2012年 2月7日
接点見いだす努力を

首相施政方針・代表質問をめぐる社説
「決断する政治」実行せよ

第180通常国会が1月24日開幕。野田佳彦首相は施政方針演説で「決められない政治からの脱却」を目指すとして消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革実現を強調、「政局ではなく大局を」と野党に協議を呼び掛けた。代表質問に立った自民党の谷垣禎一総裁は、消費増税はマニフェスト違反として協議を拒否、衆院解散を迫って対決姿勢を鮮明にした。施政方針と代表質問を約80本の社・論説が取り上げ、与野党双方に建設的な議論で接点を探るよう求めた。

求められる実践と成果

《気合はいいが》朝日「野田首相は施政方針演説のほぼ3割を、社会保障と税の一体改革と、その前提となる政治・行政改革に割いた。(略)消費増税を柱とする一体改革を絶対にやりたい、という気合は伝わってきた。めざす方向性も、共感できる部分が多い。だが、説得力が弱い」、読売「意欲と志はいい。問題は、それを実現するだけの周到な戦略が、野田政権にあるかどうかだ。(略)首相はマニフェストが『決断する政治』を妨げる要因であることを忘れてはならない。改革のためにはマニフェストの撤回をためらうべきではない」、新潟「確かに熱意は伝わってきた。『決められない政治からの脱却』は、まさにその通りだ。しかし熱弁を振るえば振るうほど、『空回り』を感じた国民も少なくなかったはずだ。(略)今、必要なのは美辞麗句でも能弁でもない。実践と目に見える成果だ」。

《言葉より実行》上毛・日本海・大分など「課題達成には言葉だけでなく、身内を説得し野党の協力を取り付ける実行力が今こそ問われている。(略)今国会中に衆院解散という事態も予想される。だが自公両党が総選挙で政権に復帰したとしても参院は過半数に達しない。ならば今から徹底的に議論し可能な限り政策合意を目指すべきだろう」、産経「衆参両院のねじれ状態が政治の停滞を招いていることを見直し、党派を超えた課題への協力を求めたのは妥当である。国会を機能させることについては自民党にも大きな責任がある。だが、問題となるのは、野田政権が重要政策の全体像を具体的に示していないことだ」、中日・東京「首相は福田康夫、麻生太郎両元首相の施政方針演説を引用して与野党協議に応じるよう自民党に呼び掛けたが、両元首相の在任中、協力を拒んでいたのは当時野党だった民主党ではないのか。自らの行動に対する心からの反省がなく、政権に就いたら野党は協力するのが当然と言わんばかりの態度では、野党側の心を動かすこともできまい」、北海道「首相は演説で改革の必要性を強調するばかりでマニフェストとの隔たりを全く語らなかった。大切な手順を飛ばして理解を得るのは難しい。(略)問われているのは民主党政権がマニフェストにない消費税増税を語る正当性だ」。

《水掛け論では》愛媛「質問に立った自民党の谷垣禎一総裁は、早期解散を求めて対決姿勢を鮮明にする一方だった。『私の内閣でやりぬく不退転の決意に変わりはない』とする首相と議論はかみ合うはずはない。このままでは国民置き去りの無用な攻防が激化するばかりだ」、西日本「国民から見れば『どっちもどっち』である。はっきりしたのは、消費税増税が公約違反かどうか―を問い詰めようとしても、結局は堂々巡りの『水掛け論』だということではないか」、京都「消費増税をめぐり、民主党の与野党協議要請と、マニフェスト違反を理由にした自民党の解散要求は、昨年からずっと続く水掛け論だ。この国会でも、政局を優先した国民不在の応酬が続くことは理解できない」。

政争の場に終わる懸念

《野党も責任を》日経「自民党は冒頭から対決姿勢をあらわにした。重要課題では野党も論争を通じて接点を見いだす努力をすべきである。(略)民主党政権が前回の衆院選で触れていない消費税増税に踏み込むのはおかしいという主張は成り立つ。しかし膨張する予算や危機的な財政状況を考えれば、議論の入り口で主導権争いを続けている余裕があるだろうか」、信毎「このままでは、通常国会が実りの少ない政争の場に終わる懸念がある。対決も大事だが、共通点を探り、具体的な政策を着実に前進させる工夫が必要だ。野党には、今後の対応が審議の行方を左右する自覚を強く持ってもらいたい」、毎日「民主党と自民党が歩み寄る余地は十分あるのではないか。それをうかがわせる国会質疑だった。(略)谷垣氏は増税に伴う低所得者対策の不十分さや、民主党が検討している年金の抜本改革を実現した場合、消費税率はさらにどれだけ上がるのかなど、政府・民主党に対し、具体的な質問もぶつけた。今のままでは財政健全化の目標は達成できないという危機感を自民党が共有していることもよく分かった。私たちが聞きたいのはこのような質疑だ」。 (審査室)

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