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2013年 1月22日
日本再生は復興とともに

地方各紙の新年号紙面
住民参加で地域活性化を

東日本大震災、福島第一原発事故から2度目の新年を迎えた。被災地復興は進まず、避難者はなお32万人。地方からは、昨年末発足した安倍晋三内閣に対しまず復興の加速を要請。原発や社会保障など国の重要課題を論ずる一方、地方全体がデフレや少子高齢化、人口減で閉塞(へいそく)感に覆われる中、インターネットやNPO活動を通じた住民の自立、連帯に地域活性化の糸口を見いだす論調も目についた。

夏の参院選が「分かれ道」

《復興遅々》神奈川「被災者にとって、心の再生に必要なら、災厄の記憶は『浄化』されるべきものかもしれない。一方で、復興に手を差し伸べる立場にある者の責務は、記憶を『風化』させないことである。年頭にあたり、あらためて心に刻みたい」、福島民友「今なお16万人近くの県民が県内外で避難生活を送っている。昨年は復興元年といわれたが、復興への道筋が描けぬまま1年が過ぎ去ってしまったというのが実感ではないか。(略)昨年末に発足した第2次安倍内閣は日本経済再生を前面に掲げているが、日本の再生は、本県はじめ被災地の復興と同時進行でなければ成し遂げられないことを肝に銘じ、大胆に政策を打ち出してもらいたい」、河北「『山河破れて国あり』。復興の足取りが遅れれば、私たちは荒廃したふるさとを子や孫に引き渡すことになる。それは将来世代に対するつけ回し。差別にほかならない。昨年、沖縄県尖閣諸島の領有権をめぐって日中両国が角突き合わせた。絶海の無人島を守るために費やされた政治的エネルギーに比して、東北復興に割かれたそれは十分だったろうか」、岩手日報「スマトラ沖地震津波、ハリケーン『カトリーヌ』では、それまで暮らしていた人々の生活が駆逐される悪夢が現実になった。わが国では災害を『食いもの』にする事態は起きていないと信じたいが、昨年発覚した復興予算の流用が脳裏をよぎる。1月から復興財源を確保するための所得税の増税が始まる。痛みは心苦しいが、一緒に災難を食って確かな一歩を踏み出したい」。

《安倍政権》新潟「安倍氏は首相への再チャレンジに成功した。吉田茂元首相以来、64年ぶりのことだ。前の第1次安倍内閣から野田佳彦前首相まで、6年で首相6人である。正月のすごろくのように、振り出しに戻っただけというのでは困る。長引く不況や震災で、職に就けなかったり、職を失ったりした人たちにこそ、再チャレンジの機会を与える年にすべきだ」、北海道「安倍首相は、憲法改定、国防軍の創設などを掲げ、平和主義など日本の戦後の路線を否定する意思が鮮明だ。外交では『断固として』などの言葉を繰り返して威勢がいい。安倍氏の登場そのものが日本の転機をつくりだす可能性がある。(略)しかし、米欧からも『右傾化』や『タカ派』と警戒する論調が出てきていることは軽視すべきではない」、信毎「安倍晋三首相は自らの内閣を『危機突破内閣』と名付けた。『国家、国民のために目前の危機を打ち破っていく』と言う。だが、危機とは何か、原因をつくったのは誰なのか。そこが肝心である。(略)危機感をあおられて、有権者が冷静さを欠くようだと進むべき方向を見失う恐れがある。昨年の衆院選に続き、ことし夏の参院選を政治の分かれ道と位置付けたい」。

原発の危機管理は

《重い課題》福井「前政権は『30年代に原発ゼロ』を掲げ、衆院選で政争の具と化した。安倍内閣は一転、見直す方向だ。原子力規制委員会による安全基準策定はスピード感がなく、住民避難の根拠となる原子力災害対策指針は肉付けが希薄。再稼働に関わる断層調査も説得力を欠く」、佐賀「災害に強い国土づくりは安心・安全の要だ。(略)福島原発事故を経験した今、危機管理の視点に立って最悪の事態に備えることが求められている。廃炉や補償を見越して可能な電源政策であるべきだろう」、琉球「日米両政府は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画を着々と進める。昨年10月には事故が頻発してきた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備を強行した。(略)日米は自由、民主主義、人権尊重、法の支配を共通の価値観と喧伝(けんでん)する。ならば、アンフェアな沖縄政策も根本的に見直すべきだ」、高知「勤労者らの収入は目減りし、格差は広がり続けている。支えとなるはずの社会保障もほころびが目立ち、厳しい財政事情との格闘が続く。私たちが暮らす地方では疲弊がますます進む。(略)たとえ負担は重くなっても、安心して暮らしていける裏付けがあれば国民の抵抗感は違ってこよう。今夏に社会保障の在り方をまとめる国民会議、それを基に政策を具体化していく政治の責任は極めて重い」。

《住民の力》山陰「山陰両県は人口減少と高齢化が進み、地域づくりに新たな取り組みが求められている。解決の一つの糸口は住民参加だ。住民のボランティア参加実態を示すボランティア活動率で、島根県は全国2位、鳥取県は4位の高位置にある。この住民意識の高さを生かした戦略を構築するべきだ。行政の手が届かないところに住民の力が生きる」、山陽「岡山県内では昨秋、NPO法人を支援する財団が発足した。まちづくりや福祉、環境などに取り組むNPOの活動を資金面で支えるために、市民に広く寄付を募る。住民の中にあるニーズとサービスをつなぎ、地域の課題解決を図ろうという仕組みである。いろいろな形で人と人、地域と地域をつなぐことができれば、地方はもっと元気になれそうだ」、西日本「佐賀県武雄市や島根県海士町のように、行政主導でネットを通じて産品と地域の暮らしの魅力をPRし、経済活性化や人の交流に成功している例は多い。新しいネットワークを活力や知恵の共有にさらに結び付けていきたい。(略)閉塞(へいそく)感漂う世相で、実は新しい時代の胎動がすでに私たちの気付かぬうちに始まっているはずだ」。

自然エネルギーに注目

【1面トップ】41紙がニュース(調査などを含む)、15紙が企画(対談などを含む)、18紙が連載でスタートした。

《ニュース》原発事故や原発政策、震災対策関連では、福島民友「甲状腺検査医師ら『認定』 技術標準化と人材育成 県民健康管理調査」、長崎「長崎大が教育研究拠点 帰村宣言の福島・川内村 放射線影響調査 健康管理を支援」、デーリー東北「原子力『必要』根強く 原発ゼロ堅持求める声も 県内市町村長アンケート」、神戸「南あわじ 湾口部に防波堤 県内初 南海トラフ地震想定」。自然エネルギー開発では十勝毎日「輝け!バイオマス都市 農業中心に循環型 オール十勝 モデル地区目指す」、釧路「市民の手で太陽光発電 道内初共同方式 釧路で計画」、熊本「県民出資で発電所 太陽光、小水力など再生可能エネルギー 県が構想」など。山陰「境港クルーズ船ラッシュ 13年見通し 過去最多9隻 14回寄港」、八重山毎日「新石垣空港3月7日開港 八重山新時代の幕開け」は、観光や経済効果に期待。埼玉「現新5人出馬準備 参院選埼玉選挙区」や岩手日日、奈良は半年後に迫った参院選を展望した。

《1面連載》3、4日付からを含め32紙が掲載。秋田「あしたの国から 人口減社会を生きる」、室蘭「ふるさとに輝き求めて 地域再考」、北日本「やわらかな手で」、下野「銀の靴を探して 2025年 交通とまちづくり」、日本海「郷土再生」、京都「深層わがまち」は、疲弊する地域の再生を探り、河北は「わがこと 防災減災」で、いのちと地域を守るキャンペーンを始めた。神奈川「新政権始動 この国の行方」、新潟「絡み合う思い 政治漂流」は政権交代に絡め国や地域の課題がテーマ。沖縄「日本への告発状 基地問題の実相」は普天間移設推進やオスプレイ配備を「逆走政府」と批判した。

【ページ数】在京紙を含め別刷り込みのページ数は21紙が増加、31紙が減少。48紙が増減なし。100ページ以上は昨年より4紙減の32紙。別刷りのテーマは、地域の伝統や自然、食の見直し、新エネルギー開発などが目立ち、ふるさと再考・再生に期待を込めた。(審査室)

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