2011年 1月18日
地域主権確立は住民で

地方各紙の新年号紙面
人任せにせず行動を

民主党政権が2度目の正月を迎えた。政治の迷走は続き、地域主権改革関連3法案は昨秋の臨時国会で継続審議となった。改革が停滞する中、地域主権とは何かを、4月の統一地方選に絡めて様々な視点から論ずる社説が多かった。住民が積極的に行動を起こすことを呼び掛ける論調も目立った。

県民主役の仕組みづくり

 《地域主権》北海道「閉塞(へいそく)感を打ち破るため登場したはずの民主党政権は、進むべき道を見失ってしまったかのように、迷走を重ねている。国政への期待が急速にしぼむ中で、身近な行政と向き合う統一地方選の年を迎えた。時の巡り合わせの妙であろう。人任せにしない『自治』の精神をバネに世直しに挑みたい」、南日本「地域主権は国が与えてくれるのではなく、地方に住む者が自らの責任で確立するものだ。そうであれば、国が何とかしてくれるという意識を一掃しなくてはならない。(略)地方では過疎と高齢化が進んだ。公共事業頼みの地域経済は疲弊している。足元に広がる変化を直視して再生の道を開きたい。(略)3月には九州新幹線鹿児島ルートが全線開業する。問われるのはブームではなく行動(ムーブ)だ」、岐阜「国が使途を特定した地方向け『ひもつき補助金』に代わって使途を限定しない『一括交付金』が導入される。2011年度は都道府県に5120億円、12年度からは対象を市町村にも広げる。自治体は地域の実情に合わせて事業を取捨選択でき、国の指導、認可に必要な人手と時間は省かれる。しかし地方にお金や権限が移れば住民生活が良くなるわけではない。首長と議会が事を運んでくれると期待を抱くのは禁物だ。(略)分権はあくまで手段である。住民が意見や知恵を出し合い、それが反映されなければ地域は輝かない」、中国「何のための議会か、との問いかけは重い。社会資本がほぼ整い、財源も縮んだ今、口利き型の議員活動は時代遅れだ。執行部に対するチェック機能と政策立案能力を高めていくしか存在意義を示す道はあるまい。(略)どんな議員や議会に変えていくべきか、首長との関係も含め議論の輪を広げてみてはどうだろう。地域のことは自分たちで決めるという気概を込めて代表を選ぶ。それが地域主権改革へと国の背中を押す力になるのではないか。統一地方選は『脱お任せ民主主義』へと歩を進める好機である」。

《一人一人が》秋田「わが秋田県。各種経済指標で長期低迷が続くが、置かれた境遇を嘆いてばかりでは仕方ない。嘆く前に希望につなげる行動を起こす必要があろう。何をなすべきかの答えは県民一人一人にある。農業を含めたものづくりの現場、商売の世界、あるいは会社組織や、家庭、地域社会の中で、秋田に活力を吹き込むための方策をそれぞれの立場で考え、行動を起こしたい。(略)県民が主役となって行動し、政治家や行政がそれを後押しする。そんな意識変革こそが本県には必要だ」、福井「しかし、ここ(県策定の『県民の将来ビジョン』)には重要な視座がある。それは県民一人一人の可能性とパワーを信じ、期待していることだ。行政は財政難と複雑、煩雑化する事務事業に追われるあまり、効率主義に陥った。行政中心主義から県民本位へ、県民主役の仕組みづくりを戦略に掲げたことは、『地域経営』の観点から非常に重要な政策転換といえよう。(略)制度充実を叫ぶ以前に、育んできた『つながり』の力を生かし、支え合う社会基盤づくりが大切なのだ」、神戸「神戸で、こんな動きも出てきた。国と地方の議員を交え、市民主導で日本の将来を考えようという人たちだ。長田を拠点に活動するNPO法人が呼びかけ、昨秋に初めて会合を持った。政権批判があれば、国の行く末を案じる声もあった。(略)『こんな日本になったのは、私らの責任でもある』。1人が訴えた。春には統一地方選がある。流されず、一人一人が考え、行動する『自分力』を磨きたい」。

《県の挑戦》長崎「長崎―上海航路復活計画は、県とハウステンボス(佐世保市)が共同事業として取り組んでいる。今年7月にも航路開設の予定。定員1300~1700人ほどの2万~3万トン級貨客船が、長崎港と上海の間を片道二十数時間で隔日運航する予定で、年間10万~20万人の利用客を見込む。(略)戦前の長崎―上海航路が開設された1923(大正12)年の長崎市の人口は全国7位で、九州最大の都市だった。今、そうした過去の歴史をはるかに上回るスケールで国際県長崎の時代が訪れようとしている。パイオニア精神で新時代にこぎ出そう」、徳島「昨年を振り返れば、滑走路が2500メートルに延長され、ターミナルビルも一新された徳島空港が『徳島阿波おどり空港』としてリニューアルオープンした。糖尿病検診と県内観光を組み合わせた医療観光ツアーも始まり、参加した中国の人たちが真新しい同空港に降り立った。(略)徳島県の糖尿病死亡率は全国ワースト1位―。医療観光は、県がこれを逆手にとって中国の人たちを対象にスタートさせた。世界の糖尿病患者は2億5千万人に上り、20年後には中国を中心に3億8千万人に増えると予想されている。高い経済成長が続く中国では海外旅行を楽しむ富裕層も増えているという。そうした人たちに焦点を当てて大いに売り込み、医療観光の需要を引き出してほしい」。

《決意》宮崎「年頭において口蹄疫による災禍、痛みを忘れず、食すなわち命という等式をもう一度しっかりと心に刻みつけることを誓いたい。昨年、私たちは決して切れない1本のザイルの存在に気付かされた。それは人と人、地域と地域、異なる業種をつないでいた。ふだんは無関係に思える『自分』と『他者』を結び、命を守る命綱だ。それを『心のザイル』と呼び、今一度、しっかりと結び合い、地域再生の旅に出発しよう」、山陽「瀬戸内海の島々に90万人以上が訪れた昨年の瀬戸内国際芸術祭の成功は、これまでの価値観に代わる『豊かさ』や『生活の質』を人々が求めているからにほかなるまい。次第に速度を増す少子高齢化の中で、疲弊する一方の地域には、その意味で大きな宝がある。それを見つけ、育てていくのは地域に住む私たち自身だ」。

統一地方選への関心高く

【1面トップ】45紙がニュース(調査などを含む)、17紙が企画(対談などを含む)、15紙が連載でスタートした。

《ニュース》統一地方選関連では東奥「山内崇県議が知事選出馬 民主・自民が激突」、岩手日日「4月決戦へ準備着々 知事選再選目指す達増氏」、山梨「県議選 民・自の消長焦点 6選挙区で両党対決」、奈良「国政にらみ各党決戦 知事選 県議選」など。空港や高速道など地元の大型インフラ整備にも関心は高い。荘内「庄内空港開港20周年 利便性さらに向上へ」、南信州「飯田駅、年内にも方向性 リニア誘致第2局面へ」など。明るい話題ものを発掘したのは信毎「『信州製』人工衛星開発へ 信大教授ら県内企業と連携」、北海道「北大初の観測衛星 最先端の『眼』温暖化など解明へ」、事件・事故では4人死亡の住宅火災を福島民報・福島民友が掲載。伊勢は「独身寮を無断で検査 津署の幹部、女子寮も」、大みそかは大雪で山陰「表層雪崩4人死亡 鳥取・奥大山スキー場」、南日本「鹿児島市に大雪 深さ25センチ 史上1位」、コメどころの秋田は「本県のコメ輸出急伸 国内の3分の1占める」だった。

《1面連載》3、4日開始も含め33紙が掲載。宮崎「口蹄疫からの新生」、熊本「発進!2011九州新幹線」、山陽「路(みち)をつなぐ―生活交通白書」、今年は国連の国際森林年なので常陽「森林(","もり">と生きる」、選挙の年に地方議会の在り方を問う神奈川の「近くて遠い議会考」など。

別刷りに「地域おこし」多数

【ページ数】在京紙を含め別刷り込みのページ数は24紙が増加、16紙が減少、61紙が増減なし。32紙が100ページ以上で最高は沖縄の120ページ。別刷りのテーマは地域おこしが多く、新幹線特集、統一地方選の展望やスポーツの話題も目立った。(審査室)

ページの先頭へ