NHKのインターネット活用業務「必須業務化」に対する見解
2024年3月8日
一般社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会
NHKのインターネット活用業務を放送と同様の「必須業務」に格上げする方針を盛り込んだ放送法改正案が3月1日、国会に提出された。当委員会はネット業務が際限なく拡大するなどの懸念から、必須業務化に反対してきた。他方、総務省「日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合」(準備会合)で、業務の具体的な範囲などに関する議論に参画している。
改正案は、必須業務の内容・範囲について、地方紙を含めた新聞・通信社、民放によるネット配信事業との公正な競争確保に支障がないものに限定するとしている。公正競争の担保措置として、NHKのネット配信の枠組みについて、新聞・通信社など利害関係のあるメディアから意見聴取し、公正競争に抵触すると判断した場合、総務大臣が変更を指示できることとなった。NHKも準備会合で「取材体制をしっかり持った主体(新聞・民放)と切磋琢磨(せっさたくま)し、高い水準での多元性を確保することが前提」「地域に住む方々が、多元的に情報を受け取ることができる環境を整えることを目指す」との考えを表明している。
業務範囲について、NHKは「放送とネットは同一」「ネットのオリジナルコンテンツをつくることはない」などと説明している。受信料を支払う国民・視聴者の視点でみれば、受信料を原資に制作したオリジナルコンテンツをネット上に無料で提供する現在の理解増進情報は、NHK自身が指摘する通り「不公平感」があった。放送法改正案は放送とネットを「同等の受信環境」と位置づけ、「受信契約の内容は公平に定め」るよう規定した。負担だけでなくコンテンツ面でも「放送番組とネットは同一」という原則を、法案でも示しているものだ。受信料を支払う国民・視聴者への配慮という面でも、法的な整合性を重視したと理解する。
メディア開発委員会は、高度な多元性確保や地方メディアへの配慮に関する改正案の内容やNHKの説明に一定の評価をし、「必須業務化」の方向性を受け入れる立場から、引き続き制度設計の議論に参加していくことを確認した。一方、法案や説明は理解できるものの、今後の制度設計では課題が山積している。①必須業務化後のネット業務の具体像、②NHK内部のネット業務チェック体制、③プラットフォームを通じたニュース配信の方針、④受信料制度の在り方、⑤ガバナンスの実効的な確保策――などいまだ明確になっておらず、今後一層の議論が求められる。
以上