2013年 2月26日
実効性ある制裁を

北朝鮮3回目の核実験をめぐる社説
カギ握る友好国・中国

北朝鮮は12日、「3回目の地下核実験を成功裏に実施した」と発表した。弾道ミサイル搭載に向け核弾頭の小型・軽量化を進めたとも示唆。日本だけでなく米国本土まで射程に入る恐れが高まる。国連安全保障理事会は昨年12月のミサイル発射を受けて、さらに核実験強行なら「重大な行動をとる」と1月に警告したばかり。直ちに非難声明を発表し、厳しい追加制裁決議採択へ協議に入った。50本の社・論説が取り上げた。

核軍縮願う人類への挑戦

《脅威》日経「北朝鮮は核実験で『爆発力は大きいが、小型化・軽量化した原子爆弾』を使用したと表明した。米国を射程に入れた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を狙っているのは明らかだ。(略)今回は初めて濃縮ウラン型の核実験に踏み切った可能性もある。北朝鮮は原料となる天然ウランが豊富で、核兵器の大量製造につながる懸念もある」、中国「今回、最も懸念されたのは、核弾頭を小型化する技術が一気に進むことだった。昨年のミサイル発射実験により、約1万キロ離れた米国本土や欧州を射程に収める懸念が現実味を増している。小型の弾頭ならこれに搭載できる」、毎日「ICBMそのものは米本土を狙う兵器だが、その完成に必要な核弾頭の小型化技術は当然、射程の短い中距離ミサイルにも使える。大量に実戦配備済みのミサイル『ノドン』は、日本のほぼ全域を射程に収めている。これに小型化された核弾頭を搭載すれば、日本にとって最悪の大量破壊兵器になる」、福島民報「抑止を求める諸国との対話を拒み、ひたすら核軍備を進める姿勢は、広島、長崎への原爆投下を体験し、核軍縮を願う人類への挑戦といえる。(略)東京電力福島第一原発事故により、放射線汚染と闘う県民としても到底受け入れ難い」。

《追加制裁》読売「国連安全保障理事会は、制裁強化を新たに決議すべきだ。(略)北朝鮮が安保理決議を無視してミサイル発射と核実験を繰り返したのは、従来の制裁措置が実効性を欠いていたためだ。この悪循環を断ち切るため、安保理は今度こそ包括的で実効性ある制裁を決定し、その実施を徹底すべきである」、産経「これまでの安保理制裁は、兵器関連物資の禁輸と、核、ミサイル開発関連団体と個人の資産凍結、渡航禁止が柱となっている。新決議はこれらの措置の強化に加え、禁輸徹底のための貨物検査の義務化や、北への外資流入を止める銀行取引規制といった本格的な新規制裁とすべきだ。さらなる暴挙には、海上封鎖で応じることにも言及し、強い警告を込める必要がある」、長崎「核実験を機に、経済制裁をはじめとする北朝鮮への圧力は強まることになる。核実験が自国に不利益しか生まないことを伝える意味でそれは必要であろう。一方で、危険な相手に懲罰だけを科しても地域の安定的将来は見通せない」。

《中国》信毎「今後のカギを握るのは北朝鮮の友好国の中国である。6カ国協議の議長国としても過度の刺激を与えることを避けてきたが、今回は核実験への反対を強く表明していた。(略)他の国々とともにこれまでの対応を見直し、非核化への取り組みを再構築することに全力を注いでほしい」、朝日「中国は、北朝鮮の安定のために過度に配慮する政策の限界を認め、姿勢を転換すべきときだ。中国からの食糧やエネルギーを止めれば、北朝鮮にとって大きな圧力になる」、中日・東京「中国の習近平政権には、エネルギーや食料など援助の大幅削減も視野に入れ、北朝鮮の危険な行為が高くつくことを理解させるよう望む」、静岡「主な貿易相手国の中国は金正恩体制の崩壊を望んでいない。中国が本腰を入れない経済制裁にどれだけの効果があるかは分からない。また、追い詰めることで北朝鮮が過剰反応を起こすことも懸念される。(略)再び6カ国協議のテーブルに引き戻すことが何よりも重要だろう」。

NPT体制限界あらわに

《NPT》北海道「核拡散防止条約(NPT)体制の空洞化もあらわになった。(略)インド、パキスタンは核実験後、経済制裁を受けたが、核保有を既成事実化した。イスラエルは米国の庇護(ひご)の下、核保有を黙認されている。平和利用と称して核開発を進めた北朝鮮は、NPTを脱退表明後、核兵器保有を宣言した。核不拡散の原則を曲げた二重基準がNPT体制を脆弱にし、北朝鮮の核開発を許す素地をつくったともいえる」、北國「現在の国連安保理や核拡散防止条約(NPT)体制の国際秩序維持機能に限界や抜け道があることはかねて指摘されるが、北朝鮮の核兵器開発をこのまま許し、核保有国の地位を与えてしまうことになれば、核不拡散の国際的な枠組みの機能不全、無力さは決定的なものになりかねない」。(審査室)

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