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2012年 2月14日
無神経な市長選介入
沖縄防衛局長の講話をめぐる社説
更迭判断の先送り批判
米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市長選(5日告示)に向け、真部朗沖縄防衛局長が職員に立候補予定者の政策を説明し投票に行くよう呼びかける講話をした。同市に住む職員と親族のリストもつくっていた。公職選挙法や自衛隊法に抵触する疑いがあり、衆院予算委は真部局長を呼び集中審議を行ったが、田中直紀防衛相は更迭を見送った。政府・防衛省を批判する40本超の社・論説から。
「あうんの呼吸」が常態化
《何が問題か》琉球「核心はまず、勤務時間内に組織ぐるみで有権者リストが作成されたことにある。職員の親族という個人情報まで差し出させようとした狙いは何か。防衛本省の関与はなかったのか。(略)民主主義の根幹を支える選挙の裏面で国策の浸透を図る動きが常態化していた。民意をゆがめかねない防衛行政の異様さが際立つ」、沖縄「就業時間内に職員を集め、局長が2回も講話する力の入れようは尋常ではない。(略)専門家からは、公職選挙法(公務員の地位利用)などに抵触する、との指摘も出ている。刑事事件としての立件も視野に、県警は速やかに捜査に着手すべきだろう」、北日本「防衛省は、特定候補を支持する話はなかったと釈明する。だが、国家公務員の選挙運動を禁じた公職選挙法には明確に違反しないとしても、『あうんの呼吸』を利用した巧妙な脱法行為だと言えよう。自治体の首長選は民主主義の土台だ。そこに政府機関が介入することは民意の操作である」、日経「公職選挙法は国家公務員が『その地位を利用して選挙運動をすることができない』と規定している。真部氏の行為は同法などに抵触すると疑われても仕方がないだろう。沖縄の不信感を強めるだけの、極めて軽率な行為である」。
《更迭が当然》京都「職員や職員の親族の有権者リストまで作り、選挙に介入したとみなされても仕方ない行為であり、更迭が当然の措置だ。防衛省の調査に対して、真部局長が経緯を説明するのは当たり前のことであり、それを理由にした見送りは納得がいかない」、毎日「投票率アップが講話の目的であったかのような真部氏の説明には、まったく説得力がない。(略)特定の候補予定者支持を明言していなくても、政府方針に近い候補予定者に『肩入れする』のが真意ではなかったか、との見方を『誤解』と片づけるのは無理である。更迭が当然であり、処分の判断をいたずらに先送りすべきでない」。
《たがが緩んだ》産経「こうした事態を招いているのは、野田佳彦首相が、安全保障を基本的に理解していない『素人』を相次いで防衛相に起用したことが大きい。一国の指導者が、真剣に国の防衛や普天間問題に取り組む姿勢を見せないことにより、組織のたがが緩み切っていると言わざるを得ない」、北國「沖縄防衛局では昨年11月、田中聡前局長が記者とのオフレコ懇談で、普天間飛行場移設に伴う環境影響評価書提出に関連した発言が問題視され、更迭された。真部氏は田中氏の前任で、体制を立て直すために再任されたばかりである。(略)防衛省は緩んだタガを締め直し、国民の生命と財産を守る重要な組織を立て直してもらいたい」。
問題は組織、徹底検証を
《政治の責任》朝日「昨年末以降、沖縄では政府の信頼が失墜し続けている。前沖縄防衛局長の女性蔑視の暴言、環境影響評価書の県への提出をめぐるドタバタ、新旧防衛相の沖縄への配慮を欠く不適切な発言……。そこに加えて、この局長講話である。普天間の辺野古移設は、もう実現する見通しはない。政府は今度こそ立ち止まり、他の打開策を探るべきだ」、読売「そもそも普天間飛行場の辺野古移設を決めたのは自公政権だ。野党として、政府の問題点を批判するのは当然だが、結果として辺野古移設の実現を困難にすれば日米関係を不安定化させ、国益を損ねる。党利党略でなく、より大局的な対応が求められる」、中日・東京「ただ、真部氏に対して『トカゲの尻尾切り』をしても、問題は解決しない。組織の問題だからだ。(略)政府はまず、沖縄での選挙介入の実態解明に全力を挙げ、再発を厳に防ぐ措置を講じなければならない」、愛媛「そもそも防衛省は旧庁時代から、イラクへの自衛隊派遣に反対する市民の監視や、情報公開請求者のリスト作成・配布など、民意介入への『無神経さ』をさらしてもいる。国は講話問題を個人の特異例として矮小(わいしょう)化することなく、組織的・構造的な面から徹底検証し、見直すべきだ」、福井「仲井真弘多知事が移設の条件付き容認に傾いた時期に『最低でも県外』とぶち上げたのは鳩山由紀夫元首相、放置したのは菅直人前首相。野田首相は過去を『清算』すべく、いち早く現地に足を運ぶべきなのだ。有能な閣僚も据えられないのはリーダーシップの欠如であり、対話の糸口は全く見いだせない」。(審査室)