2011年 2月22日
総指摘件数、694件に

倫理面から見た2010年の新聞報道
検察との距離は適切か

《指摘件数》新聞協会審査室は、1951年以来、新聞倫理綱領、新聞広告倫理綱領の精神に照らし、協会会員の紙面に掲載するのは不適当と判断した記事・写真等の件数を「指摘件数」としてまとめている。審査室が指摘を行う際の基準は、「性表現の行き過ぎ」を中心にしている。

05年以来700件下回る

2010年中の総指摘件数は、694件で、前年(809件)を下回った。700件を下回ったのは05年(639件)以来。

ただ、内容的には、性行為や女性の局部・アンダーヘアなど、露骨な性描写が依然として目に付き、指摘した多くの対象が、性風俗産業で働く女性やアダルトビデオを紹介する写真、イラスト、漫画であるという傾向に変化はない。

1件でも指摘のあった新聞は、夕刊紙1紙とスポーツ紙5紙(即売版)の計6紙で、一般日刊紙はない。

総指摘件数は、51年の調査開始以来、約30年間は千件を超えなかったが、80年代後半に2千件台に急増。87年から2006年までは、600~1100件で推移したものの07年には再び1600件台に増え、08年も拡大は続いた。しかし、09年、多くの問題表現が指摘されてきた夕刊紙が廃刊したこともあって指摘件数は大幅減、10年も減少が続いた。

《検察リーク》新聞が展開した報道・論説のうち、メディアの在り方をめぐって大きな議論となったテーマの一つに、いわゆる「検察リーク」問題があった。民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体による土地購入をめぐる事件で、1月、閣僚などが「捜査当局から一方的にリークされる記事しか書かない」と批判したのを受けて、各紙が一斉に反論を掲載した。

たとえば朝日は1月22日付朝刊・社会エディター名で検察当局によるリークで記事を執筆したことはないと断言。「本来的な取材活動と『情報操作』を一緒にされるのは残念でならない」とした。読売は、2月5日付朝刊・社会部長名で「民主党の一部議員は(略)定義も定かにしないまま『検察リーク』を声高に叫んで東京地検特捜部の捜査をけん制し、報道を批判する動きも露骨だった」と批判した。

これに対し、藤田博司・元共同論説副委員長の「インターネットやテレビの生中継が充実し、報道の過程が見えるようになってきた。そのことを報道する側が認識していないと、『リークはない』と弁明しても理解されない恐れがある」(朝日「報道と人権委員会」3月17日付朝刊での発言)のような指摘もあった。

検証記事相次ぎ掲載

《郵便不正/証拠改ざん》障害者団体向け割引郵便制度を悪用した郵便不正事件をめぐり、虚偽有印公文書作成などの罪に問われた厚生労働省の村木厚子元局長に対し、大阪地裁は、9月10日無罪を言い渡した。これを受けて、全国紙各紙は、自社の報道を検証する記事を相次いで掲載した。また、その後、この事件の捜査をめぐり、大阪地検特捜部による証拠品改ざん事件が発覚。新聞は事件の追及に大きな力を発揮したが、一方で、そもそも検察と取材者の距離は適切であったのか、などの議論も展開された。

報道検証では、個別の表現の是非というよりは、「『最強の捜査機関』の捜査の問題点に目をつぶり応援団化した感のあるマスメディアの取材も自省が必要だ」(東京・筆洗10月3日付)、「(検察のおごり体質を)許してきた責任の一端は、私たちメディアにもある。重要事件を捜査する検察の情報を重視するあまり、検察という権力を監視するという視点は希薄になっていた」(毎日・大阪社会部・和泉かよ子記者10月28日付記者の目)など、取材対象としての検察とどう向き合うのかという問題提起が目に付いた。

《第三者機関》報道で名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害など人権侵害問題が起きた場合に、社の対応や解決手続きが適切だったかなどを検証する第三者委員会は、10年4月現在、新聞協会会員社中、39社40組織ある。(審査室)

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