2012年 5月1日
首相は責任認め更迭を

2閣僚問責決議可決をめぐる社説
「決められる政治」取り戻せ

前田武志国土交通相、田中直紀防衛相に対する問責決議が4月20日、参院本会議で可決。民主党政権誕生後の問責閣僚は6人に上る。野田佳彦首相は両氏の更迭を拒否。自民党は国会審議を全面拒否したものの、公明党などの反発で方針転換、消費税増税関連法案などを審議する衆院特別委員会の設置には同意した。しかし、審議入りは大型連休明け以降にずれ込み、先行きは不透明だ。懸案が山積する会期半ばの問責騒動に、60近い社・論説が苦言を呈した。

不毛な攻防うんざり

《更迭すべき》西日本「田中防衛相は、就任当初から国会答弁で事実誤認や言い間違いを連発し、野党の格好の『標的』となっていた。(略)最終的に、北朝鮮のミサイル発射情報をめぐる政府発表が後手に回った危機管理上の責任を問われたが、『万事休す』の印象は否めない」、信毎「前田氏は、岐阜県下呂市長選の告示前に特定候補の応援要請文書に署名したことが問われた。文書は同市の建設業協会の理事長宛てに郵送されている。本人は内容を確認しないで署名したと弁明しているが、国交相の地位を利用しての選挙応援とみられても仕方ない。公選法への抵触が疑われる行為である。田中氏よりも問題の根は深いとみなければならない」、中日・東京「そんな閣僚を続投させれば、任命権者の首相まで適格性を失う。(略)二人を閣内に送り込んだ輿石東民主党幹事長の意向に、首相は逆らえないと思われるのが関の山だ。首相は速やかに内閣を改造して二閣僚を交代させ、態勢を整えて国会審議に臨むべきである」、北海道「野党が問責決議案を乱発して政治が停滞することには問題がある。とはいえ今回の混乱の最大の原因は首相の人選の誤りだ。任命権者の責任として両氏を更迭すべきだ」。

《姑息な了見》産経「野田佳彦首相は『政治生命を懸ける』消費税増税関連法案をいったいどうするつもりなのか。(略)野党から問責決議を出されるまでもなく、2閣僚の交代は不可避だった。しかし、首相が更迭せずにかばい続けていることが、与野党協議への道をせばめ、関連法案の成立をより困難にしている」、毎日「民主党から両閣僚の責任を問う声があまり聞こえないことも消費増税絡みなのではないか。国会が荒れ、審議が遅れるほど、今国会決着は難しくなる。それこそ党内の慎重、反対派の思うつぼであろう。首相が自ら火中のクリを拾わないことは、法案成立への決意が生煮えだと公言しているに等しい」、新潟「首相は、野党の足並みの乱れに期待しながら様子見をするなどという姑息(こそく)な了見では『政治生命を懸ける』大仕事などできるはずもない。ここは、仕切り直しを行い、消費税増税法案など重要法案を堂々と論じ合い、『決められる政治』を取り戻さねばならない」。

《うんざりだ》日経「民主党政権になって問責された閣僚はこれで6人になった。お粗末な閣僚が後を絶たない民主党の人材不足にあきれる一方、それをいちいち政争の駆け引き材料にする自民党のやり方にも違和感を禁じ得ない。有権者の政治不信を高める不毛な『問責攻防』にはもううんざりだ」、読売「国会終盤ならまだしも、重要法案の山積する会期半ばである。(略)公明党は、審議拒否を前田、田中両氏が所管する委員会にとどめる。野党の足並みの乱れを見ても、自民党の全面審議拒否に無理があるのは明らかだ」、中国「野党の問責戦術の見直しも必要となろう。参院の優位をたてに決議し、審議拒否と絡めて政権を追い込むやり方は、民主の野党時代に定着した。停滞する国政の現状を考えると、もはや安易な乱発は好ましくない」。

参院不要論の再燃も

《空転やめよ》朝日「いま衆参両院とも一票の格差が、司法から『違憲状態』などと指摘されている。早く是正すべきだ。議員歳費の削減でも民主、自民、公明3党で合意しながら放置するのか。そもそも東日本大震災の復興は、始まったばかりだ。(略)いま国会が政争を繰り広げ、空転していいはずがない」、神奈川「社会保障問題など、わが国が抱える中長期的な課題を腰を据えて検討するのが参院本来の役割であるべきだ。その機能を放棄し、与野党攻防の場に甘んじるなら存在意義を問われよう。国民の間に参院不要論が再燃しかねないことを肝に銘じてもらいたい」、徳島「民主党内の増税反対派は、国政の停滞に乗じて衆院解散・総選挙の先送りと法案の継続審議を狙っているとされる。そうなれば首相の進退問題に発展するのは間違いない。早期解散を狙う自民に対し徹底抗戦で局面打開を目指すか、閣僚交代による妥協の道を選択するか。首相には、国民生活という大局に立った決断を求めたい」。(審査室)

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