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2002年5

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*新聞協会理事会が人権擁護法、個人情報保護法の国会審議入りで緊急声明
*新聞協会編集委員会、集団的過熱取材対策小委員会の設置決める
*第20回日中記者交流計画、「メディアのマネジメント」をテーマに実施
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*Topics
--南日本、熊本日日で「読者と報道委員会」発足
--NHKの新放送技術研究所オープン
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今月の話題>>>
 先行き不透明な衛星デジタル放送
 新たに103チャンネルが出揃う

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新聞協会理事会が人権擁護法、個人情報保護法の国会審議入りで緊急声明

 憲法が保障する「表現の自由」を脅かすとして、ジャーナリストやメディア関係者、学者らが反対している人権擁護法案が4月24日、個人情報保護法案が25日、国会で審議入りしたことから、新聞協会理事会は、24日、緊急声明を発表した。

 新聞協会理事会が声明をだすのは、1987年5月の朝日新聞阪神支局襲撃事件以来15年ぶり。新聞協会が両方案の国会提出にいたるまで、繰り返し「報道の自由」に十分配慮するよう求めてきたにもかかわらず、法案は「表現の自由に政府が介入する道をひらくもの」となっていることを批判、報道による人権やプライバシー侵害の問題は、報道機関の自主的な対応で解決を図るべきとした。

 新聞協会の緊急声明と前後して、放送・出版業界や地域の報道機関も声をあげた。

 民間放送連盟の氏家斉一郎会長は25日、2法案について「表現の自由を侵す内容で、断固反対」との談話を発表した。作家やジャーナリストらでつくる「個人情報保護法案拒否!共同アピールの会」も「この法案は、報道・表現の自由を殺そうとしている」との生命を発表した。作家の城山三郎氏(74歳)は、「軍国主義を進め、言論・表現の自由を奪った治安維持法の再現だ」と批判した。日本書籍出版協会、日本雑誌協会も同日、2法案に反対する共同談話を発表した。

 それぞれの地域の新聞・通信・放送各社の報道責任者らも「報道の自由、表現の自由の侵害につながる」などと批判する共同声明を相次いで発表、それぞれメディア規制は容認できないとした共同見解、共同声明を発表、地元国会議員や自民党、公明党などに提出した。

 報道責任者らが声をあげた地域は、福井県、青森県、岩手県、山梨県、札幌市、名古屋市、福岡市。このほか、放送局の番組審議会や、テレビ朝日をキー局とするANN系列の中部ブロック5社の社長会も3法案に反対している。今後さらに増える見込み。

 国会では、野党議員らの質問に対して、人権擁護法案については、森山真弓法相が「報道界の自主規制の状況を見れば、犯罪被害者などへの取材に関し、一定の制度の中での実効的救済措置が必要だ」と答弁、個人情報保護法案については、小泉純一郎首相が「報道・表現の自由を侵害するものではまったくない。メディアを規制する意図はない」などと答弁した。

 今国会は6月19日まで。国会審議の状況を見極めながら、新聞協会はじめメディア関係団体は法案反対の活動を展開することにしている。



新聞協会編集委員会、集団的過熱取材対策小委員会の設置決める

 新聞協会編集員会は、4月18日に開かれた4月度委員会で集団的過熱取材対策小委員会を設置することを決めた。

 編集委員会は、昨年12月度委員会で「集団的過熱取材(メディアスクラム)について取材者が守るべきガイドラインをまとめた「見解」を発表したが(1月号既報)、小委員会は、この「見解」を前提に、現場レベルで調整・解決できない過熱取材をめぐる問題を協議する裁定権限を持った編集委員会の下部組織として新聞・通信、NHKの15社で構成し、5月8日に発足する。

 当該地域の記者クラブや支局長会から現場解決が困難との申し立てがあった場合、小委員会幹事の判断により、小委員会が引き取り、直ちに解決を図る。過熱取材の被害者から小委員会に直接申し立てがあった場合は、速やかに当該の支局長会に連絡、調整にあたらせる。裁定の内容はそのつど小委員会で協議し決定する。裁定結果は速やかに現場に連絡、必要に応じて公表する。 

 公人や公共性の高い人物からの申し立ては基本的には受け付けない



第20回日中記者交流計画、「メディアのマネジメント」をテーマに実施

 日本新聞協会と全国中華新聞工作者協会による日中記者交流計画は、日中国交30周年にあたる今年、20回目を迎えた。4月7日来日した中国側記者団11人は、東京のほか、新潟県、長野県、愛知県、京都府、福岡県を訪れる2週間の日程をこなし、21日福岡から帰国した。

 今回のテーマは「日本のメディア・マネジメント」。朝日、読売、信濃毎日、西日本、中日の各新聞社の幹部らと新聞経営について懇談したほか、NHKの理事、報道局長と懇談、ニュースセンター、ハイビジョンテレビなどを見学、ローカル局の西日本テレビの幹部とも懇談した。東京最後の日は「ユニクロ」ブランドを中国で作っているファーストリテイリング東京本部を訪問、東京・渋谷の「ユニクロ」店舗を視察した(写真)。このほか、広告会社の電通や外務省、トヨタ、松下電器産業、関西経済連合会なども訪れた。

参加者は以下のとおり。
団長:張世剛(Zhang Shigang)中華全国新聞工作者協会副主席解放軍報社総編集
副団長:李存厚(Li Cunhou)中華全国新聞工作者協会書記処書
団員:謝正謙(Xie Zhengqian)遼寧日報報業集団社長、張芬之(Zhang Fenzhi)中国新聞出版報社総編集、劉少宇(Liu Shaoyu)河南日報報業集団副総編集、陳坦(さんずいに文?Chen Tanwen) 福建人民広播電台台長、s呉濤(Wu Tao)安徽省電視台副台長、朱英華(Zhu Yinghua) 中華全国新聞工作者協会国際部副主任、閻成謙(Yan Chengqian)中国報業協会副秘書長、 劉岩(Liu Yan)新華通信社国内ニュース編集者、李浩(Li Hao)中華全国新聞工作者協会日本事務主管

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南日本、熊本日日で「読者と報道委員会」発足

熊本日日新聞社、南日本新聞社は3月1日、それぞれ社外の有識者による「読者と報道を考える委員会」を発足させた。

昨年来、人権やプライバシーに配慮した新聞作りや取材・報道の在り方などを第三者に検証してもらう委員会を設置する新聞・通信社が増えているが、両社の設置により、設置社は25社となった。

 熊本日日では、読者からの意見や苦情を踏まえ、取材の行き過ぎがなかったか、紙面に人権・プライバシー侵害や差別的な表現がなかったかなどを論議・検証する。また、地域に根差す新聞の在り方全般についても提言する。組織的には、編集担当役員への提言機関として位置づけた。委員会は原則として年3回開催する。

 南日本は役員会の直属機関として、取材や報道が適切か、人権に配慮して情報を正確に分かりやすく報道しているか、読者の意見・苦情に対して誠実に応えているかなどを検証・審査する。また、あるべき南日本新聞像についても自由に意見交換し、編集局長に提言する。委員会は原則として年4回開催する。いずれも、論議の内容は紙面で公開する。任期は1年で、再任は妨げない。

 各社の設置の背景には、メディア批判に応え、読者の信頼をつなぎとめようとする狙いがある。

NHKの新放送技術研究所オープン

3月1日、NHKの新しい放送技術研究所(東京都世田谷区砧)オープンした。同じ敷地内にあった放送研修センターが統合され入居。1961年に建てられた旧技研は2003年4月までに解体する予定。新技研は、地上14階建ての高層棟と地上6階建ての中層棟から成る。地下はともに2階建て。

 同研究所が昨年発表した「技研中長期ビジョン」によれば、(1)放送用デジタル伝送路と通信系のネットワークを活用したサービスの研究(2)コンピューター、ネットワーク、サーバーなどを使ったコンテンツ制作技術に関する研究(3)ハイビジョンを超えるテレビシステムを立体テレビの研究、撮像、記録、表示技術に関する研究――の3点を、今後の技研の研究の柱としている。新技研は、これらの研究活動に対応するため建設された。 1階のエントランスには400人収容可能な講堂や技術展示コーナー、情報コーナーなどを設置。視聴者や地域住民に開放している。


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今月の話題>>>

先行き不透明な衛星デジタル放送
新たに103チャンネルが出揃う


 東経110度に位置する通信衛星を利用したCSデジタル放送は、今年3月からスタートしたスポーツ、ニュース、娯楽放送のCS日本を皮切りに、順次開始され、今夏には、103チャンネルが出揃う予定である(視聴契約の窓口となるプラットフォーム会社別では、プラットワン=46ch<有料放送39、無料7>、スカイパフェクTV!2=57ch<有料41、無料16>)。朝日新聞をはじめ、日本の新聞・通信社9社が放送事業者に出資、ニュース等のコンテンツを提供している。

 110度CSデジタル放送は、放送衛星を利用したBSデジタル放送と、衛星が同じ軌道位置にあることから、BSデジタル放送と受信機を共有できるというメリットがあり、相乗効果により衛星放送市場の拡大に寄与することが期待されている。また、BS放送と比べ、110度CS放送は、1事業者に割り与えられている電波の帯域がBS事業者のそれよりも広いこと、受信機に内蔵されたハードディスクの容量が60ギガバイトと格段に大きくいことなどが特徴。自動録画された番組をいつでも好きなときに見たり、番組で紹介しきれなかった情報をハードディスクから呼び出したり、カタログのように商品情報を比較できるといった、「高度」な放送サービスがセールスポイントとなっている。

Notes:
1) Figures based on data published by broadcasters
2) Figures refer to total subscription contracts as of the end of December. Figures for CS SKY PerfecTV for the period from 1996 through 1999 include those for the former DirecTV. Figures for BS NHK and BS WOWOW represent the combined subscription contracts for both analog and digital broadcasting.
 日本における衛星放送は、BSのアナログ放送(テレビジョン4、音声・データ各1の計6チャンネル)とデジタル放送(テレビジョン10、音声23、データ19の計52ch)、CSの124度、128度の通信衛星を利用し、300ch以上を擁するCSデジタル放送(スカイパーフェクTV)、今回新たに始まった110度デジタル放送がある。1989年本放送を開始したアナログBS放送は1000万件超、124、128度のCS放送(92年放送開始)は、300万件超の受信契約がそれぞれあり、既に市場を形成している。一方、2000年12月に始まったBSデジタル放送は、受信機出荷台数が114万台(3月末時点)と、「1000日1000万件」という目標を達成するペースからは遅れ、開局5年で単年度黒字という各社の経営目標も達成は難しい状況だ。BSデジタル放送を受信するには、新たな受信機を購入する必要があり、アナログ放送市場をそのまま引き継ぐことはできない。同じことは、110度CSデジタル放送にも言える。

 110度CSデジタル放送の「高度」なサービスがどこまで視聴者のニーズに合致するのか、仮に視聴者に受け入れられ、市場を拡大したとして、BSデジタル放送の成長は可能なのかどうか。新規両衛星放送サービスの先行きは依然不透明なままだ。

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