改正健康増進法のガイドライン案等に関する日本新聞協会広告委員会の意見
2003年7月23日
厚生労働省医薬食品局
食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室
室長 尾形 強嗣 殿
社団法人日本新聞協会
広告委員会
委員長 島田 三郎
改正健康増進法第32条の2は、虚偽誇大広告等を禁止しているが、貴省から示されたガイドライン(案)、ガイドラインに係る留意事項(案)は、媒体責任を直接問うもので、新聞各社が読者保護の観点から広告審査体制の拡充と強化に取り組み、広告倫理の向上をはかってきた事実を無視するものであり、到底認めることはできない。加えて同案は、書籍、冊子、インターネット等にも規制を及ぼす内容となっており、言論、表現の自由の観点から慎重に対応すべきである。
ガイドライン案は「広告の責任は広告主にある」との原則に反する
改正健康増進法第32条の2により、「何人」にも虚偽誇大広告等を禁じていることを理由に、ガイドライン案は、「広告等を依頼した食品等の製造業者又は販売業者」と並べて、無条件で、当該広告等を掲載した新聞社に媒体責任を課している。これは明らかに、広告掲載についての媒体責任に関する諸判例、すなわち「広告の責任は広告主にある」との社会通念上も、また法的にも確定している原則に照らし、不適当であり削除すべきである。ことさら媒体責任に言及することにより、広告表現に対する過剰な規制が行われ、自由な広告表現が阻害されるおそれがある。
ガイドライン案は広告審査業務の実情を顧慮していない
改正健康増進法第32条の2に違反した場合、新聞社等も厚生労働大臣による勧告、命令を受け、改善がなされない場合は6月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになる。新聞各社は、広告の責任は広告主にある、との原則に立ちながら、読者保護の観点から広告の審査業務を行っており、また広告の浄化を目的に新聞広告審査協会を設立して、広告の事前、事後調査、一般読者からの苦情相談などの体制を整えてきた。さらに新聞界は日本広告審査機構(JARO)の設立に積極的に関わり、同機構は消費者からの広告に関する苦情、意見に対応している。ガイドライン案は、こうした関係業界の自主規制努力を顧みず、広告主企業である製造業者等と媒体を同列にとらえ、虚偽誇大広告の掲載責任を媒体に問うていることは、極めて問題であり、媒体責任に言及した個所は削除すべきである。
言論、表現の自由の観点から慎重に対応すべきである
ガイドライン案及びガイドラインに係る留意事項案は、「広告その他の表示の定義」に関して、「書籍、冊子、ホームページに特定の食品又は成分に係る学術的解説を掲載する場合であっても、その解説の付近から特定食品の販売ページに容易にアクセスが可能である場合や、販売業者の連絡先が掲載されている等」の場合は「営利的言論としての広告等に該当する」としている。これは、虚偽誇大な広告表現の規制を名目に書籍の発行の規制につながる可能性を否定できず、その運用、解釈にあたっては、言論、表現の自由の観点から慎重に対応すべきと考える。