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2012年 3月20日
課題解決する政治を
東日本大震災1年の社説(上)
風化を懸念、再生誓う
東日本大震災から1年。大津波と原発事故を伴い、死者1万5854人、不明3155人(14日現在)という戦後最悪の災害は、いまなお34万人余の人々に避難生活を強いている。膨大ながれきが復興を阻み、放射能汚染は消え去らない。そんな中で迎えた「3・11」前後の社・論説は、当日および「震災1年」「原発事故1年」のタイトルを掲げたものだけで150本を超えた。鎮魂と復興、防災や原発政策など、多岐に論じた内容を2回に分けて紹介する。まず在京紙と被災3県の地元紙から。
原発政策の在り方問う
朝日 「津波からの復興」「福島の再建」「政治の立て直し」のテーマで3回連載。「『コンクリートの復興』は進んでも、『なりわいの再建』が置き去りになっていないか」とし、「(原発)事故は放射能をばらまいただけではなく、人々の間に心の分断ももたらした」と指摘。「この1年、私たちが選んだ政治家の行動は、あまりにふがいなかった」「危機に対応できる政治、課題を解決する政治に生まれ変わらなければならない」と主張した。
毎日 シリーズ社説を「爪痕と再出発」「放射能との闘い」「多難な復興の歩み」「原発政策の転換」「エネルギー政策」「首都直下地震」「未来のために」「世界と日本」のテーマで8回連載。初回の「私たちは何を学んだのか」で、「政治の問題解決能力を強化すること」と「原発・エネルギー政策の根源的見直し」を挙げた。原発について「経済の論理が事故の恐怖を風化させてしまうこと」を恐れ、「脱依存の道筋早く示せ」と強調した。
読売 「東日本大震災1年」のワッペン社説を7回掲載、原発については「安全が確認できた原発を速やかに再稼働させるよう、全力を挙げるべきである」と主張した。「被災地の復興は依然、遅れている」ことも指摘し、復興事業の加速を訴えた。11日の「鎮魂の日」では「教訓を、次の大災害への備えに生かさねばならない」「いかなる大災害にも『想定外』を想定し、被害を最小限にとどめる『減災』を追求する」よう呼びかけた。
日経 「大震災1年 新しい日本へ」を5回掲載。「復旧から復興に大きく踏み出す時だ」としてがれき処理などの課題解決を訴え、「被災地、そして東北を再生することこそが、新しい日本をつくる第一歩になる」と主張。「フクシマを乗り越え福島の再生を」と、事故原発の不安除去と除染を促した上で、「安定的な電力供給が産業活動の基盤に不可欠だ。復興需要による景気押し上げ効果を電力不安が相殺するのを避けたい」とした。
産経 「大震災1年」「原発事故1年」「『3・11』」と3回掲載。「日本という国家は、この非常事態に期待される役割を果たすことができたのだろうか。残念ながら『ノー』と答えるしかない」と総括し、その原因は「誤った政治主導と真のリーダーシップの欠如」と断じた。「脱原発」には「根拠の乏しい『危険神話』に取り憑(つ)かれているのではないか」と反論、「原発の安全性向上へのたゆまぬ努力」で電力安定供給の持続を訴えた。
東京 「3・11から1年」のタイトルで3回連載。「被災地に自治を学ぶ」で、住民自治を大事にしながらの復興への動きを評価。「私たちは変わったか」では、「原発の再稼働に前のめり」の「日本の原子力政策は何も変わっていない」とし、「国を古きから新しきに変えて、原発に頼らない国を創る」ことを主張した。「持続可能という豊かさ」でも、「原発に頼らないとは、持続可能という豊かさを得ることでもある」と、脱原発を訴えた。
鎮魂の思い忘れない
《被災3県》河北は8回のシリーズ社説を連載、11日の「風化と闘う」では「喪失感を癒やすには短すぎ、困難を耐えるには長すぎる日々だった」「言ってもせんないことと知りつつ、『3月10日に戻れたら』と誰しもが思う」と書き、「被災地以外では風化が始まっている」と懸念を表明、「被災を人災にしないこと」を訴えた。岩手日報も7回連載。11日の「鎮魂と心の復興」で「鎮魂の思いを決して忘れることなく、県民が一丸となって被災地の復興に取り組む決意を誓い合いたい」と記し、「原発の安全神話」では「私たちに責任はないか」と問い掛け、「『脱原発』に向けた具体的政策を求めたい」と主張した。
福島民報は11日1面に「『3・11』を迎えて」を掲げ、「人類が初めて経験する複合災害は今なお進行中だ」とし、「原発から遠く、家屋に被害のない住民までが古里から切り離された」現状を指摘しつつ、「『うつくしま』の再生」を誓った。福島民友も当日、「県民が味わっている悲しみと苦しみは筆舌に尽くし難い」と書きながら、「ここでくじけるわけにはいかない」と「脱原発」の基本理念の下での再生を呼び掛け、「こういう時だからこそ、政治の強い指導力が求められるのに『3・11』以後も、混迷を深めている」状況を批判した。 (審査室)