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2012年 4月24日
安全性確認は十分か
関電大飯原発の再稼働をめぐる社説
在京紙は賛否分かれる
政府は停止中の原発を再稼働させる際の新安全基準を決め、関西電力大飯原発3・4号機がこの基準を満たしていると判断。枝野幸男経済産業相は14日、福井県庁に西川一誠知事を訪ね、3・4号機の再稼働に協力を要請した。90本を超える社・論説が再稼働を論じたが、在京紙は賛否が分かれた。
政治の道具にするな
《新安全基準》京都「新基準には、全電源を失っても事態が悪化しないよう、電源車の配置や冷却注水設備の多様化、建屋の浸水対策強化などを掲げた。だが、これらは、福島原発の事故後、国が電力会社に指示した緊急安全対策や、関電が行った安全評価(ストレステスト)の1次評価の内容を集約したにすぎない。(略)炉心損傷なども想定した2次評価には手もついておらず、重大事故が起きた際の対策は存在しないに等しい」、河北「これほど低レベルの『安全基準』によって政府が再稼働を認めようとは、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の地元でなくても、あきれ果てた人が多いのではないか。(略)肝心の安全性確認という点でも不十分であり、場当たり的な対症療法だけで再稼働を容認する姿勢は論外だ」、日経「判断基準そのものは妥当だ。まず電源車の配備など緊急の安全対策が間違いなく実施され、東京電力・福島第1原発を襲ったものと同程度の地震や津波に耐えうる備えがあることを再確認する。(略)百パーセントの安全を保証はできないが、打てる手だてを尽くした」。
《協力要請》福井「炉型の異なる15基を抱え、絶えずリスクと向き合い続けた40年である。国は最も過酷な『地元』に真剣に向き合っているのか。(略)まして重要な基幹電源の原発を政治の道具として操ることは許されない。橋下徹大阪市長の過激に繰り出す脱原発発言や滋賀県、京都府知事の言動は市民受けする政治的パフォーマンスにもみえる。再稼働が問題なら電力消費地として身を切る覚悟を示すべきだ」、福島民報「被災地での混乱が続いている今、原発再稼働を議論するのは早過ぎないか。まず事故の検証を急ぐべきだ。(略)古里を離れ、今なお避難生活を強いられている住民が数多いことを考えると、県民感情を逆なでする動きにも見える」、産経「日本の原発は、大飯が動かなければ、5月初旬にゼロとなる極限状況にまで迫っている。代替電力源としてフル稼働してきた火力発電所を休ませる必要もある。さもなければ、投入された老朽火力発電の故障停止続出は目前だ。原発対応での迷走に一刻も早く終止符を打ち、安全基準の決定を機に再稼働を急ぐときである」。
《橋下発言》朝日「橋下市長は夏に向けて、『計画停電もあり得ると腹を決めれば、電力供給体制を変えられる1歩になる』と言う。これは企業や市民に一定の不便を受け入れる覚悟をもってもらうことを意味する。この夏はまず、節電意識を高め、広げていくことが大切だ。住民の暮らしに近い自治体の役割は大きい」、読売「橋下氏は『計画停電もあり得ると腹を決めれば、電力供給体制を変えられる』とまで発言した。これに対し、パナソニックの松下正幸副会長が、『計画停電なんてとんでもない。軽々しく言うべきではない』とたしなめたのは、もっともである。原発を再稼働できないと、関電管内で今夏、最大約20%の電力不足が見込まれる。地域経済に大きな打撃となる」、中国「関電と政府はこう試算する。原発を再稼働せず火力発電などで賄った場合、一昨年夏並みの猛暑になれば電力使用ピーク時の供給力は18.4%不足する。(略)ところが細かく見れば、昨年夏並みで電力が不足するのは12日間の計58時間という。ピーク時の電力使用を前後の時間帯にずらす対策を取るなどすれば、しのげるのではないか」。
地域経済の新たな柱を
《地元》愛媛「藤村修官房長官は再稼働に関し、地元自治体の同意は法的に不要との認識を示した。地元自治体と電力会社が安全協定を結び、曲がりなりにも積み上げてきた関係は一体何だったのか。本県では7市町13万人が伊方原発30キロ圏に入り、危機感を強めている」、毎日「枝野幸男経産相は新たに、隣接する京都、滋賀両府県の知事の理解を求める方針を示したが、手続き上、同意は条件としていない。だが、放射能被害に県境はない。政府は原発防災の重点地域を半径30キロに拡大する方針なのだから、少なくともその範囲に含まれる両府県の同意を、福井県と同様に得ることは当然だろう」、中日・東京「立地地域の人々も、心は揺れているのではないか。原発が危険なことは重々分かっている。原発交付金が、いつまでも続くわけではない。(略)原発に代わる地域経済の新たな柱を用意し、地元に安心をもたらすことも、政府の責務ではないか」。(審査室)