憲法が保障する「表現の自由」を脅かすとして、ジャーナリストやメディア関係者、学者らが反対している人権擁護法案が4月24日、個人情報保護法案が25日、国会で審議入りしたことから、新聞協会理事会は、24日、緊急声明を発表した。
新聞協会理事会が声明をだすのは、1987年5月の朝日新聞阪神支局襲撃事件以来15年ぶり。新聞協会が両方案の国会提出にいたるまで、繰り返し「報道の自由」に十分配慮するよう求めてきたにもかかわらず、法案は「表現の自由に政府が介入する道をひらくもの」となっていることを批判、報道による人権やプライバシー侵害の問題は、報道機関の自主的な対応で解決を図るべきとした。
新聞協会の緊急声明と前後して、放送・出版業界や地域の報道機関も声をあげた。
民間放送連盟の氏家斉一郎会長は25日、2法案について「表現の自由を侵す内容で、断固反対」との談話を発表した。作家やジャーナリストらでつくる「個人情報保護法案拒否!共同アピールの会」も「この法案は、報道・表現の自由を殺そうとしている」との生命を発表した。作家の城山三郎氏(74歳)は、「軍国主義を進め、言論・表現の自由を奪った治安維持法の再現だ」と批判した。日本書籍出版協会、日本雑誌協会も同日、2法案に反対する共同談話を発表した。
それぞれの地域の新聞・通信・放送各社の報道責任者らも「報道の自由、表現の自由の侵害につながる」などと批判する共同声明を相次いで発表、それぞれメディア規制は容認できないとした共同見解、共同声明を発表、地元国会議員や自民党、公明党などに提出した。
報道責任者らが声をあげた地域は、福井県、青森県、岩手県、山梨県、札幌市、名古屋市、福岡市。このほか、放送局の番組審議会や、テレビ朝日をキー局とするANN系列の中部ブロック5社の社長会も3法案に反対している。今後さらに増える見込み。
国会では、野党議員らの質問に対して、人権擁護法案については、森山真弓法相が「報道界の自主規制の状況を見れば、犯罪被害者などへの取材に関し、一定の制度の中での実効的救済措置が必要だ」と答弁、個人情報保護法案については、小泉純一郎首相が「報道・表現の自由を侵害するものではまったくない。メディアを規制する意図はない」などと答弁した。
今国会は6月19日まで。国会審議の状況を見極めながら、新聞協会はじめメディア関係団体は法案反対の活動を展開することにしている。