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2010年 10月13日
異様な「金王朝」危惧
北朝鮮後継体制をめぐる社説
過渡期の動き警戒を
北朝鮮の朝鮮労働党代表者会と中央委員会総会が9月28日開かれ、金正日総書記の三男・正恩(ジョンウン)氏が党中央委員と新設の党軍事委員会副委員長に選出された。前日には朝鮮人民軍大将の称号を与えられており、正恩氏が金総書記の後継者に位置づけられたことが確定、写真も初公開された。故金日成主席からの3代世襲となる後継体制を、32本の社・論説が取り上げた。
国際社会と協調可能か
《3代世襲》 西日本「社会主義を標榜(ひょうぼう)する国家で、権力が3代にわたって世襲されることの異常さを、まず指摘せざるを得ない。北朝鮮の正式名称は『朝鮮民主主義人民共和国』だが、民主主義や人民の名とは裏腹に、これではまるで『金王朝』ではないか」、神戸「世界を見渡しても極めて特異な体制というほかない。とりわけ、ジョンウン氏が新設の中央軍事委副委員長のポストに就いた点に注目したい。健康不安の総書記を支える実質ナンバー2として、軍事優先の『先軍政治』を引き継ぐことになるのだろう」、高知「先軍政治による国づくりは、とうに破綻(はたん)している。にもかかわらず、ジョンウン氏のほかにも総書記の近親者を軍や党の要職に配し、世襲3代の『金王朝』維持に努めようとする。その権力意思は異様に映る」、秋田「27歳の三男という情報以外に、経歴や素顔は不明で、実績もなく、手腕、能力も未知数。北朝鮮がジョンウン氏の名前を公式報道したのも今回が初めてというから、いかにも国際的な孤立感を強めている国らしい」。
《病根放置》 中日・東京「国を取り巻く状況は実に厳しい。核実験によって経済制裁を受け、国内ではデノミネーションの失敗で経済不安が広がる。国民は慢性的な栄養不良に苦しみ、中国へ逃れる『脱北者』も減る気配はない。当面は幹部たちが支えるとしても、経験不足のジョンウン氏が国家再建の重責をどれだけ果たせるだろうか」、毎日「金総書記の過酷な支配体制は民心の離反を招き、中国首脳さえ促している改革・開放に踏み切りにくいのが実情だ。しかし、その病根を放置し、何ら改革をせずに独裁の『3代世襲』に突き進むなら、問題は深刻化するばかりであろう」、信毎「北朝鮮は深刻なエネルギー、食料不足が続いている。経済も疲弊したままで、多くの国民が困窮を強いられている。一党独裁の力による政治でなんとか国家体制を維持している側面が強く、中国への依存が深まるばかりだ。指導体制が変わっても国の前途は暗い」。
《変化は?》 朝日「後継問題にめどをつけたにしても、抱える難題に変わりはない。そこを打開するために北朝鮮が問われるのは、核兵器やミサイルの開発をやめ、拉致問題を誠実に解決するなど、求められている多くの課題に具体的な行動をおこすことだ」、北海道「注目したいのは北が統治体制の変革を機に国際社会との融和に踏み出すのか、その変化の兆しだ。潮目をとらえよい方向に導ければ、北東アジアの安定化につながる」、岐阜・日本海など「金総書記は北朝鮮の将来を考えるのであれば、経済危機や国際的な孤立という『負の遺産』を残してはならない。そのためには核兵器を放棄し、ミサイルや拉致問題を解決し、国際社会と協調する道を選択するべきだ。そうして国際社会のメンバーになれば、北朝鮮が経済危機を脱出できる道はある」、北日本「拉致被害者の家族からは停滞している拉致問題の解決のきっかけにという期待が高まっている。日本政府は北朝鮮の出方に大きな変化はないと傍観してはなるまい。知恵を絞り、解決に向け働きかけるべきである」。
日米韓の連携を強めよ
《警戒必要》 産経「権力の過渡期には柔軟な姿勢や路線は出にくい。対外強硬策に走る可能性が強いとみるべきだ。とくに『大将』という軍の肩書を与えられた金ジョンウン後継体制では、軍事的冒険もありうる。(略)今後の北朝鮮の動向にはこれまでになく注意と警戒が必要だ」、日経「性急な権力継承の動きには、細心の注意と監視が欠かせない。未熟な後継者の威信を高めようと、実績づくりを焦るあまり、再度の核実験や弾道ミサイルの発射などで国際社会を威嚇しかねないからだ。日本は米国や韓国との連携をさらに強め、権力継承の動向を注視しつつ、北朝鮮の不測の事態に備えた警戒の度合いを高める必要がある」、読売「問題は、核問題をめぐる6か国協議の再開も含め、関係国の足並みがそろっていない点にある。とくに中国は、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件や韓国艦沈没事件を通じ、日本や米国、韓国との間でいたずらに緊張を高めた。(略)こうした中で、不安定な権力継承期に入った北朝鮮が、軽挙妄動に出る恐れがある。日本は警戒を怠ってはなるまい」。(審査室)