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2011年 8月30日
重なる「戦争」と「震災」
66回目の終戦記念日に寄せた社説
復興通じ新生日本を創ろう
東日本大震災と福島第一原発事故が重くのしかかる中、66回目の8月15日を迎えた。大震災の復興の遅れや原発事故による被ばくの不安を踏まえ、戦争と震災を重ね合わせて終戦記念日を論じた社・論説は40本を超えた。
3・11と8・15、二つの敗戦
《二重写し》南日本「まるで66年前の夏に戻ったような錯覚に陥る。日本はこれからどうなるのかという不安を、国民の多くが抱えているに違いない。(略)原発は絶対安全とする主張は、日本は絶対負けないと信じた過去と、どこかで重なり合っていないか」、岐阜・上毛など「敗戦は日本人の精神の深みまで揺さぶり、その後の日本の針路に影響を与えた。大震災の衝撃も、程度の差はあれ、66年という年月を超えて同種の衝撃を及ぼしている。大津波後の荒涼とした風景は、戦災で焼き尽くされた廃虚と二重写しとなり、原子力事故からは二つの原爆投下に連想が飛ぶ。『国破れて山河あり』。『3・11』は、『8・15』に次ぐ近代日本の『敗戦』なのかもしれない」、毎日「今回の原発事故は広島や長崎の原爆を上回る大量の放射性物質を放出してしまった。(略)福島県によると他県への避難者は4万6000人以上。会津など県内避難を含めれば10万人という。戦争末期の『学童疎開』がよみがえっている。転校した小中学生は県内外合わせて1万4000人。福島市ではこの夏、街を歩く子供や母親の姿がめっきり少なくなった」。
《政治家よ》産経「戦後民主主義者が集まる国家指導部は即、限界を露呈した。緊急事態に対処できる即効性ある既存の枠組みを動かそうとさえしなかったからだ。安全保障会議設置法には、首相が必要と認める『重大緊急事態』への対処が定められているが、菅直人首相は安保会議を開こうとしなかった。(略)これらは、66年前の日本と奇妙に符合する。国策遂行指導の誤りにより重大な失敗を重ね、無残な破局に至った時代である」、読売「今日の政治の劣化は深刻だ。『政治の貧困』という点では、むしろ戦前との共通点も少なくない。昭和初期の1920年代後半、政友会と民政党の2大政党は激しい政争を繰り返した。(略)30年代には10人が入れ替わりで首相を務めた。軍に押され、戦争への流れを止められなかった」、北日本「政治も先見性や指導力を失っている。難局にありながら即応力を欠き、思いつきの言動を繰り返す。大局観がなく、進むべき道を示し得ない。地位に恋々として政局、党利党略に血道を上げる政治家をトップに頂くのは不幸だ」。
《国民よ》朝日「(経産省や電力会社は)都合のいい情報は伝えるが不利なデータは隠す。さらにやらせ質問で世論を誘導。ウソを重ねた軍部の『大本営発表』顔負けだ。でも原子力村だけの責任か。朝日新聞が設けた『ニッポン前へ委員会』の神里(かみさと)達博委員(東大特任准教授)は原発事故の真因として『原子力について民主的な熟議を怠ってきた』とし、『閉鎖的な専門家システム』と『大半の国民の無関心』という共犯関係によって生じたと指摘している。(略)この人任せと無責任が、度重なる失敗の根底にあるのではないか」。信毎「(戦争中は)国家が情報を厳しく統制していた。いまは違う。世界のエネルギー事情、発電方法のリスクとメリット、暮らしとの関係…。知ろうと思えばさまざまな書籍が出ている。(略)けれど、原発の安全は電力会社に任せきり。エネルギー政策は国が考えればいい…。自分の暮らしを支えている電気が、どのように生み出されているのか。私たちはその構造を見ようと努めてきただろうか」、中日・東京「震災と放射性物質の拡散は、ふだん人々が忘れている死を身近なものに感じさせました。しかし、無力感や虚無感にとらわれることこそ、今は排すべきです」。
核なき社会考える機会に
《新しい日本》日経「戦後は終わった。震災後という新しい時代の始まりである。ここを日本再生の転機と、とらえたい。戦後復興と同じように、震災復興を通じ新しい日本を創るという目標をかかげよう。旗印は成長と連帯だ。今からでも遅くないからオールジャパンで取り組む態勢を築きあげなければならない。(略)この国は必ずや、よみがえると信じて」、熊本「ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ。こう並べれば、日本は世界のどの国も経験したことのない『核』の惨劇を体験した国となったことが分かる。戦後なるものの総体と向き合い、『核なき社会』をどう構想するか。困難な作業だが、貴重な機会を得たと考えたい。(略)西欧列強に肩を並べようと急ぎ足だった明治。米国をモデルに経済大国となった戦後。そして迎えた3・11と原発事故は、もうこの世界にモデルはなく、日本自身が身の丈にふさわしい国づくりを目指さねばならないことを教えた」。(審査室)