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2011年 4月5日
遠方避難に自治体の手
震災3週間、支援態勢をめぐる社説
「ばらまき」削り対策費へ
東日本大震災は発生から3週間で死者・行方不明者が約2万8千人、避難所で17万人が不自由な生活を強いられている。食糧や生活用品はゆき渡りつつあるが、お年寄りや病人の「間接死」が増えるなど課題は山積している。こうした中、効果的な支援策として地域や自治体がそっくり遠方に避難する「集団疎開」が急速に広がった。一方、福島第一原発は放射能漏れが止まらず、深刻な事態が続いている。多くの社が社・論説を書き続けた。
被災地域分担し受け入れ
《集団疎開》河北「事態の深刻さは、宮城県の村井嘉浩知事が県外への『集団疎開』を呼び掛けたことに象徴される。同県内では700カ所の避難所に10万人余りが生活している。九死に一生を得たのに、避難所で命を落とす高齢者が増えている。痛ましいことだ。(略)被害が軽微だった内陸部や山形県内の温泉からは、被災者受け入れの申し出が相次いでいる。温かい湯に漬かれば、一息つける。東北が誇る湯治文化をこの一大事に生かさない手はない」、岩手日報「盛岡や花巻、北上、奥州、一関、八幡平なども、対象となる被災地域を分担して受け入れ先を設け、毛布や風呂場などの準備を進めている。(略)内陸への移送には、住民の要望を聞くのが先決。県は24日から避難所を回り、希望者の本格的な調査に入る。急いでほしい」、熊本「今回、関西広域連合がいち早く動き、大阪府と和歌山県が岩手県、兵庫・鳥取・徳島3県が宮城県、滋賀県と京都府が福島県を支援する態勢をとったのは注目される。これを全国に広げるべきだ」。
《疎開先で》毎日「亀田総合病院(千葉県鴨川市)は福島県いわき市の老人保健施設『小名浜ときわ苑』のお年寄りと職員計184人を丸ごと引き受けた。(略)被災地の自治体の機能回復が遅れている現状では、施設あるいは避難所を丸ごと移転させ、受け入れ先の施設や病院が地元自治体と協力してケア体制を整えることは有効だ」、朝日「岩手県陸前高田市で大津波に襲われた伊藤信平さん(75)夫妻は、長男の住まいに近い兵庫県三田市の市営住宅で暮らしはじめた。町内会長もつとめた伊藤さんは後ろ髪を引かれる思いだ。『落ち着いたら戻りたい。でも陸前高田から生活支援の情報は届くだろうか』遠隔地に移った多くの被災者が、こうした不安な思いを抱いている。(略)住み慣れた地域とつながっている。そう実感できれば生活を再建する気持ちも強くなる。心の通った暮らしができるよう環境を整えたい」。
《政府の責務》日経「(復旧の)実効ある補正予算を早く成立させる必要がある。子ども手当、高速道通行料の割引などの『ばらまき予算』を削り、対策費に回すのを優先すべきだ。(略)まず子ども手当だ。2歳児までの上乗せ分や中学生への給付の見合わせ、所得制限制の導入などを政府が率先して提案し、野党と合意してほしい。国の負担2兆2千億円を半減させるぐらいは当然である」、北日本「生活基盤を着実に取り戻すため、復興の足取りは強く、スピーディーであるべきだ。復興庁を早急に設置し、必要な権限と予算を集中しなければならない」、産経「政府・民主党内で東日本大震災の被災地復興に向けた『復興庁』創設が検討されているが、菅直人政権が今、力を注ぐべきは新たな役所の創設なのだろうか。大震災や原発事故を受けて対策本部や会議が相次いで設けられたが、指揮系統や役割分担が不明確だとの批判は絶えない。(略)現行制度の下で取りうる方策を再検証し、総力を挙げて実行することによって、首相が司令塔としての役割を自ら明確にしてゆくことが先決である」。
各国からの援助に感謝
《明日を信じて》中日・東京「危機にあって思うのは『政府はいったい何のためにあって、何ができるのか』という根本的な問題です。『命と暮らしを守る』。それが政府のもっとも基本的な仕事です。といって、けっして政府は万能ではない。まずは、私たち自身の力を信じたい」、新潟「被災地の人々が、日々生活が改善されていると実感することが、明日への希望になり活力になる。乾パンから炊きたてのご飯に変わっただけで、力が湧いてくるのだ。数知れぬほどの国民、企業、団体から物資や義援金が、エールとともに寄せられている。総員の半数近い人員を投入している自衛隊をはじめ、消防、医療関係者、自治体職員、東電関係者らが現地で必死の活動をしている。力を合わせれば、必ず前に進める。明日を信じて一歩を踏み出そう」、読売「日本への支援の申し出は、米国やアジア諸国以外にも、欧州、中南米、中東、アフリカの各地から寄せられ、その数は約130か国にのぼる。感謝したい。この国々が困っている時は、日本も必ず支援の手を差し伸べたい」。(審査室)