総務省「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)(案)」に対する意見
2024年11月15日
一般社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会
日本新聞協会メディア開発委員会は、総務省「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ(第3次)(案)」に対し、以下の意見を述べる。
国家権力によるメディア規制・コンテンツ介入を危惧する
- 取りまとめ案は、「技術的な特性は相対化している」とし、「社会的な役割」によって放送を再定義する方向を提言し、放送に期待される社会的な役割の一つに「情報空間の健全性の確保」を挙げている。情報空間の健全性を担っているのは新聞・通信社を含めた様々な事業者であり、放送事業者だけにとどまらない。情報空間の健全性にかかわる議論を、放送に特化した形で展開することには違和感がある。
- 加えて、とりまとめ案では「情報空間の健全性の確保」の担い手に対して、「編集責任に見合う形で優遇する」としている。現時点で「放送」への優遇措置の内容や効果は不明瞭だが、このまま議論が進めば、国家権力によるメディア選別が生じ、表現の自由に悪影響をもたらしかねないとの懸念がある。
- 「社会的な役割」による「放送」の再定義の仕方次第では恣意(しい)的な解釈を招きかねず、結果として国家権力によるメディア規制・コンテンツ介入が起こりかねない危険性をはらんでおり、極めて慎重な検討が必要だ。
「メディアの多元性」が損なわれないよう慎重な検討を
- 従来の放送制度では民放事業者とNHKを中心に、国民・視聴者の「知る権利」に応えるため、多様で豊かな情報を国民に届けてきた。また、新聞・通信社も全国各地で日常的かつ継続的に取材・報道活動にあたり、地域向け情報では地方新聞社やローカル局が重要な役割を担っている。偽・誤情報の拡散など情報空間の課題が顕在化する中、正確で信頼できる情報を発信する基盤となっている「メディアの多元性」の重要性は増しており、放送の二元体制はその主要な一部を構成している。
- デジタル時代に即した放送の将来像について問題意識や課題の共有すら十分とは言えないなか、拙速な議論によって信頼性の高い情報提供の基盤が損なわれることはあってはならない。今後の検討において、「メディアの多元性」を損なうことのないよう慎重な検討を求める。
以 上