2012年 10月30日
選挙無効へ最後通告

参院「違憲状態」の最高裁判決めぐる社説   
抜本改革で格差解消せよ    

最高裁は17日、2010年7月の参院選をめぐる定数訴訟の判決で、最大5倍だった1票の格差を「違憲状態」とする判断を示した。選挙の無効請求は退けたが、都道府県を選挙区とする現行方式の抜本改革を求めている。昨年は09年の衆院選についても「違憲状態」としており、両院が違憲状態という前代未聞の事態。動かぬ国会に対する司法の「最後通告」を、40を超す社・論説が取り上げた。    人工多能性幹細胞(胞)を作製した山中伸弥京大教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。iPS細胞は全身の細胞に変化し無限に増やすことも可能なので、医療を根本的に変えると期待が集まっている。46本の社・論説が受賞を祝福した。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥京大教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。iPS細胞は全身の細胞に変化し無限に増やすことも可能なので、医療を根本的に変えると期待が集まっている。46本の社・論説が受賞を祝福した。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥京大教授がノーベル医学生理学賞を受賞した。iPS細胞は全身の細胞に変化し無限に増やすことも可能なので、医療を根本的に変えると期待が集まっている。46本の社・論説が受賞を祝福した。 

国会の不作為にいら立ち    民意無視の高慢な姿勢 民意無視の高慢な姿勢 

《最後通告》北日本「有権者約24万人で1人の議員を選ぶ鳥取県に対し、神奈川県では約121万人で1人である。自分の1票がほかの人の5分の1の価値しかないなら、不公平だと思うのは当然だ。司法が国会の不作為に突き付けた選挙無効への最後通告と言えよう」、毎日「両院とも違憲状態という異常事態だ。違憲状態が相当期間続けば、次は違憲判断が出てもおかしくない。今回の判決で『違憲』の立場を取った3人のうち2人の裁判官は、13年の参院選が抜本改革なしで行われれば、選挙無効の判断もあり得るとした」、西日本「もう言い訳は許されない。事の重大性と緊急性をあらためて認識し、国会は格差是正へ早急に動くべきである。(略)ことあらためて『法の下の平等』を持ち出すまでもあるまい。『違憲状態』という言葉は、国政を担う政党や政治家の憲法感覚そのものを問うていると受け止めるべきだ」。 

 《意義》河北「山中教授の独創性は、受精卵以外の細胞を使って『万能細胞』を作製したことに尽きる。(略)特定の四つの遺伝子を加えることによって細胞を『初期化』できること、つまり将来さまざまな生体組織に変わるフレッシュな細胞に再生できることを世界で初めて突き止めたわけだ」、北國「山中教授は、生命の常識を覆した。通常、1個の受精卵は、さまざまな細胞に変化し、臓器や骨、皮膚などを作り出す。その生命のプログラムを逆転させ、1個の細胞から万能細胞を誕生させた。まさに科学の教科書を書き換える発見であり、研究発表からわずか6年後の受賞という時間の短さが研究価値の高さを裏打ちしている」、毎日「いつかは必ずと思われてきたとはいえ、『日本発』のブレークスルーに揺るぎない評価が与えられた意義は大きい。(略)特に山中さんの成果は現在進行形のホットな分野である。日本の現在のバイオ力を世界に示すものとして喜びを《定数是正》山形・上毛・岐阜など「過去の参院選では、最高裁は5倍前後の格差を『合憲』としてきた。今回、一歩踏み込んだ点に、小幅な定数是正しかしてこなかった政治に対する司法のいら立ちを感じざるを得ない」、北海道「注目すべきは最高裁が定数の振り替えにとどまらず、都道府県単位の選挙区設定となっている現行制度の抜本改革を求めたことだ。参院は先の通常国会で選挙区定数を4増4減する案を可決したが、衆院で継続審議となった。最高裁はこれが小手先の改革にすぎないことを見抜き、抜本的な改革を求めた」、読売「判決は、一部の選挙区の定数を増減させるだけでは解決にならない、との見解も示した。仮に『4増4減』案が成立しても、違憲状態は解消されないとの疑義が示されたとも言える。(略)与野党は、『4増4減』よりも踏み込んだ定数是正案をまずは検討すべきではないか」。 

《抜本改革》中日・東京「制度を抜本的に改めるならば、複数の都道府県を合わせる『合区』や、ブロック制、全国を一選挙区にすることなどが考えられよう。一〇年には当時の西岡武夫参院議長が比例代表を全国九ブロックに分割する試案を出した。この方法だと、格差は一・一三倍と飛躍的に縮まる」、京都「参院は定数是正だけでなく、独自性の問題にも直面している。衆院の『カーボンコピー』との批判はやまず、そこに衆院の小選挙区比例代表並立制移行が拍車をかけた。『良識の府』を期待されながら、今や『政局の府』に陥っている」、高知「抜本改革は衆参の『ねじれ状態』下で制度疲労も指摘される二院制の在り方をどう考えるかという課題につながってくる。選挙制度の在り方は各党の消長に影響するだけに、党利党略が優先されがちだ。最終的に国会が決めるにせよ、首相の諮問機関である選挙制度審議会といった第三者機関でまず議論することを真剣に検討すべきだろう」。 

《地方の声》中国「首都圏への一極集中という現状を放置したまま、単に形だけの格差解消であってはならないだろう。『1票の格差』の問題では有権者数だけではなく、投票率も考慮すべきだとの意見がある。大都市部に比べ地方はおしなべて高い」、愛媛「格差是正を単純に突き詰めるだけでは人口の少ない地方議席がゼロになり、都市部の声しか国政に反映されなくなる危うさもはらむ。改革にあたっては、選挙以外の行政の仕組みの中でも、地方の声を吸い上げ政治に生かす多様なシステム構築を並行して進めることが重要だろう」。 

問われる議員の見識・覚悟    なし崩し的な合意破り 

《緊急措置》日経「衆院の1票の格差是正も待ったなしの課題だ。最高裁が『違憲状態』と断じた定数配分のまま次の衆院選を実施するのは憲法の三権分立を無視する暴挙で、国政への有権者の信頼を損なう」、産経「臨時国会で緊急避難措置として参院の『4増4減』、衆院の『0増5減』の定数是正法案を成立させるとともに、抜本改革への取り組みを開始すべきだ」、朝日「衆参そろって違憲状態という前代未聞の状況は、国会が目をさます最後の機会だ。国民の意思を正しく反映する議会をつくり、未来に道を開くのか。最後まで党利党略に走り、混迷を抜け出せなかった『選良』として、後世に恥をさらすのか。議員一人ひとりの見識と覚悟が問われている」。(審査室) 

ページの先頭へ