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2011年 3月1日
民意汲む中東民主化を
ムバラク氏辞任とデモ拡大をめぐる社説
流血の事態、座視できず
中東の民主化闘争は、1月にチュニジアのベンアリ政権を倒すと各国に波及した。アラブの盟主・エジプトでも大規模な反政府デモに発展し、2月11日ムバラク大統領の30年にわたる独裁体制を崩壊させた。集会やデモはバーレーン、イラン、リビアなどで拡大し、カダフィ氏の独裁支配が続くリビアでは治安部隊の弾圧で多数の死者が出ている。エジプト大統領辞任と各国の激動を70本を超える社・論説が取り上げた。
ネットが歴史を開く
《エジプト》毎日「まるで大河のようだ。膨れ上がる民衆が口々に大統領辞任を訴えて行進する。首都カイロの広場でも、大統領宮殿の前でも。これほど大規模で怒りのこもった集会を、アラブ世界では見たことがない。しかも、抗議行動は最後まで平和的だった。エジプトの市民たちが粘り強い抗議によって約30年に及ぶムバラク時代を終わらせ、新たな歴史のページを開いたことを高く評価したい。(略)81年から続く非常事態令の解除などを通じてエジプトの暗い側面を一掃し、アラブ民主化の模範になるよう期待する」、河北「インターネット上のメディアで結びついた若者たちが主役であること、宗派や世代を超えたうねりに発展したこと、非暴力を貫いたこと、どれをとってもアラブ世界に起きた全く新しい形の政治変革である」。
《課題と懸念》信毎「政権移行への当面の課題は何か。まず国民を弾圧した非常事態宣言を終わらせることだ。次に独裁体制に都合のいい憲法を改正し、自由で公正な選挙を実現することが必要になる。これまでの議会は与党がほぼ独占する翼賛体制だった。民主政権をつくる政党の受け皿を整えることも急がねばならない」、新潟「文民政府への移行のプロセスは不透明のままである。エジプトでは1952年の軍事クーデター以降、軍を背景とした強権政治が約60年もの間続いてきた。議会も与党がほぼ独占する翼賛体制だ。独裁の下で批判勢力は弾圧され、活動は厳しく制限された。それだけに野党は脆弱(ぜいじゃく)で、民衆のエネルギーの受け皿になるには心もとない。(略)政権をめぐって主導権争いが繰り広げられるようなことがあれば、民主化への道も険しいものになろう」、中日・東京「エジプトの民衆革命が帰すべきところは、エジプト人自身が決めるほかありません。テロを放棄し、欧米世俗社会と共存するアラブの民主的国家モデルを築くことができるのか。世界が第二幕に入った革命を見守っています」。
《リビアなど》北海道「民衆の平和な訴えを封じ込めようと、流血の事態を招いているリビア当局の対応は許されない。デモ隊への発砲は言語道断である」、朝日「民主化を求める丸腰のデモ隊に軍や治安部隊が銃撃する。世界中どこの国であろうと、許されないことだ。民衆の死傷者が増えている。国家による国民の虐殺である。中東のバーレーン、リビア、イエメンで起きている流血を見すごすことはできない」、産経「リビアやバーレーン、イエメンなどでは治安部隊や軍との衝突が繰り返され、死傷者は増える一方だ。流血は座視できない。日米など主要国は関係国への影響力を行使すべきだ。国連安保理も早急に武力行使を阻止する方策を検討する必要がある」、読売「抗議を受けた指導者の多くは、民意を汲(く)んだ改革に着手せず、逆にデモを弾圧する姿勢を鮮明にした。(略)しかし、国民の要求を無視し続ければ、最後には放逐される。先の両国(チュニジアとエジプト)の政変が、それを示している。改革を進めない限り、真の安定は得られないのではないか」、高知「民衆が求めるのは言論や政治的自由の拡大だ。強権支配の多い国々は、この『アラブ版自由民権運動』にどう向き合うかが問われ、対応次第では新たな政変の可能性を秘めている」。
生活環境改善への支援に
《日本の役割》琉球「欧米諸国はこれまで、中東の安定を理由に、ムバラク大統領の独裁政権を容認し、経済協力を続けてきた。日本も相当額を援助している。独裁体制の基盤拡大に手を貸したという点で批判は免れない。(略)09年には観光客を中心に約9万人が(日本から)エジプトを訪れている。今度は、民主的な体制への移行に向け、率先して手を差し伸べてほしい」、日経「これまで米国の援助は軍事中心、日本の援助はハコモノ中心だった。エジプトでは、日本の協力による科学技術大学も最近、開校した。新たな産業や人材の育成、雇用創出や生活環境の改善に結びつくような支援に日本はもっと力点を置くべきだ。(略)日本がエネルギー資源の多くを依存するこの地域の国々の、政治改革や雇用創出への側面支援は、経済安全保障戦略としても重要である」。(審査室)