帰国した拉致被害者の方への取材について
2003年3月31日
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会
代表 横田 滋 殿
北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
会長 佐藤 勝巳 殿
社団法人日本新聞協会編集委員会
社団法人日本民間放送連盟報道委員会
社団法人日本雑誌協会取材委員会
拉致被害者の方への個別取材と、記者会見での自由な質疑が実現するよう申し入れます。
貴会は昨年10月11日付で、報道取材の過熱が想定されるとして、「拉致被害者の帰国にあたっての節度ある取材のお願い」を日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本雑誌協会に要請されました。これを受けて私たちは、本人や家族の人権・プライバシーを損なったり、周辺住民の平穏な生活を乱したりすることのないよう、「節度ある取材」を申し合わせました。この結果、懸念されていた集団的過熱取材(メディアスクラム)状態は避けられ、混乱は最小限にとどめることができていると自負しています。
その一方で、取材現場の在京社会部長会、新潟県報道責任者会議、福井県報道責任者会議は、取材の大原則である、本人への個別取材、記者会見での自由な質疑などを要請してきましたが、いまだに実現していません。
被害者の方は、家族と話し合う中で「永住帰国」を決断され、当初の「一時帰国」という状況は大きく変わりました。また、周囲の温かい支援に包まれて、日本国民として、地域の一員として日本での暮らしになじみ、状況をきちんと理解されるようになったと見受けられます。北朝鮮に夫や子供を残されていること、ほかにも拉致被害者の方々がいることは理解しますが、異常な取材制限が続いていることは、まことに遺憾というほかありません。
5人の方の体験に基づくお話などは、国民の大きな関心事であり、これを取材・報道することは報道機関の重大な責務です。しかし、現在の取材の在り方では、どのメディアも同じ内容の画一的な報道になり、報道機関に課せられた使命達成の支障となっています。しかも、5人の方の真意が誤って伝えられる可能性も危惧(ぐ)されます。
私たちは、5人のみなさんがメディアを通して、直接、その思いを語られ、考えを述べられることが、拉致問題への国民の理解を深め、ひいては解決への道をひらくことにもつながると信じています。
以上