- トップページ
- 刊行物
- 新聞協会報・紙面展望
- 政策論争で合意形成を
2011年 2月8日
政策論争で合意形成を
通常国会の与野党論戦をめぐる社説
国民不在の攻防激化を危惧
第177通常国会が1月24日召集され、菅直人首相は施政方針演説で、消費税を含む税と社会保障の一体改革や環太平洋連携協定(TPP)などでの与野党協議を呼びかけた。しかし代表質問で自民党の谷垣禎一総裁が解散を協議入りの条件とするなど、野党側は対決姿勢を鮮明にした。31日からは予算委員会審議がスタート。冒頭から波乱含みの国会論戦を約100本の社・論説が論じた。
首相は決断・実行を
《今国会こそ》朝日「昨年の臨時国会は『熟議』のかけ声も空しく、与野党の激しい対立のなかで政策論争は深まらず、多くの重要法案の扱いが先送りされた。(略)国会は国民のために政策を議論し、合意形成を図る場でもある。政治を前に進める重い責任を、与野党双方が改めて自覚してほしい」、北海道「政治が取り組むべき課題は山積している。与野党には景気、雇用など国民生活につながるテーマや外交問題などで掘り下げた議論を求めたい。最大の焦点は暮らしに直結する新年度予算案と関連法案の行方だ。衆参ねじれの下で年度内成立がかかる。菅直人政権の正念場である」、信毎「4月に統一地方選を控えているだけに、与野党の攻防は激しさを増すことが予想される。対立ばかりが前面に出ると、国民の暮らしが置いてきぼりになる。実りある審議にしなければ、政治の信頼は遠のくばかりだろう。各党に成熟した政治の知恵を示してもらいたい」。
《施政方針》産経「菅直人首相は施政方針演説で、『平成の開国』『最小不幸社会の実現』『不条理をただす政治』の3点を国づくりの理念として掲げたが、目新しさはほとんどない。問題は理念を繰り返し唱えることではなく、これを実現させられるかどうかであり、それはひとえに、首相の決断力と実行力いかんにかかっている」、中日・東京「首相の演説は、野党、とりわけ自民と公明党との政策合意実現へ、ひたすら身をかがめて、すり寄ることで異彩を放っている。(略)負担増や社会的影響の大きい政策で『国民参加の議論を』と首相が訴える事情はわかる。しかし、殊勝な言葉にも多くの人が違和感を否めない。野党が声を荒らげている。マニフェストの変質と変節。それにどう始末をつけるのか、と。私たちも同感だ」、神戸「『大きな課題に対策を講じる責任は国会議員全員が負う』として、重ねて与野党協議を呼び掛けた首相の姿勢は基本的には間違っていない。(略)ただ、消費税論議など意見が分かれる問題で、解決を国民参加や与野党協議に委ねるだけでは心もとない」、毎日「首相はこれまで明確な政権の目標を打ち出せずにいた。TPPに加え、税制・社会保障改革を持論の『最小不幸社会』に結びつけ、旗印にしようとした意欲は評価できる。これらの課題で首相が協議を呼びかけたことを野党は重く受け止めるべきだ」。
《自民の責任》読売「首相は、社会保障と税の一体改革での与野党協議を改めて呼びかけたが、谷垣総裁は、衆院解散が条件として、事実上拒否した。協議に応じ、成案をまとめれば、結局は菅政権の得点となってしまう、という判断だろうが、それだけでは責任政党と言えない。(略)不毛な展開を避けるには、重要な政策課題では与野党が一定の協力をする慣例を作る必要がある」、日経「解散しなければ与野党協議に参加しないというのは理解に苦しむ。消費税を含む税制の抜本改革や持続可能な社会保障制度の構築は、与野党双方が責任を負うべき課題である。まず政府・与党が具体案を示すべきだが、野党第1党の自民党の責任も重大だ」。
政治を進化させる場に
《「熟議」は?》福井「(論戦で)見えてきたのは、政策矛盾を起こしている民主党マニフェストを『見直す』と言いながら、成果ばかりを強調する菅直人首相の強弁と、自民党など野党側の衆院解散・総選挙を振りかざす直情径行の強硬姿勢である。いずれも統一地方選を強く意識したものだろう。これで『熟議』が成り立つはずもない」、西日本「熟議の兆しは皆無だったかと言えば、必ずしもそうではない。反論をしながらも『社会保障改革に対する国民の関心は高い。超党派協議にぜひ、ご理解を』と、首相が低姿勢で答弁を締めくくったのは象徴的だった。(略)谷垣氏も、対決一辺倒だったわけではない。舌鋒(ぜっぽう)鋭く民主党政権を追い詰める一方で『国益を考慮せず、国会審議をいたずらに混乱させるだけのひきょうな野党にはならない』と宣言した」、京都「曲がりなりにも政策中心の議論が交わされた点は評価したい。(略)与野党が国会の場で説明能力を競い、政策勝負で理のある方の主張を重視して法案修正などに結実させる―そんな方策を編み出せないか。ねじれ国会を、日本政治を進化させる場に変えてほしい」。(審査室)