イラク人道復興支援活動現地における取材に関する申し合わせ
平成16年3月11日
社団法人日本新聞協会(以下「新聞協会」という。)および社団法人日本民間放送連盟(以下「民放連」という。)は防衛庁の北原巖男長官官房長らとの数次にわたる協議の結果に基づき、自衛隊の人道復興支援活動をありのまま国民に伝えるという政府の説明責任が、自由公正な取材および報道を通じて適切に果たされることと、自衛隊員および報道関係者の安全ならびに部隊の円滑な任務遂行を図ることとの両立を追求するため、下記の申し合わせを行う。
本申し合わせの運用に関しては別途、新聞協会、民放連、防衛庁の3者により確認事項を定める。
また、この申し合わせは、自衛隊のサマワ宿営地が完成し、イラク人道復興支援活動が完全に軌道に乗った時期以降を対象にする別途の申し合わせについて、なんら制約するものではない。
記
新聞協会および民放連加盟社の、標記にかかわる取材活動は、以下の基本原則の下で行われる。
1.政府の説明責任
憲法の基礎である国民主権の理念にのっとり、国政を信託した主権者である国民に対して自衛隊のイラク人道復興支援活動の状況を具体的に明らかにし、説明するという責務(説明責任)を政府は負う。
2.表現、報道の自由の尊重
憲法の認める表現の自由に属する報道の自由、報道のための取材の自由について、政府は最大限尊重する。
3.自衛隊員、報道関係者の安全確保
イラク人道復興支援活動の現地(次項において「現地」という。)で活動する自衛隊員および報道関係者の生命および安全の確保について、派遣元組織および被派遣者の自己責任の原則の下、可能な範囲で最大限配慮する。
4.自衛隊部隊の円滑な任務遂行
現地の自衛隊部隊の円滑な任務遂行に支障を与えないよう留意する。
以上
「イラク人道復興支援活動現地における取材に関する申し合わせ」に基づく
阿部雅美日本新聞協会編集委員会代表幹事および小櫃真佐己日本民間放送
連盟報道小委員会小委員長代行と北原巖男防衛庁長官官房長との確認事項
平成16年3月11日、日本新聞協会(以下「新聞協会」という。)編集委員会阿部代表幹事、日本民間放送連盟(以下「民放連」という。)報道小委員会小櫃小委員長代行、防衛庁北原長官官房長の3者は、「イラク人道復興支援活動現地における取材に関する申し合わせ」の趣旨にのっとって、以下の事項について合意した。
1.取材機会の設定および輸送支援
- 防衛庁は、イラク人道復興支援活動の現地(以下「現地」という。)および市ヶ谷において定例的にブリーフィングを行い、継続的な情報発信を行う。
- 防衛庁は、新聞協会、民放連加盟報道機関からの要望を踏まえて、各種インタビューや宿営地内外における現場取材の機会を設定する。
- 防衛庁は、現地部隊の判断により、新聞協会、民放連加盟報道機関からの現地での取材の申し込みに可能な限り応じることを原則とする。
- 新聞協会、民放連加盟報道機関は、状況によっては、特に個別的な要望には十分応じられないことがあり得ることを理解する。
- 防衛庁は、各種取材機会の具体的な日時・場所について、記者証または立入取材員証の交付を受けるとともに、現地連絡先が登録され、かつ、連絡を希望している新聞協会、民放連加盟報道機関の現地派遣要員(注)に周知する。
- 防衛庁は、宿営地外における現場取材の機会を提供する場合には、新聞協会、民放連加盟報道機関の立入取材員に対し、部隊の円滑な任務遂行に支障を生じない範囲において、状況の許す範囲で最適な自衛隊車両による輸送協力を実施する。
新聞協会、民放連加盟報道機関が雇用、契約、資金提供、便宜供与その他協力または支援を実施している現地に滞在する記者、カメラマン、通訳、ドライバーその他の取材活動に従事させる要員であって、フリーランスおよび外国籍の者を含む要員をいう。
2.宿営地への受け入れ
- 新聞協会、民放連加盟報道機関は、自衛隊サマワ宿営地その他の現地の立入が制限される区域において立入取材を行わせる現地派遣要員について、所定の様式により立入取材員証の交付を申請する。
- 防衛庁は、申請のあった立入取材員の候補について、基本原則にのっとり、新聞協会、民放連加盟報道機関の選定を尊重して個別に認定のうえ、立入取材員証を交付する。
- 新聞協会、民放連加盟報道機関の立入取材員は、現地部隊の起床時間から消灯時間までの間を原則として、宿営地内外で開催される各種の取材機会に参加するとともに、サマワ宿営地内のプレスセンター地域(以下「プレスセンター地域」という。)において執筆、送稿等の取材関連作業を行うことができる。
- 立入取材員は、消灯時間から起床時間までの間は、宿所へ帰還する等プレスセンター地域の外へ退出することを原則とする。ただし、新聞協会、民放連加盟報道機関の立入取材員については、この間においても取材関連作業を継続する必要がある場合または宿所へ帰還することが困難である場合には、サマワ宿営地に隣接して自衛隊が借り上げ、警戒を行う区域内の駐車場地区において作業を行い、または滞在を継続することができる。
- 前項ただし書の場合において、消灯時においてプレスセンター地域に所在する立入取材員が少人数であり、かつ、宿営地の静謐(せいひつ)を損なうおそれのないときは、新聞協会、民放連加盟報道機関の立入取材員は、その都度個別に部隊の許可を得て、プレスセンター地域内にとどまることができる。
- 前2項の規定にかかわらず、新聞協会、民放連加盟報道機関は、立入取材員のうちサマワにおける新聞協会、民放連加盟報道機関を代表して専ら衛星中継機材の維持管理および運用にのみ従事する技術者については、最大で計6人を限度として、プレスセンター地域内に24時間常駐させることができる。ただし、当該技術者が、仮に映像編集作業その他の衛星中継機材の維持管理・運用以外の作業を行う場合は、前2項の例による。
- 新聞協会、民放連加盟報道機関は、前項に規定する衛星中継業務のため、目的に照らして最小のサイズおよび構成の衛星中継機材2セット以内を、共同してプレスセンター地域内に設置することができる。
- 前項の機材には、映像編集用の機材を含まないものとし、必要な電源については、新聞協会、民放連加盟報道機関が用意するものとする。
3.緊急事態への対応
- 新聞協会、民放連加盟報道機関のサマワ派遣要員に関して事故、急病その他のやむを得ない事情が発生した場合には、防衛庁は、当該派遣要員について、必要最小限の期間、宿営地内施設への臨時宿泊を含む一時的な滞在を受け入れる。
- 地域全体が不安定化し高度な危険が予測される情勢になる等により、現地において取材を継続することが困難となったと新聞協会、民放連加盟報道機関が判断する場合には、新聞協会、民放連加盟報道機関は、自主的な安全対策として、すべてのサマワ派遣要員を速やかにサマワから退避させる。
- 前項の場合において、当該派遣要員がクウェートその他の隣接地域への退避を開始するまでの間に待機する場所を確保できないときは、防衛庁は、一時的に、能力的に可能な限り多数の邦人報道関係者のサマワ宿営地への避難を受け入れる。
- 前項の場合においては、危険や混乱を防止するとの観点から、隣接地域への退避が完了するまでの間、防衛庁が、当該派遣要員を一般の避難民としてしか処遇できない可能性もあることを、新聞協会、民放連加盟報道機関は理解する。
4.その他
- 本確認事項に掲げる便宜供与は、新聞協会、民放連加盟報道機関に対し、一定の条件の下、防衛庁が供与するものであるが、防衛庁が新聞協会、民放連加盟報道機関以外の報道機関に対し、同一の条件で同様の便宜を供与することを妨げるものではない。
- 本確認事項に規定する事項の運用について問題が生じた場合は、直ちに現地部隊と、新聞協会、民放連加盟報道機関の現地派遣要員との間で協議を行い解決を図るものとし、解決が困難な場合は、新聞協会と民放連合同の「イラク取材問題小委員会」が防衛庁と協議・調整を行うものとする。
以上