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2013年 2月12日
首相、経済最優先の姿勢
通常国会開会をめぐる社説
野党は政治動かす責任担え
第183通常国会が1月28日召集され、安倍晋三首相が第2次安倍政権として初めて所信表明演説を行い、デフレから脱却し経済再生に最優先で取り組む強い姿勢を鮮明にした。30日からは衆参両院で各党代表質問が行われ、海江田万里民主党代表は積極的な金融緩和と財政出動を進める「アベノミクス」の副作用に懸念を表明した。首相は答弁で、民主党政権下での原発政策の見直しや、改憲発議要件の緩和にも言及した。70本超の社・論説から。
参院選見据えた所信表明
《安全運転》河北「二度目の首相就任から1カ月余。思惑通り円安、株高が進み、経済立て直しに国民の期待が膨らむ。政権の滑り出しは、上々と言っていいだろう。だが、どこか慎重。持論を抑え込んで安全運転に専念するのは、今夏の参院選対策のためだろう」、新潟「『丁寧な対話』『各党各会派の格別のご理解とご協力を』『与野党の別を問わず』『与野党の英知を結集し』と低姿勢が目立った。首相にとっては、夏の参院選での勝利こそが『強い日本』につながるという考えなのではないか」、毎日「衆参『ねじれ』解消をかける夏の参院選まで経済重視で実績を上げようとする安倍内閣の戦略に沿った内容だ。だが、首相復帰後の初演説だけに『2次内閣』の理念やグランドデザインをより率直に語りかけてほしかった」。
《アベノミクス》西日本「演説で最も力を入れたのは経済再生だ。『長引くデフレや円高が「頑張る人は報われる」という社会の基盤を根底から揺るがしている』と指摘した。日本銀行に大胆な金融緩和を求め、国債による大規模な財政出動で景気を下支えする。(略)にもかかわらず、財政再建の道筋ははっきりしない」、朝日「多くの国民が経済再生を望んでいるのは確かだ。首相が力点をおく思いはわかる。一方で、アベノミクスには放漫財政の不安もつきまとう。首相は『中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化をめざす』と語ったが、これだけでは物足りない。財政規律をどう守るのか、もっと具体的な考えが聞きたかった」、上毛・宮崎など「『アベノミクス』では、公共工事などの財政支出も重視されているが、演説では『財政出動をいつまでも続けるわけにはいかない』という問題意識も表明した。(略)『デフレからの脱却』を至上命令とした、めりはりの利いた表現と見ることもできるが、半面、財政健全化に向けては説明が不十分ではないか」。
憲法改正にも意欲
《憲法、原発、TPP》北海道「首相は憲法改正について『まずは96条の改正に取り組んでいきたい』と述べた。衆参両院の『3分の2以上』の賛成がなければ国民投票にかけられない改正要件を『過半数』に緩和するものだ。首相は憲法改正に意欲を燃やし、戦争放棄をうたった9条を改め『国防軍』創設などを目指している。96条の変更はその第一歩だ。国民が60年以上守ってきた平和憲法を変えることは認められず、性急に議論を進めるべきではない」、産経「自民党や日本維新の会は発議要件を2分の1に緩和する案を示しており、首相が『不磨の大典』の見直しを最優先すると表明した意味は大きい。改正に慎重な公明党の説得などは残るが、賛同する勢力を増やすためにも、憲法改正への具体的な論議を深めてほしい」、日経「TPPについて『聖域なき関税撤廃を前提にする限り参加しない』との線にとどまったのは残念だ。テレビ番組で『参院選の前に方向性は示していきたい』と踏み出した直後だけに詳しい説明が聞きたかった」、中日・東京「経済再生は重要だが、安倍晋三首相が所信表明演説で触れなかった原発の存廃も避けて通れない論点だ。政府の姿勢をただし、議論を深めるのは国会の責任である。(略)原発に依存しない経済・社会を実現するには与野党を超えた協力が必要だ」。
《迫力欠く野党》信毎「民主党の海江田万里代表が代表質問を行った。大敗を喫したとはいえ、野党第1党の党首による代表質問である。反転攻勢への足掛かりとなるか、有権者の関心を集めたものの、中身の薄いやり取りに終わった」、京都「支持が低迷する民主にとって、悲壮な覚悟で臨んだはずだ。しかし、代表質問には絶対に継続すべきと主張する政策がなかったのはどうしたことか。与党時代に打ち出した施策について、総括ができていないのは明らかだ」、読売「海江田氏は、民主党の役割について『自公政権のチェック機能を果たす』一方で、『政権運営の経験を持つ野党として「決める政治」を前進させる』とも語った。妥当な認識だ。衆参ねじれ国会の下、参院第1党の民主党は、政治を動かす責任の一翼を担っていることを忘れてはなるまい」。(審査室)