地負担軽減を行うとは言うけれど、具体策は霧の中だ。(略)普天間問題以外、安全保障政策について突っ込んだ話は聞かれない。これでは、首相選びに直結する論戦としては物足りない」。

民意を甘く見るな

《政治とカネ》 産経「小沢氏は東京第5検察審査会が2度目の『起訴相当』議決を行って強制起訴された場合の対応に関連し、訴追に応じるかどうかの問題をただされて『逃げません』と明言した。率直な姿勢と言いたいが、代表選に勝って首相になったとしても、訴追され、刑事被告人となりかねない人物を最高指導者として仰ぐ国民は不幸である」、中日・東京「小沢氏が検察審の審査員が『素人』であり、『(検察審の)仕組みがいいのか議論は出てくる』とまで言及するのは、市民の判断をあまりに粗雑に考えてはいないか。素人たる〝民意〟を甘くみる態度が表れているとも受け止められる(略)小沢氏が負う道義的、政治的な責任は明白だ」。(審査室)

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