2012年 7月10日
決める政治への一歩

一体改革法案の衆院通過をめぐる社説
マニフェストはどこに

消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案は民主、自民、公明3党の修正合意により6月26日、衆院本会議で可決、参院に送付された。だが、民主党内では消費税増税法案に小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相ら57人が反対、16人が棄権・欠席して分裂。小沢氏ら衆院、参院合わせて50人は離党届を提出、民主党も衆院議員37人の除名など処分を決めた。70本の社・論説が法案衆院通過や民主党内の造反を論じた。

部分連合は両刃の剣

《一歩前進》西日本「日本の閉塞(へいそく)感の要因となっていた『決められない政治』が、ともかくも打開に向け第一歩を踏み出した。消費税増税を含む社会保障と税の一体改革関連法案が26日、衆院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決した。(略)国民に痛みを強いる重要課題について、ねじれ国会で与党と野党第1党が合意し、具体的に協力するのは画期的だ。その意味は極めて重い。責任ある政党政治への転換として評価したい」、読売「財政再建と社会保障制度改革を推進するための大きな一歩だ。(略)衆院議員の実に約8割が、賛成票を投じたことを評価したい。『決められない政治』に決別し、参院で法案を確実に成立させなければならない」、徳島「社会保障や税については民主、自民、公明それぞれの主張に大きな隔たりがあったが、協議を重ねた末に一致点を見いだした。ねじれ国会のもと、『決められない政治』が続いていただけに一歩前進である」。

《部分連合》日経「民自公3党に今回生まれた連携の機運をこれきりにしてしまうのはもったいない。3党合意で宿題となった社会保障分野の抜本改革に加え、赤字国債発行法案の処理や補正予算案の編成など3党がよく話し合えばよりよい結論が得られる案件がまだまだある。違憲状態が続く衆院の1票の格差の是正も急務だ。(略)3党が政策協議を続け、合意した案件は迅速に処理する『部分連合』のような形はあってよい」、毎日「元々、与党は参院では半数を割っている。首相は当面、他の法案も含め自、公両党の協力を求める『部分連合』を探っていくほかない」、朝日「3党協力の枠組みは『両刃(もろは)の剣』である。なれ合うことなく、緊張感をもって協力すべきは協力する。政権交代の時代にふさわしい政治文化を築く第一歩としたい」、神戸「ただ、一体改革関連法案は3党で合意した以上、自民、公明にも国民への説明責任があることを忘れてはならない。3党の修正協議があまりにも短時間で、国民の理解は十分に得られていない。参院での審議を通し、社会保障と税の在り方をしっかりと示す必要がある」。

《公約違反》中日・東京「消費税は増税しないと衆院選で公約した民主党による約束違反は明白だ。苦い教訓は次の選挙にこそ生かしたい。有権者のやり場のない怒りは、どこにぶつけたらいいのだろう。(略)自民党とは違う脱官僚や政治主導、税金の無駄遣いを徹底的になくすことで『コンクリートから人へ』の政治実現を期待した有権者の民意は完全に踏みにじられた」、北海道「国民に約束した政策は次々と棚上げした。自民党政治からの変化を求め民主党に政権を託した有権者には想像もつかなかったことだろう。民意を軽視した背信行為だ。政権交代の大義を曲げて増税に突き進む首相の責任は極めて重い」、中国「09年の衆院選。民主党のマニフェスト(政権公約)に消費増税はなかった。一方で政権を獲得してからは次々にマニフェストをほごにしてきた。政権政党が約束を守らず、約束していないことを実行しようとする。小沢元代表の言葉を待つまでもなく、どう考えても不自然だ」。

小沢氏の行動は無責任

《造反》産経「小沢氏の政治行動に疑問を呈したい。小沢氏らは、修正合意を通じて、最低保障年金創設や後期高齢者医療制度廃止などマニフェスト(政権公約)の政策が後退したと批判してきた。問題は、小沢氏も内容に責任のあるマニフェストで無駄の削減により16.8兆円の財源を捻出すると謳(うた)いながら、できなかったのに、なおもできるかのように言い続けていることだ」、河北「小沢一郎元代表は消費税増税を『国民に対する背信行為だ』として、グループの議員に離党を働き掛けた。マニフェスト(政権公約)順守を言うのはいいとしても、具体的な財源を示さずに『国民の生活が第一』と叫ぶだけでは無責任だろう」、新潟「小沢氏はある時は『小さな政府』を主張し、ある時は『大きな政府』を訴えた。ことあるごとに強調していた『生活第一』は大きな政府、高福祉高負担そのものだ。にもかかわらず消費税増税には反対だという。この論理矛盾に小沢氏が気付かぬはずがない。(略)もはや政党人の名に値しない」。(審査室)

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