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「NHKネット実施基準要綱」に対するメディア開発委員会の意見

平成26年11月10日

「放送法第20条第2項第2号および第3号の業務の実施基準(インターネット実施基準)要綱」に対する新聞協会メディア開発委員会の意見

 インターネット実施基準要綱への意見募集に対し、日本新聞協会メディア開発委員会(新聞・通信社55社のデジタルメディア関連部門の役員・局長らで構成)の意見を述べる。

 改正放送法により、NHKのインターネット業務が従来より大きく拡大した。その業務をどのような原則に基づいて行うのかをNHKの実施基準で定めることになっている。ところが、今回公表された実施基準の要綱は、あらゆる可能性を担保しようという思惑が先行して業務範囲を大幅に拡大できる規定になっている。業務拡大を可能にするために、財政面でもこれまでのインターネット業務への支出額をはるかに超える上限額を設定している。

 このような無原則な内容ではとても基準の役割を果たしているとは言えない。総務省「放送政策に関する調査研究会」(放政研)が指摘した、「公共性が認められること」「放送の補完の範囲にとどまるものであること」「市場への影響(への配慮)」の3原則を踏まえて、業務内容、実施方法、費用の各面で公共放送として節度ある方向性を打ち出すべきだ。特に、放送番組のインターネット同時再送信については「テレビジョン放送による国内基幹放送の全ての放送番組を当該国内基幹放送と同時に一般の利用に供することを除く」と改正法20条2項2号で明記されており、その趣旨に沿って抑制的なものとなるよう実施範囲を示すべきだ。

同時再送信を実施する範囲について

 今回無料で放送と同時再送信する分野としてスポーツを明示したが、なぜスポーツなのか。条件を記した「放送と同時に視聴する機会を拡大することによって社会的な関心に応えようとする場合」という表現もきわめて不明瞭だ。「スポーツから同時再送信を始めるのが無難だと安易に考えたのだろう」との推測を呼ばないよう、公共性の観点から明確に説明すべきだ。

 また、「スポーツの生中継等」という表現はニュースなど他の番組も含みうるあいまいな表現であり、原則としてはきわめて不適切だ。どのような番組を想定しているのかがはっきりわかる表現に改めるよう求める。

 さらに理解増進情報の範囲も不明確だ。例えば理解増進情報として、社会的な関心が高い記者会見をテレビ放送開始前または終了後もインターネットで継続して中継するならば、テレビ放送の同時再送信には当たらないが事実上の無料放送につながる。このような拡大解釈の余地が残らないよう、範囲を明確化すべきだ。

受信料制度との整合性について

 改正放送法は、NHKのインターネット業務が受信料制度の趣旨に照らして不適切なものではないことを求めている。それに基づいて先般示された総務省の審査ガイドライン案は「受信料を支払わずに同等のサービスを視聴できてしまうことによって受信料の公平負担の確保が困難となる等」を不適切な事例としてあげている。

 ところが要綱は、インターネット業務の実施方法として「広く一般向けに提供し、合理的な理由なく対象を限定しないよう努める」としており、受信料を支払っていないユーザーもインターネットで視聴できるようになる。これでは法やガイドライン案の趣旨に反するばかりか、受信料負担の公平性を損なって受信料制度の根幹を揺るがしかねないのではないか。受信料制度とインターネット視聴との関係を整理し、受信料制度との整合性を示すよう求める。

業務実施に要する費用について

 2号受信料業務の費用は、受信料収入の3%を超えないとしている。受信料収入の3%は、実額では約190億円になる。従来のインターネット実施基準(2号業務)で定められていた上限40億円の5倍近くに跳ね上がっており、これまでの「附帯業務」や「特認業務」を含めても倍近い額になる。そこまで拡大する根拠が明らかでなく、これを容認すれば際限のない業務拡大を招いてインターネット業務が放送の補完にとどまらなくなる可能性が高い。さらに市場への影響が懸念される。従来のインターネット業務関係の支出の全体像を明らかにした上で、新たに実施する事業とその費用の概算を示し、民間事業者にも配慮した適切な上限を金額で示すべきだ。

市場への影響について

 総務省の審査ガイドライン案は、放政研の3基準を反映し「市場の競争を阻害しないこと」を審査項目として挙げている。しかし要綱では、共通事項として「市場競争への影響に関する配慮」を挙げているだけで、どのような手段を取るのか示されていない。市場への影響に配慮する具体策を示すべきだ。

 事前にどのような指標や基準に配慮するのかを示し、あらかじめ利害関係者から意見聴取する機会を設けるよう求める。事後的にも、意見・苦情を受け付けて改善策を講じることを明記すべきだ。

国際放送の同時再送信について

 国際放送のインターネット同時再送信について当委員会は、外国人向け国際放送については民間と競合しない限り容認してきた。今回明示した「国際放送および協会衛星国際放送」が、NHKが進める国際放送の強化に伴って従来の「NHKワールドTV」の枠を越え、国内のニュースと競合することがないよう、明確に歯止めをかけた表現にすべきだ。

「試験的な提供」について

 要綱では「サービス向上・改善の検討に資するための試験的な提供」について、「内容・方法・検証項目等を含む試験計画を明示し、期間を定めて実施」としている。このままでは「放送番組」や「理解増進情報」以外にも、計画を示して期間を定めさえすればさまざまな送信が可能だ。放送の補完、市場への影響配慮といった原則から逸脱することなく抑制的に運用することが必要だと考える。試験的な提供に当たっては、NHKが自主的に意見募集を行い、寄せられた意見を反映する仕組みを定めるなど、従来の特認業務の認可申請と同様に透明性を確保するよう求める。

以 上

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