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2011年 3月29日
「絶対安全」崩れる
深刻事態続く原発をめぐる社説
行政は正しい情報を伝えよ
東日本大地震で制御不能に陥った東京電力福島第一原子力発電所は自衛隊や消防などの必死の復旧作業にもなお危機を抜け出せない。周辺住民の避難・屋内退避に続き、農畜産物や水道水に暫定規制値以上の放射性物質が検出され、出荷停止や摂取制限に追い込まれた。電力不足による東電などの計画停電で、首都圏も含め市民生活や産業にも影響が広がる。各紙の社・論説が連日、原発事故を取り上げた。
屋内退避、具体的根拠なく
《原発事故》福島民報「大震災によって福島第一原発で相次いだ事故は、わが国が経験したことのない異常事態だ。政府の対策本部は国内の英知を結集させ、海外の進んだ技術を借りてでも難局を乗り越えることが責務だ。安全に向け、可能性を最大限模索してほしい」、デーリー東北「柏崎刈羽と福島第1のケースだけで論じるのは乱暴かもしれないが、安全審査の想定そのものに疑念を禁じ得ない。(略)徹底した事故の検証、得られた知見に基づく審査基準の見直し、既存施設の安全性の再検査を求めたい」、北日本「4基の原発で連鎖的に発生する事故に、政府や東電の対応は後手を踏んできた。(略)『絶対安全』をうたって立地してきた原発に見直すべき穴が多数あることが明らかになった。一刻も早い事態沈静化に向け、政府は情報を開示し、あらゆる技術、資機材を投入して乗り切らねばならない」、産経「この災害規模を予見できず、重大な事故を招いた東京電力の責任は大きい。しかし、罵(ののし)るだけなら首相にもできる。目下の急務は原子炉の冷却だ。政府は現場の人々が最大限の力を発揮できるよう総力で支援しなければならない」。
《避難・退避》毎日「20キロ圏内の避難指示、20~30キロ圏の屋内退避の具体的な根拠が示されていない。屋内退避圏内の住民に対する行動指針も、出す時期が遅く、内容は不親切だ。(略)不安は広がり、屋内退避圏内でも避難を決める町が出てきた。圏外なのに物資輸送を断られるケースもある。このままでは、住民の生活が守れない。政府は、情報も物資も不足している現場に判断を預けたままではいけない」、上毛・岐阜など「住民の健康被害は回避すべきだ。(略)区域外の福島県いわき市などでも避難する人が増え、病院は機能まひに陥り、重症患者が次々と亡くなっている。原発からの避難と被災地の支援が交錯する難局だ。原発に近いからといって、見捨てることがないよう支援の手を差し伸べたい」、西日本「原発で事故が起きれば、周辺住民は国の指示に従って避難したり、屋内退避をしたりするほかない。(略)推移を見守るしかないのだ。避難が長期化するとすれば、避難を指示した国は、その後の救済策を早急に示すべきだろう」。
《放射能汚染》日経「暫定規制値は原発事故後、政府が急きょ定めたものだが、国際機関の勧告を踏まえた基準である。それを超える放射性物質が検出された以上、出荷の停止や飲食を制限する措置はやむを得ない。問題なのは、放射性物質による汚染の実態や健康への影響について政府の説明がわかりにくく、消費者の不安を増幅していることだ」、福島民友「風評被害に手を打たなければ農業だけでなく県内の観光地も大きな影響を受けるだろう。広がらないようにするためには、行政側が原発事故を含めて正しい情報を伝えることだ」、読売「規制値以上の食品が見つかった際に即応できるよう、出荷停止や回収などの新たな規制も検討課題だ。風評被害を防ぐために、政府や都道府県は、検査の徹底で安全が確保できることを、国民に繰り返し、丁寧に説明すべきだ」、中日・東京「政府は規制値を超えた食品を食べても『直ちに健康に影響しない』と言うが、その説明では長期間では影響があるのではないかと不安になる。(略)長期間の被ばくの影響を示すデータがあるなら政府は具体的に語るべきだ」。
社会全体で「計画節電」を
《計画停電》朝日「現在の電力不足のもとでも停電をなんとか避ける手立てはある。石油危機の当時、電気事業法第27条に基づいて実施した総量規制などの手法で節電を徹底することだ。家庭も企業も、使う電力の総量を抑制するだけでなく、ピーク時の電力消費を抑える。そうすれば、停電しなくて済む。政府主導のもと、社会全体で取り組む『計画節電』である」、神奈川「産業が集積する首都圏での停電が企業活動に重くのしかかるのは必至だ。(略)節電は今までの生活を見直す契機となろうが、社会全体が過剰に萎縮し、消費マインドの冷え込みも心配される」、北海道「心配なのは人工呼吸器など医療機器を必要とする人たちだ。在宅療養で停電が長引けば、命にかかわりかねない。(略)事前の周知を徹底し、企業や家庭に十分準備をしてもらうことが大事だ」。(審査室)