2010年 10月26日
中国民主化促す一石

劉氏ノーベル平和賞受賞をめぐる社説
及び腰諸国も反省材に

今年のノーベル平和賞は、中国で服役中の民主活動家で作家の劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏(54)に授与されると8日、発表があった。1989年の天安門事件で指導的役割を果たし、共産党一党独裁の廃止などを求める「08憲章」を起草した劉氏だけに、中国は猛反発。一方、国際社会からは中国の「人権なき大国化」を危ぶむ声が一段と高まった。33本の社・論説が取り上げた。

批判許さぬ体制に異議

《重いメッセージ》日経「『非暴力で人権擁護のために努力してきた』。ノーベル賞委員会は授賞する理由をこう説明した。劉氏は武力で政権を覆そうとしたわけではなく、国家と社会の近代化を平和的に訴えてきた。中国当局は政権に批判的な言論人や社会活動家への締め付けを強めている。そのなかで劉氏は象徴的な存在。平和賞は力で批判的意見を抑え込もうとする共産党政権への異議申し立てだ」、河北「形の上ではノルウェーという一国の委員会の選択であること。ほかの自然科学系分野の賞と違って平和賞には政治的な価値判断が入り込みがちなこと。それらの事情を考慮してもなお、一党独裁大国に民主化を強く促す国際社会からの警告であると受け止めることができる」、産経「他からの批判を許容しない政治体制に国際世論が発した警告―それが中国の著名な民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏へのノーベル平和賞授与に込められたメッセージだろう。(略)中国の強い反発を承知でノーベル平和賞の理念を貫いた委員会を支持したい」、神戸「中国政府がノルウェーの選考委員会に『授与すれば両国関係に否定的な影響を及ぼす』と圧力をかけていたが、委員会が振り切った形だ。まずは劉氏を選んだノーベル賞委員会の姿勢に敬意を表したい。同時に、弾圧されても民主化と人権尊重を訴える劉氏の勇気に拍手を送りたい」。

《目つぶる国際社会》朝日「経済の相互依存が強まるなかで、国際社会は中国による普遍的価値の侵害に目をつぶりがちだった。人権問題を重視してきた欧米諸国も、最近は中国との関係維持を優先させていた。先のアジア欧州会議(ASEM)首脳会合でも厳しい注文はつけなかった。そうした風潮の中でのノーベル賞委員会の決定は、とりわけ先進国への警鐘として重く受けとめたい」、信毎「今や中国は世界が無視できない経済大国になった。中国社会の問題に正面から批判しにくい状況が生まれている。中国が反発してくることを承知で、苦言を呈したノルウェーのノーベル賞委員会の判断を、国際社会は重く受け止めねばなるまい」、高知「劉氏は民主化の象徴的存在と言えるだけに、中国政府にとってノーベル平和賞授与はダメージが大きいに違いない。劉氏の受賞にはもう一つ、国際社会は中国にもっと毅然(きぜん)と対処すべきだとの意味も込められていよう。経済成長を続ける中国が存在感を増すにつれて、各国が人権問題の追及などに及び腰になる傾向が見られるからだ」、中日・東京「劉氏の判決(国家政権転覆扇動罪で懲役11年)当日、北京の裁判所には欧米の外交官が詰め掛け傍聴を拒否されると酷寒の中、屋外で抗議したが、日本の存在は全く見えなかった。劉氏受賞は中国の行方を左右する人権問題に鈍感な日本外交の在り方にも反省を迫っているのではないか」。

経済大国の責任果たせ

《中国がすべきこと》読売「中国の国防費は89年の天安門事件以降、経済成長率を上回る規模で毎年増加している。軍備増強の中、経済的には豊かになったが、国民の権利は一向に改善されない。こうしたいびつな状態が、いつまで続くのか。国際社会で責任ある地位を占めようとするのなら、中国は劉氏のノーベル平和賞受賞の意味を重く受け止めなければならない」、西日本「問われているのは『世界第2の経済大国』になっても、平和的な手法で国や社会の改革を訴える文書を公表するだけで長期間の投獄を強いられるという『国家の異様さ』である。その異様さが続く限り、中国は世界から恐れられるだけで、いつまでたっても尊敬される国にはなり得ない」、毎日「劉氏の受賞は、劉氏個人にとどまらず、中国国内で当局の弾圧や妨害を受けながら粘り強い活動を続けているすべての民主化運動、人権擁護運動の活動家たちへの、国際社会の共感と激励である。まず劉氏の釈放を求めたい」、北海道「ノーベル賞委は授賞理由として『長年人権擁護のため努力してきた』と発表した。それに合わせ『世界の経済大国となった中国には、さらなる責任が伴わなければならない』と注文も付けた。的を射た指摘だろう。中国はあらゆる面で国際社会との交流を拡大しつつある。それだけに自由や民主主義という価値観も、世界と共有していく必要がある」。 (審査室)

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