2012年 5月29日
「脱基地」で自立を

沖縄の本土復帰40年をめぐる社説
アジア、環境、跡地再開発

沖縄が復帰して5月15日で40年。95万人だった人口は140万人を超えたが、在日米軍施設の集中は変わらない。この間、振興のため各種予算約10兆円が投入されて道路や空港などの整備が進み、観光業は産業の柱になったが、1人当たりの県民所得は全国最下位クラスだ。50本超の社・論説が40年を総括し課題を論じた。

基地、本土移設の検討も

《負担軽減》中日・東京「沖縄の側からは、なぜ自分たちだけが過重な基地負担を引き受けなければならないのか、それは本土による沖縄に対する構造的差別だと、痛烈に告発されている。日米安全保障体制が日本の安全に不可欠であり、沖縄が日本の不可分な一部であるというのなら、基地提供という安保条約上の義務は沖縄県民により多く押し付けるのではなく、日本国民ができ得る限り等しく負うべきだろう」、毎日「解決には、本土が負担を引き受ける以外にない。(略)沖縄の地理的条件から本土への移転は抑止力低下になるとの見方があるが、装備品の近代化・技術革新で米兵力の即時対応能力は向上している。米軍に代わって自衛隊が役割を分担することも一つの方策だろう」、山梨「普天間を含む負担の軽減を進めるには、在日米軍の見直しによる基地縮小とともに、国内で負担の分散化を探るしかないのではないか。(略)北富士演習場を抱える山梨も、日ごろは存在感の薄い県是(『全面返還、平和利用』)を盾に拒む声もあるが、少なくとも思考停止に陥るのは避けたい」、北海道「同じ日本人として沖縄の痛みを分かち合う気持ちが大切だ。(略)仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は『ほかの県でも受け持つべきではないか』と、国外だけでなく国内の他の地域への基地移転を求めている。こうした切実な声があることに留意すべきだ」。

《地政学的重要性》読売「最近は、中国の軍艦や政府船による尖閣諸島周辺などでの活動が恒常化している。中国海空軍の急速な増強と近代化を踏まえれば、今後、沖縄の安全保障面の地政学的重要性は一層大きくなる。政府は、この現実を直視し、自衛隊と米軍の防衛協力を基盤とする日米同盟の抑止力と実効性を堅持しなければならない」、産経「40年後の今、アジア太平洋の脅威の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の強引な海洋進出に変わった。必然的に尖閣諸島を含む沖縄の戦略的重要性も、ますます増大しているのが現実だ」。

《基地と経済》陸奥「基地返還を悲願とする沖縄県側にも、返還の代償が小さなものではないというジレンマがある。2011年現在、基地従業員は9000人を超え、県庁に次ぐ大雇用主となっている。さらに基地の33%、普天間飛行場に至っては9割以上が私有地という土地所有形態もある。(略)大雇用主がなくなることで生まれる多くの失業者をどうするか、借地料で生活している人は―。米軍基地が経済面で寄与してきた部分の穴埋めが不可欠となる」、日経「本土ではもはや考えられない公共事業の大盤振る舞いが続くのはなぜか。国は表向きは関連を否定するが、米軍基地を負担することへの見返りなのは明らかだ。米軍がじかにかかわる『基地経済』は40年間で半減した。しかし広い意味での基地依存はむしろ深まっているとみることもできる」、神戸「例えば、1981年の基地返還後、県内屈指の商業都市に変貌した本島中部の北谷町のケースがある。今では税収、雇用とも返還前をはるかに上回り、経済波及効果は2千億円を超えるという。『脱基地』の成功例といえる。沖縄は米軍基地で経済や雇用が保たれていると思われがちだ。実際は跡地利用の方が効果があるという証しである」。

沖縄2法と新振興計画

《自立のために》琉球「幸い沖縄の要求をほぼ満たす形で改正沖縄振興特措法と跡地利用推進特措法が成立した。本県はこの『沖縄2法』と本年度にスタートする新しい振興計画に基づき今後10年間、自立的発展を目指す。(略)税制優遇措置なしで成長と雇用を維持できる経営基盤を築かねばならない。健康産業や観光業界で既に手掛けているように、成長するアジア市場を見据えた商品開発や販売促進活動の強化は各業界で急務だ」、沖縄「道路などの社会資本は一定整備されたものの、雇用を創出する有力な地域産業の育成は進んでいない。民間主導の自立型経済をどうつくるかは、最大の課題となっている」、朝日「こんな元気な沖縄でいま、環境に優しいエネルギーの試みが注目されている。そのひとつが、県レンタカー協会などによる『EV(電気自動車)普及プロジェクト』だ。昨年2月、約200台のEVをレンタカーに導入した。(略)環境先進地への挑戦を『脱基地経済』への足がかりにすることを期待する」。(審査室)

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