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2011年 11月22日
全力挙げて国益確保を
首相のTPP交渉参加表明をめぐる社説
国民生活への影響に不安
野田佳彦首相は11日夜、記者会見し、環太平洋連携協定(TPP)について「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」と述べた。首相は、民主党内に強い慎重論に配慮して正式参加の前段に当たる「関係国との協議」と表現したが、12~13日に米国ハワイで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場ではTPPへの交渉参加方針を表明した。太平洋を囲む地域の貿易の自由化などを推し進めるためのTPP交渉。参加の賛否をめぐり世論が二分する中での「首相の決断」を、70本を超す社・論説が論じた。
政治決断に疑問残る
《見切り発車》河北「未来を切り開く大局的見地からの政治決断だとしても、その未来像の輪郭さえつかめず、多くの国民が参加に懐疑的な見方をする中での見切り発車だ。その行き先も定かではない。到底、納得できるものではない。この決断が混乱を生むとすれば、責任はひとえに首相にあると言わざるを得ない」、北海道「参加をめぐっては国民合意どころか、議論が本格化したばかりだ。経済成長をはじめ、TPPと農業の両立などが本当に実現できるのか。このまま交渉参加に突き進んでいいのか、大いに疑問が残る。首相は多くの国民が懸念や不安を抱えていることを直視すべきだ」、琉球「『国のかたち』が大きく変容する恐れがあるにもかかわらず、十分な情報開示はなく、国民議論が熟したとも言えない。慎重意見が大勢を占める中、安易に参加決断を下せる状況ではないはずだ。(略)TPPは国民の利益を生み、メリットをもたらすよう、機能するのか」、京都「なぜ、今『国を開く』なのか。なぜ、アジアで大きな位置を占める中国や韓国が入っていないTPPを優先するのか。今の時点でも疑問は消えない。疑問点を積み残したままの交渉開始は将来に禍根を残し、21世紀の私たちの暮らしを展望できるものではないと指摘したい」。
《有益な判断》読売「新たな多国間の経済連携に加わることで『開国』に踏み出す野田首相の政治決断を支持したい。(略)日本は自由貿易を推進し、経済成長を実現していく必要がある。人口減少などで内需が縮小する日本経済を活性化させるには、成長センターであるアジアの活力を取り込むことが欠かせない」、産経「資源に乏しい日本が貿易立国として生き残っていく上で、アジア太平洋に21世紀の貿易経済共同体構築をめざす枠組みに加わるという意味ある選択が下された。(略)少子高齢化が進む日本は、海外の成長をとりいれなければ経済活動の縮小が避けられない。アジアと米、豪などを含むTPPに参加しない選択肢はあり得ない」。
《懸念広がる》福井「TPPは関税だけでなく医療や金融など21分野、24作業部会で幅広いテーマが議論されている。国民生活全般への影響を心配する声は多い。輸入食品の安全基準引き下げや混合診療解禁による国民皆保険制度の崩壊、漁業補助金の原則禁止などを懸念する声もある」、西日本「特に農業分野は危機感が強い。『関税廃止』となれば、安い海外農産品の流入で競争力の弱い国内農業が壊滅的な打撃を受ける、と心配する。医療や保険、郵政、労働市場などの分野も、自由化や規制緩和で影響を免れない、との懸念が広がっている」、朝日「すでに問題点や疑問が山ほど指摘されている。農業と地方の衰退に拍車がかかる。公的保険や金融などの制度見直しを強いられる、などだ。さまざまな懸念は、杞憂(きゆう)とも言い切れない。疑問に誠実に答えつつ、日本の経済成長につなげられるか。成否を分けるのは、今後の政府の対応である」。
主導的な役割果たせ
《国益反映を》神奈川「交渉の場では各国の主張がぶつかり合う局面も想定される。国益確保を最優先に据え、交渉に全力を挙げる姿勢を求めたい。(略)政府の折衝能力を疑問視する声もあるが、国益に沿う国際ルール作りは重大な使命だ。不退転の決意で、したたかに交渉を遂行してもらいたい」、毎日「TPPは日本再生の魔法のツエではないが、日本を陥れようとするワナでもない。農業再生を力強く進めつつ、TPPに積極参加し、日本の国益を実現するため、その交渉をリードしていこう」、日経「日本は地理的に米中両国の間に位置し、ASEANとも深い経済関係を築いてきた。アジア太平洋の地域全体の成長力を高めるカギを握るのは日本だ。有利な立場を戦略的に生かし、経済秩序づくりで主導的な役割を果たすべきだ」、中日・東京「自国に有利な貿易ルール作りがどこまでできるのか、農業をはじめ影響が避けられない国内産業対策に万全を期せるのか。日本にとって厳しい展開が予想されるのはむしろこれからだ」。(審査室)