NHK2025年度予算・事業計画案に対する見解
2025年2月14日
一般社団法人日本新聞協会
メディア開発委員会
日本新聞協会メディア開発委員会は、本日国会提出された2025年度NHK予算および事業計画案について以下の見解を表明する。
ネット業務の具体像を早期に明らかにすべき
2025年10月施行の改正放送法により、NHKのネット業務のうち、同時・見逃し配信と番組関連情報の配信が放送と同様の「必須業務」に格上げされる。必須業務となる「必要的配信業務」の概要は予算・事業計画案で示されたものの、サービスの具体像はいまだ不明瞭な部分が多い。NHK は25年度のインターネットサービス関連経費は前年度と同規模の180.2億円で、「必要的配信業務」にかかる費用として99.3億円を計上している。しかし、サービスの具体像が明確でない以上、費用の妥当性を検証することは難しい。NHKには早期にサービスの具体像を明らかにするよう求める。
番組関連情報に関するルールを検証する「競争評価プロセス」でも、サービスを明確に説明するよう求める意見が複数出された。多数の懸念の声が挙がった「誤受信防止措置」は、受信料の公平負担という放送制度の根幹に関わる問題だ。NHKは「フリーライド防止のための実効性のある措置を検討している」としているが、早期に具体策を説明すべきだ。
費用の詳細な開示を求める
必要的配信業務の費用に関して詳細に説明するよう求める。「任意的配信業務」は費用明細表を公表するなど、詳しく説明している。ネット業務の枠組みが変わり、前年度との単純な比較ができないことは理解するものの、必要的配信について少なくとも任意的配信業務と同様に明細表を作成・公表すべきだ。
予算案ではNHKは180.2億円の関連経費とは別に、準備経費として29.5億円を計上した。24年度も準備費用が15億円計上され、合算すれば50億円近くに上る。サービスの立ち上げに多額の費用が費やされているため、使途について詳細に説明するよう求める。準備経費を計上するのが、今年度限りか否かも説明すべきだ。特殊な負担金である「受信料」を財源とし、民間メディアをはるかに上回る予算規模で事業展開するNHKには、「メディアの多元性」の観点から透明性と節度ある事業展開を求める。
多元性への貢献を求める
今回の予算案では、メディアの多元性確保に向けて確保した100億円から1億円を出資することが示された。NHKは残りの99億円を26年度に使用する方針とするが、早期に使途を明らかにするよう求める。
NHKが経営計画で情報空間の多元性確保を強調している点は、多様なメディアが信頼性の高い情報を提供し続けていく必要があるという当委員会の問題意識とも重なる。全国各地で複数の報道機関の取材に基づいた情報が、国民・視聴者に届く環境が維持されるよう、引き続きメディアの多元性を意識した事業展開を求める。
ネット業務の一体的な説明を求める
法改正に伴い、必要的配信業務の一部は業務規程で、任意的配信業務は実施基準や実施計画でそれぞれ規定されることになった。ルールの異なる枠組みにより制度が複雑化し、全体像が見えづらくなっている。今回予算案とともに示された「任意的配信業務実施計画」でも、必要的配信業務の説明はない。ネット業務の全体像を一体で説明する計画を公表するよう求める。
NHKは必要的配信、任意的配信のいずれとも異なる枠組みで、ネットによる「周知広報」を附帯業務として実施すると説明している。周知広報について「一定の規律のもとで適切に運用する」と説明しているものの、具体像や規律の内容は示されておらず、なし崩し的な拡大の懸念はぬぐえない。規律の内容を早期に明らかにするとともに、抑制的な運用を求める。
また、プラットフォームへの展開は必要的配信、任意的配信、周知広報のすべてにかかわる論点で、一体的な説明が必要だ。NHKは必要的配信では「プラットフォームを原則として利用しない」とする一方、任意的配信や周知広報の枠組みで活用する考えを示している。受信料の公平負担の観点からプラットフォームの利用については慎重な姿勢が求められ、とりわけニュース配信の分野では市場への影響の観点から、きわめて抑制的にすべきだ。
さらに、改正法の施行にあたって適切なガバナンスを確保するため、NHKは子会社が実施するネット業務も見直す必要がある。NHKにはプラットフォーム配信や周知広報、子会社のネット展開も含めた包括的なインターネット業務の実施計画を早期に示すべきである。
以 上