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2011年 3月15日
「ただ乗り」風潮背景に

大学入試問題ネット投稿をめぐる社説
モラル欠如の危うさに警鐘

京都大、同志社大、早稲田大、立教大の4大学の入試問題の一部が、試験時間中にインターネットの掲示板に投稿され、それに対する解答例も寄せられていたことが2月26日明らかになった。書き込みに使われたのは携帯電話で、2月8日から同26日にかけて、インターネット検索大手の「ヤフー」内の「ヤフー知恵袋」に投稿されていた。京都府警は偽計業務妨害の疑いで捜査に乗り出し、3月3日、仙台市内の男子予備校生(19)を逮捕した。公正であるべき入学試験制度の根幹を揺るがす悪質さと、ネット社会の落とし穴ともいえる事態を78本の社・論説が取り上げた。

ネット悪用の影響大きく

《揺れた根幹》北海道「カンニング行為に、偽計業務妨害罪を適用するのは前例がない。逮捕までする必要があったのか、意見は分かれている。是非はともかく、犯行自体は、入試制度の根幹を揺るがすもので到底許されない」、毎日「あきれたカンニングではすまない問題をはらんでいる。同時広範囲に多くの人々に情報をさらすネットを悪用した影響は大きい。今回の事件発覚後、多くの受験生たちはまじめな努力をあざけるような不正だと憤ったが、こうした不信感の広がりは軽視できない」、河北「入試は受験生と大学の信頼関係、性善説の上に成り立っている。受験競争が過熱する中でも、日本の社会の公正さを表す制度として続いてきた。不正が起きたのは残念だが、試験官や受験生同士がいたずらに疑ってかかるような入試になるのは世の中の不幸だ」。

《新たな病弊》朝日「ネット社会が発達したいま、何か分からないことがあれば、自分で苦労して調べなくても、投稿サイトに質問を投げておけば、だれかが教えてくれる。回答は正解のこともあれば、間違っていることもある。それでも、他人の回答に『ただ乗り』してしまう。そんな風潮が今回の不正の背景にあるのではないか。広がる電子情報空間と知的な営みとの関係はどうあるべきか。そんなことも考えさせられるできごとである」、京都「投稿の背後には、知識を記憶に刻みつける努力や、試行錯誤しながら正解を導く苦労を回避して、ネット上の第三者に簡単に助けを求める安易な考えが垣間見える。(略)日常的なツールである携帯電話を使うことで不正行為の罪悪感をやすやすと乗り越えられるとしたら、大相撲の八百長問題にも通じる現代の新たな病弊である」、中日・東京「試験での不正は珍しいことではない。ゲーム感覚で携帯電話を操る若者にとって、日常的な質問サイトの活用という手段が、不正行為の罪悪感を薄れさせ、社会ルールを軽々と乗り越えさせた面があるかもしれない。匿名性や責任のいらない面もあるネット空間の特性が、底流に潜んでいるかもしれない」、上毛・岐阜など「ネット上にある記述を勝手にコピーアンドペースト(コピペ)してリポートや論文を提出する大学生が増え、問題になったことがある。(予備校生は)それと同じことをしているという程度の感覚しかなかったかもしれない。だが、そうした気軽さが時として多くの人を巻き込み、重大な結果を招く。それがネット社会だ。今回の事件は、ネット利用のモラル欠如の広がりと、その危うさに警鐘を鳴らしたといえる」。

試験監督の在り方課題に

《再発防止へ》読売「2004年に大学入試で携帯電話を使った集団カンニング事件が起きた韓国では、その後、試験会場への携帯電話やデジタルカメラの持ち込みが禁止された。不正が発覚した場合、受験資格停止などの制裁も科される。(略)情報機器を悪用した入試不正は今後も起きうる。文部科学省は、その前提に立って、幅広い分野の専門家から意見を聞くなど、対策を検討すべきである」、産経「事件を機に、大学では試験監督のあり方が課題になっている。あわてて受験生に携帯電話の電源を切るよう求めた大学もある。携帯の持ち込み禁止を含め、従来の対応を抜本的に見直すべきときがきているのではないか」、神戸「大学入試では、受験生の携帯電話は電源を切り、かばんに入れるように指導するのが一般的な対応だ。会場では複数の試験官が見回りをしている。投稿がなぜ可能だったのか。なぜ多くの大学で見逃されたのか。チェック態勢を点検し、防止策を練り直す必要がある」、日経「こうした不正が果たして今回初めてのことなのか、という疑問もわく。携帯やネットを悪用した行為がどこででも起きうるという前提に立って、対策を立てざるを得まい。一部の不心得者のために、所持品検査をしたり試験官を増やしたりしなければならないとすれば残念だ。しかし選抜制度への信頼は、ひとえに公正さにかかっている」。 (審査室)

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