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2012年 12月4日
民主化へ政治改革を
中国の習近平体制発足をめぐる社説
自制すべき威圧外交
中国共産党は11月15日、習近平国家副主席を最高指導者の党総書記に選出。同時に軍のトップである党軍事委員会主席にも就いた習氏による新体制が発足した。最高指導部の党政治局常務委員は9人から7人に減員したが、江沢民・前国家主席に近いベテランの保守派が目立つ。39本の社・論説が中国新体制の行方と課題を論じた。
保守色の強い布陣
《保守色》毎日「権力闘争の結果生まれた党政治局常務委員7人は、来年の春、国家主席になる習氏と、首相になる李克強(りこくきょう)氏以外は、江沢民(こうたくみん)・前国家主席派で占められた。習政権は江氏ら長老の支配干渉を受け、保守的強権的な統治、強硬な大国主義外交に走る可能性が高い」、北海道「最高指導部の常務委員7人のうち、習氏を含む6人が江氏に近い保守色の強い布陣となった。保守派は一党独裁体制下で強大な権力が集中する党幹部らの利権を維持しようとする傾向が強く、民主化が停滞する懸念がある。またナショナリズムによって国民の結束力を高めようとする姿勢も顕著で、東シナ海や南シナ海への海洋進出を加速する可能性もある」、信毎「改革に消極的な保守色の強い布陣との見方もあるが、肝心な習氏の評価が定まってはいない。どんなビジョンを持って国を運営していくのか、はっきりしたことが分からない。改革派と保守派の対立が見え隠れしており、両派のせめぎ合いは続くとみられる」。
《改革》朝日「中国は、多様性を反映できる政治に向かうべきだ。一党独裁の殻に閉じこもったままでは、未来は開けない。総書記を退いた胡錦濤(フーチンタオ)・国家主席は今回の党大会で、20年までに国内総生産(GDP)と、個人の所得を倍増させる目標を掲げた。課題は、既得権層に集まる富を農民や労働者にもゆきわたらせる経済への改革ができるかどうかだ」、中日・東京「目をこらすべきは、習政権が経済成長に代わる安定装置を国民に示すことができるかどうかだ。不公平感をなくすため大胆に政治改革に踏み込むしか、安定は保てぬだろう。(略)言論や報道の自由を進めることが改革への一歩になろう」、琉球「新指導部は当面、大国主義路線と引き締め政策を維持するだろうが、それでは山積する内外の課題に対処できないということを、この機会に再認識すべきだ。所得倍増を進める一方で、貧富の格差や環境汚染、汚職の蔓延(まんえん)などの課題を解決することは特に重要だ。生活向上と情報化社会の進展を背景にした、国民の権利意識の高まりや民主化要求にも真剣に応えていく必要がある」、中国「記者会見で『一部の党幹部の中にある汚職・腐敗問題、官僚主義などの問題は全力で解決しなければならない』と述べたのは習氏本人である。(略)自らが高級幹部の子弟グループ『太子党』の一員であることからすれば、一つの決意と受け止めたい。汚職・腐敗にメスを入れるのを手始めにして、大国にふさわしい政治体制の民主化へ、かじを切るべきだろう」。
日本は関係修復が急務
《日中》北國「尖閣諸島を国有化した日本政府に対抗するため、大規模な反日デモや日本製品不買運動などの強硬策を主導してきたのは、胡氏よりもむしろ軍や党内保守派に支持される習氏とみられてきた。党と軍の最高地位に就いたとなれば、ますます領土問題で安易な妥協は許されなくなる。国民に『強い指導者』像を印象づけるためにも、当面、習氏の対日強硬姿勢は続くとみなければならない」、産経「日本のとるべき道は明確だ。習体制は尖閣問題で一層の圧力をかけてくる可能性があるが、日本は断じて屈してはならない。領土・領海を守る十分な防衛力と、それを的確に動員可能にするために、憲法改正を含む法整備を急ぐ。日米同盟を基軸に豪州、東南アジア、インドなどとの政治、軍事的連携も強化すべきだ」、日経「世界の中でも日本は、とりわけ難しい立場で習時代の中国と向き合っていかざるを得ない。(略)日本が領土や領海に関する正当な主張を掲げるのは当然だ。中国の軍備増強に対応するため防衛力の整備や日米同盟の強化も欠かせない。かといって、中国を挑発するような勇ましい言動を振りかざすことも日本の国益に反する」、読売「中国が尖閣諸島の国有化に反発して始めた日本製品不買運動は日本経済だけでなく、中国経済にも打撃を与えた。習政権は威圧外交を速やかに自制すべきだ」、京都「尖閣諸島問題で習氏は『国有化は茶番』『領土争いが激化した』と日本を批判している。トップとなっても強硬な発言が続くのか気がかりだ。新指導部の常務委員に、知日派は次期首相に就く見通しの李克強氏しか見当たらない。(略)民主党政権で中国との外交パイプは細くなった。総選挙で日本の政権がどうなるにせよ、関係修復は急務だ」。(審査室)