2012年 8月21日
財政再建へ転換点

一体改革関連法成立をめぐる社説
国民に信を問う決断を

野田佳彦首相(民主党代表)と自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表による3党首会談が8日開かれ、衆院解散時期について、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案を成立させた上で「近いうちに信を問う」ことで合意。一体改革関連法は10日成立した。自民党が法案採決前の「解散時期の確約」を首相に求め空転していた国会審議の正常化が期待されるが、解散日程をめぐり政局混迷の火種は残ったままだ。約90本の社・論説から。

社会保障改革の全体像は

《転換点》日経「社会保障と税の一体改革関連法が民主、自民、公明3党の協力で成立した。5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる。日本の財政再建に向けた重要な一歩である。ようやく手にしたこの成果を大切にしなければならない。日本は長い時間をかけて、財政再建と経済成長の両立に取り組む必要がある」、上毛・大分など「追い詰められたわが国の財政、税制を立て直す大きな転換点といえるだろう。(略)低成長が続き、景気回復の実感に乏しい国民生活に、あえて負担増をこわなければならない。その重みを政府、衆参両院で法案に賛成した民主、自民、公明の3党はあらためて認識すべきだ」、朝日「国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい。(略)足を引っ張り合うばかりの政治はもう終わりにしよう。政治が答えを迫られている課題は、なにも一体改革だけではない」。

《増税先行》中日・東京「公約違反の一方的な課税は国民の納税者意識を蝕(むしば)みかねない。国民は選択していない消費税増税を、民主党政権が政府や国会の無駄を削ることなく、社会保障改革の全体像を示すことなく強行したことに怒りを感じているのだ」、福井「社会保障と税の一体改革は、やはり『増税ありき』。そう断じざるを得ない。(略)政府は増税分を社会保障の充実に充てると強調するが、財源不足の多くを赤字国債でまかなっていることを考えれば、国債発行の削減に使うための増税となる」、北海道「与野党が入れ替わったこの3年間、政党と政治家の地金を嫌というほど見せつけられた。民主党は選挙時の約束を破り、自民党は与党をけん制する野党の役割を忘れ党利党略で増税に協力した。社会保障改革を棚上げしたままの増税先行に多くの国民が納得していない」。

《制度設計》山陽「改革の柱である公的年金制度と医療保険制度の改革は、『社会保障制度改革国民会議』に議論が委ねられる。(略)その審議を踏まえ、法施行から1年以内に改革が実施されることになっており、時間は限られる。後期高齢者医療制度や民主党が公約に掲げた最低保障年金などの問題点を精査してもらいたい」、高知「社会保障のような国民生活に直結する制度はたとえ政権交代があっても、根幹が大きく揺らぐことのない安定性が欠かせない。(略)一体改革に値する、社会保障の肉付けを急ぐよう強く求める」。

《低所得者対策》産経「消費税増税に伴う低所得者対策の全体像を早期に示すことも重要だ。平成26年4月の8%への増税時に低所得者向けに現金給付するというが、対象や額は決まっていない。ばらまきにならない工夫が問われる」、読売「増税に伴う低所得者対策については、年末の13年度税制改正に向けた議論で詰めることになる。食料品などの消費税を低くする軽減税率は8%への引き上げ時に導入すべきだ。活字文化と民主主義を守るため、新聞や書籍への適用も検討しなければならない」。

総選挙に向け政策鍛えよ

《解散へ》毎日「民自公3党首が『近いうちに解散』で合意したことから与野党には今秋にも衆院解散、総選挙が行われるのではないか、との見方が広がっている。必ずしも時期を特定できる表現ではなく、民主党内には依然として早期衆院選に慎重論が強いが、いたずらに民意の審判を引き延ばすべきではない」、信毎「自民党内からは今国会中の解散を求める声が出る一方、民主党執行部は早くも早期解散をけん制している。解散・総選挙は不可欠だが、駆け引きが先行するようでは、国民の政治不信は深まるばかりだ。理念と政策を鍛え直し、有権者にしっかりとした選択肢を示すことを各党に求めたい」、西日本「各政党に要望したいのは、『近いうちに』実施される衆院選に向けて政策を鍛え上げることだ。主権者に何を問う総選挙なのか、その争点を国民に分かりやすく説明する準備も怠らないでほしい。条件と環境が整えば、首相は国民に信を問う決断を躊躇(ちゅうちょ)してはならない」。 (審査室)

ページの先頭へ