- トップページ
- 刊行物
- 新聞協会報・紙面展望
- 構造的差別に不満続出
2012年 10月16日
構造的差別に不満続出
オスプレイ沖縄配備をめぐる社説
基地負担分散へ政府は実行を
米軍新型輸送機MV22オスプレイが1日から、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備され、米海兵隊による本格訓練が始まった。県知事と県議会、県内の全41市町村長と全議会が明確に反対するなか、配備強行は「民意無視」だと地元に抗議の声が渦巻いた。訓練飛行では、垂直離着陸(ヘリ)モードでの市街地飛行が行われ、日米両政府が合意した安全策の「合意破り」も見られた。70本超の社・論説が基地問題と日米安保体制を論じた。
民意無視の高慢な姿勢
《暴挙》沖縄「政府の『安全宣言』は、根拠が乏しく、住民の不安をますます高める結果になっている。住民はオスプレイの安全性だけを問題にしているのではない。県をはじめ各政党、自治体が足並みをそろえて反対しているにもかかわらず、沖縄の民意を無視し続ける政府の高慢な姿勢をも問題にしているのだ」、琉球「飛行路の下には生身の人間が住んでいる。われわれは命の危険にさらされている状態を決して看過しない。県民はオスプレイ配備を撤回させるまで声を上げ続ける。沖縄を植民地視する高慢な姿勢が、逆に米軍自らを窮地に追い込んでいくと自覚すべきだ」、東京・中日「過重な米軍基地負担に苦しむ多くの県民が強く反対する中での配備強行だ。県民の思いを踏みにじる暴挙には怒りを覚える。(略)普天間は一刻も早く日本側に返還されるべきものであり、負担軽減につながらない新型軍用機の配備が許されるはずがない」。
《差別的》朝日「沖縄県民が怒るのは、新型機の安全性の問題だけからではない。米軍基地を沖縄に押し込める構造。それがいつまでたっても改まらない。これらを差別的だと感じていた不満が、一気に噴き出したのだ。だからこそ、先月の県民大会には、お年寄りから子供まで、組織されない人たちもふくめて数万人もが集まった。参加者の広がりや、抗議にこめられた思いの強さは、これまでとは明らかに質が異なる」、西日本「沖縄では、現在の基地集中を『構造的差別』だとする考え方が広がっている。日米政府が沖縄の犠牲の上に、占領時の基地政策を続けているという認識だ。沖縄の怒りは、単にオスプレイ配備にとどまらず、沖縄に負担を押しつけるいびつな基地政策や、不公平を放置する本土住民の無関心に向けられている」、神奈川「在日米軍基地の安定運用は、生活被害を抑止する努力を重ね、地元の理解を得られてこそ実現するはずだ。基地を抱える自治体、住民との溝をこれ以上深めることは許されない」。
《離島防衛》日経「いま沖縄の米海兵隊が使っている輸送ヘリCH46に比べると、オスプレイは速度、航続距離、搭載重量のすべてにおいて優れている。こうした能力は日本の離島防衛に役立ち、対中抑止力を強めることにもなる」、産経「日本の安保環境が悪化する中で離島防衛のカギを握る輸送力、展開力、速度のどれをみても日米に必須といえ、こうした軍事・戦略上の意義を認識しておきたい」、読売「重要なのは、オスプレイ配備が日米同盟を強化し、アジアの安定にも寄与することだ。中国が、沖縄県・尖閣諸島周辺を含む東シナ海で海空軍の活動を活発化させている」。
なし崩し的な合意破り
《合意破り》山陽「配備早々、日米が合意した安全確保策への『違反』も確認された。こうした米軍の『合意破り』がなし崩し的に行われぬよう、日本政府は違反があれば直ちに運用の見直しを迫るなど強い姿勢で臨むべきだ」、高知「政府がオスプレイ運用について安全宣言を出し、沖縄の県民らに配備への理解を求めたのは、日米合意した安全策順守を前提にしたはずだ。それが配備と同時にいとも簡単に破られる。いったい何のための合意だったのか」。
《負担分担》毎日「首相メッセージは、『オスプレイの本土への訓練移転』など『全国でもその負担を分かち合っていく』と述べた。その通りだ。オスプレイに限らず、本土が沖縄の基地負担を引き受け、大幅な負担軽減を実現することなしには、積み重なった不信を解消することはできないだろう。本土の説得は政府の役割である」、北海道「在沖縄米軍再編の基本は地元負担の軽減だったはずだ。オスプレイ配備は住民の不安を増大させ、再編の流れに逆行している。(略)米議会にも異論がある名護市辺野古への移設計画は断念し、県外、国外へ移設を模索するほかない」、河北「沖縄の基地負担の軽減は、安全保障分野での負担を日本全体に分散させることに直結する。沖縄の痛みはもう限界だ。基地機能の分散という難題に取り組む体力が、民主党政権に残っているのか。沖縄県民は言葉ではなく、実行を求めている」。(審査室)