2012年 9月4日
毅然かつ冷静に対処を

竹島・尖閣の領土外交をめぐる社説
東アジアの安定損ねるな

韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は8月10日、韓国大統領として初めて島根県の竹島(韓国名・独島〈トクト〉)に上陸。さらに、天皇訪韓の条件として謝罪に言及した。日本政府は国際司法裁判所(ICJ)への提訴手続きに入ったが、韓国側は野田佳彦首相の親書を返送。野田首相は毅然(きぜん)かつ冷静に対処すると決意表明し、衆院も抗議決議案を採択、双方の応酬は激しさを増した。一方、沖縄県の尖閣諸島・魚釣島では15日、不法上陸した香港の反日活動家ら14人が入管難民法違反容疑で沖縄県警などに逮捕され強制送還。荒波立つ領土外交を取り上げた社・論説は140本を超えた。

韓国大統領の愚行

《禍根残す》岩手日報「李大統領の行動、言動にはあぜんとさせられる。『未来志向の韓日関係』を掲げながら、日韓両国が領有権を主張する竹島にあえて上陸し、自ら事を荒立てるような姿勢は全く理解に苦しむ。さらに、天皇陛下の訪韓について『訪問したければ独立運動で死亡した人への謝罪が必要』と述べた。2008年に天皇訪韓を招請したのは李大統領自身だった。開いた口がふさがらない」、日経「極めて遺憾であり、日韓関係の将来に大きな禍根を残す愚行としかいいようがない。(略)李大統領の竹島訪問は、たとえ政権の求心力回復をねらう切り札だったとしても、日韓関係にとって得るものは何もない。互いの国民感情を著しく損ね、将来の関係修復を一層難しくしただけだ」、西日本「冷静に見れば、ほとんどの隣国と関係が悪い、というのは由々しき事態だ。気が付けば東アジアで孤立、ということになりかねない。国際社会において『味方』を増やすことが、外交の大きな目標であるとすれば、現況は日本政治と外交の行き詰まりを露呈したと言わざるを得ない」。

《対抗措置》産経「韓国にとって最大の弱点は、日本が1952年の対日平和条約の発効により独立を回復した際、竹島は日本領土とされた事実である。韓国は自国領を主張したものの、米国をはじめ国際社会から認められなかった。この過程で、韓国は領海として『李承晩ライン』を一方的に設置し、竹島を囲い込んだ。不法占拠はここから始まった。(略)日本政府はこのような不当性を一つ一つ国際社会に訴え、明らかにしてゆく必要がある」、京都「政府は、国際司法裁判所への提訴だけでなく、日韓財務対話延期や、安住淳財務相が日韓通貨交換(スワップ)の拡大枠延長の白紙化を示唆するなど、竹島上陸や天皇陛下の謝罪を求めた大統領発言に対抗策を次々に打ち出している。譲歩が難しい領土問題や歴史認識で応酬を続ければ、互いに出口が見えなくなってしまう。政府は冷静かつ柔軟に対処してほしい」、朝日「日本も韓国も、選挙の季節に入りつつある。自民党の谷垣総裁は『野田政権には主権と領土を守る能力が欠如している』と、この問題を理由に早期の衆院解散を求めている。しかし、国内政治やメディアの圧力が政権の強硬姿勢の背中を押し、対立をあおる構図は危険きわまりない」。

《尖閣では》読売「日本が実効支配する尖閣諸島に関しては、より安定した維持・管理ができるよう国有化の実現が急務だ。島を購入する予定の東京都との緊密な連携が重要である。他国による不法上陸や領海侵犯などに迅速に対処するため、海上保安庁や海上自衛隊の体制を強化することも怠ってはならない」、琉球「尖閣問題をこじらせて、日中が武力衝突する事態は絶対にあってはならない。場合によっては国際社会にも見える形で正々堂々と外交交渉に乗り出し、領有権をあらためて主張することも、選択肢として検討する時期ではないか」。

中韓は重要な隣国

《対話保て》毎日「日韓は米国の同盟国であり、東アジアの民主主義を支える先進国である。中国の台頭をにらんでアジア回帰を宣言した米国も、日韓の対立が中国や北朝鮮を利し、地域の安定を損なうことを強く懸念している。竹島をめぐる摩擦は、東アジアを混乱させ、日米韓の連携を台無しにしてまで激化させるべきものか。両国指導者は考えてほしい」、中日・東京「一時帰国していた武藤正敏駐韓大使もソウルに戻った。(略)政府間対話のチャンネルを閉ざしてはならない。韓国では十二月に大統領選が実施される。対立を持ち越さないよう、次期政権も見据えた日韓双方の外交努力が必要だ」、信毎「今回の国会決議には、『わが国は、韓国を重要な隣国として認識していることは変わらず、韓国国民と親密な友誼(ゆうぎ)を結んでいくことができる』とある。中国に対しても『幅広い分野で緊密な関係を有し、利益を共有する重要なパートナー』と述べている。真に依拠すべきは、ここである」。(審査室)

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