NSK ニュースブレチン オンライン
2002年4月

-------------------------------------------------------------------
今月の話題>>>
 
メディア規制3法案に報道界挙げて反対
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
*テレビ録画ビデオを供述証拠に採用 和歌山毒物カレー・保険金詐欺事件
*
日本新聞博物館(Newspark)で写真展「戦場」開催
*NSKアジア計画で「報道倫理セミナー」開催
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
*Topics
--福井新聞社の新社屋に「新聞おもしろ館」オープン
--朝日新聞が上智大学と「政治とメディア」で提携講座開始
--NHKが京都でテレビ最前線講座開設
--神奈川新聞がウエブ夕刊を配信
-------------------------------------------------------------------

今月の話題>>>

メディア規制3法案に
報道界挙げて反対


 メディア規制につながる内容を盛り込んだ個人情報保護法案、人権擁護法案、青少年有害社会環境対策基本法案に対して、日本の報道界が危機感を強めている。

 これら法案は直接メディア規制を目指したものではないが、公権力が個人情報や人権侵害、有害情報を規定、判断することを通じて、市民の表現活動やマスメディアの取材・報道を大きく制限しうる内容となっており、憲法21条が保障する「表現の自由」を脅かす危険をはらんでいる。

新聞協会、民放連、NHKはこれらの法案に繰り返し反対を表明し、シンポジウムを開催するなど、新年度予算案通過後の国会での論議のゆくえに焦点をあてた反対活動を展開。番組や紙面で読者・視聴者にも問題提起をし、抜本的見直しを迫っている。

 個人情報保護法案は、昨年3月通常国会に提出され、継続審議となった。同法案は、特定の個人を識別できる個人情報について、(1)利用目的による制限(2)適正な取得(3)正確性の確保(4)安全性の確保(5)透明性の確保の5項目を基本原則(努力義務)として規定、これを取材・報道にも適用するとしている。また、新聞、放送、通信社など報道機関による報道は、公開や開示など個人情報を扱う事業者の義務規定からは除外されるが、何が報道にあたるかは、行政の裁量に任されている。

 新聞協会、民間放送連盟、NHKは法案の国会提出前から報道の全面適用除外を求めた意見書を政府に提出。雑誌協会、書籍協会、作家、弁護士、フリーランスライター、4野党も反対しており、メディアの問題にとどまらず市民の表現の自由をも制限するとの批判も強い。4月5日、新聞協会、民放連、NHKは同法案に反対するシンポジウムを開いた。

 人権擁護法案は3月8日、今国会に提出された。法務省の人権擁護推進審議会は2000年11月、強力な調査権限をもつ人権救済機関の設置と、救済対象となる人権侵害を?差別?虐待?公権力の人権侵害?メディアの人権侵害とする中間報告を提言、2001年5月には過熱取材を積極救済する考えを盛り込んだ最終答申を行った。新聞協会は2001年1月と6月に「メディアの人権侵害を虐待や差別と同列に扱っていることは極めて遺憾」と表明、報道の自由に配慮するよう求めるとともに、メディアの自主解決を主張した意見書を発表した(2月号既報)。

 しかし、法案は、報道による犯罪被害者らのプライバシー侵害や過剰な取材を「一般救済」より強制的権限(公表・勧告)をもって踏み込める「特別救済」の対象とし、「繰り返し行う電話やファクスによる取材」が過剰取材の類型に盛り込まれる内容となった。人権侵害を理由に取材を止めるよう勧告でき、報道機関が従わなければ、勧告内容を公表できる。しかし、報道機関側は不服申し立てできない仕組みになっている。しかも救済機関である「人権委員会」の事務局は法務省の人権擁護局職員が担当し、地方組織も地域の各法務局に任せる形で、独立性が保障されていない。

 新聞協会、民放連、NHKは3月7日、「報道への不当な干渉を招く」との共同声明を発表。「国民の知る権利にこたえるための〃熱心な取材〃〃粘り強い報道〃にブレーキをかける危険がある。法案を容認することはできない」と改めて主張した。また3者共同で同月25日、「人権擁護法案を考える−法規制とメディアの自律」と題する緊急シンポジウムを行った。

 3法案はいずれも、プライバシー保護や人権擁護、青少年保護といった「美名」のもとに、報道の概念、有害情報の概念、公人と私人の区別などあいまいなまま、さまざまな表現活動に公権力の干渉、介入を招来する危険をはらんでいる。背景には、集中豪雨的な過熱取材や取材対象者のプライライバシー・人権侵害など、マスメディアによる報道被害が招いた読者・視聴者のメディア不信をてこに、形を変えてメディアを規制しようという政府行政の思惑も見え隠れする。

 新聞協会は、かねて集団的過熱取材については議論を重ねており、昨年末取材者が守るべき「ガイドライン」を発表した(1月号既報)。その上で3月には、現場でルールを越える問題や被害が生じた場合に解決に乗り出す小委員会の設置を決めた。新聞界だけでなく、放送界とも緊密に連携することになっている。小委員会は、朝日新聞東京本社、毎日新聞東京本社、読売、日経、産経新聞東京本社、北海道新聞社、中日新聞東京本社、西日本新聞社のほか地方紙4社、共同通信社、時事通信社、NHKの計15社で構成。

 また、新聞界では、報道紙面の検証を行う外部有識者らによる「読者と報道」委員会を設置する社が増えており、4月1日付で発足させた南日本新聞社、熊本日日新聞社を含めて25社になった(2月号既報)。



テレビ録画ビデオを供述証拠に採用
和歌山毒物カレー・保険金詐欺事件

和歌山市で起きた毒物カレー・保険金詐欺事件の公判で、和歌山地裁は3月22日、和歌山地検が証拠として申請していた民放のテレビ番組を録画、編集したビデオテープの一部を供述証拠として採用することを決定した。過去、犯罪現場を映したビデオテープを採用した事例はあるが、被告の供述書をしての証拠採用は極めて異例。大阪と和歌山の民放6社は抗議声明を出した。

採用されたのは、林真須美被告(40)が最初に逮捕された1998年10月4日から初公判があった99年5月13日までに民放4局が放映したのべ8番組を和歌山県警の捜査員が録画、編集した2本のテープ。

 これに対し朝日放送、毎日放送、関西テレビ放送、読売テレビ放送、テレビ大阪、テレビ和歌山は同日、報道責任者の連名で「報道番組の一部が、報道目的以外に利用されるということであり、国民の報道機関に対する信用を失う」「国民の知る権利、報道の自由の重大な制約になりかねない事態で、極めて遺憾だ」との声明を発表した。

 小川育央裁判長は、?報道、取材の自由も適正な刑事裁判実現のためには一定の制約を受ける場合がある?既に放送された放送内容を、刑事裁判で証拠採用することは報道の自由を侵害しない?ビデオには警察による意図的な編集はされていない−−などとの判断を示した。その上で、証拠申請された2本のビデオテープに収録されている8番組を個別に検証した。

 林被告は黙秘を貫いているため、和歌山地検が2,000年12月、テレビ番組を証拠申請していた。民放六局とNHK大阪放送局は証拠申請の取り下げを求めた申入書をそれぞれ同地検に提出。和歌山地裁にも同趣旨の上申書を出し、証拠からの除外を求めていた。

和歌山毒物カレー・保険金詐欺事件=1998年7月25日和歌山市園部で夏祭りの際に民家のガレージで作ったカレーを食べた住人67人が急性ヒ素中毒になり、うち4人が死亡した。薗部在住の林真須美と林建治夫妻が、ヒ素を使った殺人未遂や保険金詐欺で同年10月逮捕、起訴された。


日本新聞博物館(Newspark)で
写真展「戦場」開催

横浜市の日本新聞博物館(Newspark)で3月26日、べトナム戦争を撮影した報道写真でピュリツァー賞を受賞した沢田教一、酒井淑夫両氏(ともに故人)の写真展「戦場」が始まった。

同日夕刻には両氏の夫人の「沢田サタさん・酒井秀子さんを囲む会」が開かれ、在日米軍司令部・広報部のビバリー・L・リー氏が、米軍に保管されていた酒井氏のプレスカードを秀子さんに返却した(写真)。

席上、サタさんは「沢田は平和な世の中になってほしいといつも口にしていた」と述べ、秀子さんは「戦争は人間の自由や尊厳を奪うもの。そこから良いものは何も生まれないと話し、難民や戦争の取材をしなくてもいい世界になることを願っていた」と酒井氏の思い出を語った。

米UPI通信社のカメラマンだった沢田記者の「安全への逃避」(1966年度受賞作)、同社で後輩だった酒井記者の「より良きころの夢」(68年度受賞作)をはじめ、過酷な戦場の様子を鮮明にとらえた約120点と、二人が取材に使用したカメラ、メモなどのほか、ピュリツァー賞の賞状も合わせて展示している。両氏は、ピュリツァー賞を授賞した日本人カメラマン3人のうちの二人。沢田氏は70年に現地で狙撃され34歳で死亡。酒井氏は99年に59歳で病死した。同企画展は神奈川新聞社、共同通信社との共催。期間は5月19日まで。


NSKアジア計画で
「報道倫理セミナー」開催

 アジアの新聞・報道界の発展に寄与することを目的とした新聞協会のアジア計画に基づき、「編集・報道における倫理――現場からの事例報告と取り組み」をテーマにとした報道倫理セミナーが、3月24日から7日間の日程で開催された。中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイから10人の新聞編集者が来日した。

 編集者らは、青木彰筑波大学名誉教授の基調講演「日本の新聞界が抱える倫理上の諸問題について」や、毎日新聞、読売新聞、共同通信、東京新聞の編集局の各部長や論説委員の事例報告を聞いたほか、内閣記者クラブや日経新聞社を訪問し、日本とセミナー参加者の国々に共通した新聞の諸課題について情報や知識を深めた。

新聞協会が1993年度から実施している「アジア計画」は、報道事業の発展のために日本の経験や技術を学びたいというアジア諸国の要請にこたえ、アジア地域の新聞産業の発展に寄与することを目的とし、新聞・通信・放送社の幹部を対象に日本で実施してきた。 

参加者(写真左か):Dr. Camoes Tam Chi-keung(Hong Kong), Mr. Chen Ping(China), Mr. Chan Chak-chiu(Hong Kong), Ms. Xu Jing(China), Mr. Thongtham Nartjamnong(Thailand), Mr. Sunil Dang(India), Mr. R. Mathivanan(Malaysia), Mr. Dionisio L. Pelayo(Philippines), Mr. Shravan Kumar Garg(India), Mr. Djoko Pitono Hadiputro(Indonesia).

Topics.......Topics.......Topics........

福井新聞社の新社屋に「新聞おもしろ館」オープン

福井新聞社は3月1日、読者サービスの一環として新社屋2階に「新聞おもしろ館」をオープンさせた。広さは約350平方メートルで、テーマを決めて文字や紙の誕生、新聞記事・広告の歴史、新聞製作機材の変遷などを紹介している。ギャラリー、カフェ、多目的ホールを備えた一階の交流ゾーンとともに、県民、読者が自由に利用できる。

 「新聞の100年」と題するコーナーでは、1899年(明治32年)の創刊号を始め、アポロ11号の月面着陸、東京オリンピック、福井震災など国内外、県内の重大ニュースを伝えた紙面のほか、各時代を彩った新聞広告、過去に使われていた報道用カメラ、原稿用紙、記者用ワープロも展示されている。


朝日新聞が上智大学と「政治とメディア」で提携講座開始

 朝日新聞は上智大学新聞学科との提携講座「ジャーナリズムの現在」を4月10日開講した。

2002年度前期は「政治とメディア」をテーマとし、吉田慎一企画報道室長や木村伊量(ただかず)論説委員、早野透編集員委員、星浩編集委員など、同社の一線で活躍するベテラン記者が官邸取材、政党取材、選挙で果たすメディアの役割などにつき、講義する。

 コーディネーターを務める藤田博司上智大学教授は「報道機関との相互協力により、メディアの現場と大学のジャーナリズム研究を近づける足がかりとしたい。新聞学科のジャーナリズム研究に一段と幅を持たせることにもつながる」と語っている。朝日の野村彰男総合研究センター所長は「体験談や苦労話に終わらせないよう、充実した講義にしたい」と意欲を語った。

 後期は、「ニュース報道の現場からをテーマに、経済、社会、文化部などの記者が情報の取得、取材、記事執筆などについて講義する。このほか朝日は、法政大学でも4月から講座を開く。朝日以外では、読売が国際医療福祉大大学院で、北海道新聞が北海道大学大学院で9月開講予定。新聞社が大学に一定の寄付をし、協力提携して講座を開設、運営するケースがここ3,4年増えている。新聞の役割について学生の理解を深めることが目的。


NHKが京都でテレビ最前線講座開設

NHK京都放送局は開局70周年記念事業として、4月から7月まで京都地域の大学生を対象にした「NHK講座」を開設する。NHKへの理解を深めてもらうことが狙いで、初めての試み。

 講座は、全13回、JR京都駅前のキャンパスプラザ京都を会場に行われる。「テレビメディア最前線――現状と社会的役割」と題し、海老沢勝二・NHK会長をはじめNHKのプロデューサーやニュースキャスターらが放送現場の最前線を多角的に紹介する。

立命館大産業社会学部の講座として開かれるが、短大・大学50校が加盟する財団法人「大学コンソーシアム京都」のネットワークを活用し、コンソーシアムに加盟する大学の単位として認定される。大学コンソーシアム京都は、大学教育に対する社会や学生のニーズに応えるため、1998年3月に設立された。単位互換制度、社会人向けのシティカレッジの開設などを推進している。


神奈川新聞がウエブ夕刊を配信

朝刊単独紙神奈川新聞社は3月20日、自社のホームページにウェブ夕刊「YOKOHAMA You Can(ゆーかん)」と、その日の本紙の各地区版ニュースが一覧できる「地域情報」を載せ始めた。定期購読者の囲い込みが狙い。無料期間を経て、5月中旬をめどに有料化(料金は未定)を予定しているが、本紙の定期購読者には無料で提供する方法を検討している。

 「You Can」は「ひと足早く夕刊ニュース」をキャッチフレーズに、日曜、祝日、休刊日を除く毎日午後2時、前日の深夜から当日の昼までのニュース約30本を配信する。公開は当日に限定。記事は共同通信社の配信と、メディア局が取材、編集したものから選ぶ。「地域情報」は当日の7地区版すべてをPDF形式で掲載する。同社の松沢雄一・メディア局長は「有料化するには目を引くような娯楽系のコンテンツを盛り込む必要がある」と話している。


Nihon Shinbun Kyokai
The Japan Newspaper Publishers & Editors Association
Nippon Press Center Bldg., 2-2-1 Uchisaiwai-cho, Chiyoda-ku,
Tokyo100-8543, Japan

bulletin@pressnet.or.jp.

Copyright 2002 Nihon Shinbun Kyokai
All right reserved