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2010年 12月14日
「県外移設」の民意固く
沖縄県知事選と普天間問題をめぐる社説
政府は基本方針固め直せ
任期満了に伴う沖縄県知事選は11月28日投開票され、自民党県連の支援を受けた無所属で現職の仲井真弘多氏(71)=公明、みんな推薦=が、無所属新人の前宜野湾市長伊波洋一氏(58)=共産、社民、国民新、日本、沖縄社大推薦=らを破り再選を果たした。県政の課題を超え、米軍普天間飛行場移設問題の行方を占う選挙戦となった。仲井真氏は当選後、菅直人首相と会談し、公約に掲げた「県外移設」をあらためて要求した。基地問題の解決という菅政権に重い課題を突き付けた選挙結果を44本の社・論説が取り上げた。
同盟への悪影響を懸念
《「民意」確認》沖縄「仲井真氏は1期目は条件付きで県内移設を容認していたが、今回は選挙直前になって県外移設にスタンスを大転換した。名護市長選・市議選で辺野古反対の民意はすでに示されている。仲井真氏の課題は公約した県外移設をどう実現するかにある」、中日・東京「伊波氏の得票も仲井真氏に肉薄し、国外移設への期待の高さも鮮明になった。県知事選と同時に行われた宜野湾市長選では、伊波氏の後継候補が当選し、移設先候補の名護市では市長や市議の過半数はすでに県内反対派だ。菅直人首相はこうした島人(しまんちゅ=沖縄の人々)の声に耳を傾けねばならない」、西日本「もともと自民党系の知事である仲井真氏は就任以来、普天間飛行場の辺野古への移設案を条件付きで容認してきた。それが一転、県外移設を求めなければならなくなった『現実』と『沖縄の民意』を菅直人首相は直視する必要がある」、琉球「今知事選は最後までもつれ、投票率は低迷した。知事選のもつれは有権者の『不安と戸惑い』を、低投票率は県民に横たわる根深い政治不信と無力感、そして知事候補者らの訴求力と魅力不足を浮き彫りにした」。
《日米合意は》北海道「沖縄では、1月の名護市長選に続き、9月の同市議選でも移設反対を唱える市長派が勝利した。名護市議会は10月に日米合意の撤回を求める意見書を可決している。知事選の民意と合わせてみれば、もはや辺野古への新基地建設は不可能に近いと言わねばならない」、新潟「尖閣問題や朝鮮半島の緊張の高まりで、在日米軍の重要性が見直されているのは確かだ。だが、それと米軍基地が集中する沖縄の問題は、別次元で考えるべきである。菅首相は知事選で示された沖縄の民意を最大限くみ取らなければならない。日米合意の白紙撤回も辞さない強い覚悟が求められる」、読売「普天間問題は、14年に及ぶ曲折を経てきた。昨年、ようやく現実味を帯びてきた辺野古移設をいったん白紙に戻し、米国、沖縄双方との関係を悪化させたのは民主党政権である。どんなに困難でも、菅政権は、日米合意を前に進めるという重い責任を負っている」、産経「日本の平和と安全に欠かせない(日米)同盟を評価する仲井真氏再選の意義は大きい。知事選は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で日本の領海が侵犯され、北朝鮮の延坪(ヨンピョン)島砲撃など地域情勢が緊迫するなかで行われた。在日米軍の抑止力はいっそう重要性を増している」、毎日「日米両政府は、普天間問題が日米同盟全体に悪影響を及ぼすような事態を避けるよう努力すべきだ。来春の日米安保共同声明に向けて進められる同盟深化の作業の障害にしてはならない」。
首相の決断が命運握る
《出口を探れ》朝日「菅首相は、政権としてこれから沖縄にどう向き合うのか、その基本方針を早急に固め直さなければならない。(略)一基地の問題が日米同盟全体を揺るがす。そうした事態をなんとかして避ける高度な政治的力量が菅政権には求められる。米国政府も『日本の国内問題』と傍観せず、ともに出口を探る責任を果たすべきである」、岐阜・大分など「本土移設も現在、受け入れ先の見通しは全く立っていないのが実情だ。結果として『普天間暫定使用』の可能性が高まることになろう。その場合でも、政府は普天間飛行場の危険性除去に努力しなければならない。同時に、米政府や本土側の自治体、沖縄県との交渉を仕切り直して取り組む必要がある」、神戸「このままでは普天間飛行場の危険が続いてしまう。危機感は強まっているのに、出口は一向に見えてこない。取り囲む壁は、むしろ高くなっている。知事選の後、菅首相の決断と指導力がいよいよ求められてくる。それが政権の命運を握ることは間違いない」、日経「普天間問題が長期化している底流には、抑止力の観点から米海兵隊を沖縄県外に移せない現実を、政府が明確に説明してこなかったこともある。菅首相は沖縄県民、そして国民全体の支持を得るためにも、この点をしっかり説く必要がある」。(審査室)